軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

99.錬金術師のお店(2)

「小さいのに偉いんですね。お父さんやお母さんの手伝いですか?」

エルモさんは紙にペンで何かを書きながら世間話をしてくる。

「私には両親がいないよ」

「えっ……じゃあ、どうやって暮しているんですか?」

「友達と三人で暮しているよ」

「そ、そんなっ!」

事実をいうとエルモさんは酷く驚いた顔をした。あ、この環境に慣れていたせいもあって、この事実が一般的じゃないことを思い出した。

「どうして、友達と一緒に住むことになったんですか?」

「話せば長くなるけど……」

私は簡単に今までの経緯を話した。両親に売られて召使いになったこと、魔物の氾濫に巻き込まれて町から追い出されたこと、避難した町で追い出されてこの開拓村に来たこと。その最中に友達と出会い、一緒に協力して生きていこうと決めたこと。

それを話すと、エルモさんは泣きそうな顔をして私の頭を撫でてくる。

「とっても大変な目にあってきたんですね。よく、無事にここまで辿り着けましたね」

良く考えてみたら、私って結構波乱万丈な人生を歩んでいるような気がする。こうやって親身になってくれる人があまりいなかったせいもあって、なんだか落ち着かない。

「安心してください。私は子供を食い物にするような酷い大人じゃありませんから、頼ってくれても構いません」

「ありがとう。そう言ってくれると安心するよ」

「はい、素材採取も沢山して貰うために細かく書きますね」

そういうとエルモさんは紙に文字を書き足していった。その紙を覗いてみると、素材の名前や特徴や値段などが書かれてある。素材の名前だけでも、大丈夫なんだけど……まぁ、分かりやすくていいかな。

「んー、分かりやすく、分かりやすく……」

「そこまで細かく書かなくても大丈夫だよ」

「でも、素材を見分ける時の手助けになりますよ」

エルモさんに言っても大丈夫かな?

「大丈夫、私には鑑定の力があるから」

「えぇ、鑑定のスキルを持っているんですか!?」

鑑定という言葉を聞いて、エルモさんは顔を上げて驚いた。やっぱり、鑑定というスキルは貴重なものなんだな。

「それだったら、大丈夫かもしれませんね。そうですか、鑑定持ちだったんですね」

「うん、鑑定のスキルって貴重?」

「はい、鑑定のスキルがあれば職に困ることはない、と言われるくらい重宝されているものなんですよ。きっと、町にいけばどんな人だって職につくことが出来ます」

へー、そんな感じで貴重で重宝されているんだね。でも、私は町では住めないし、この村で活用したほうがいいかもしれない。

「安心して仕事を頼めます。鑑定のスキルを使って、ここに書いてある素材を集めて来てください。一応、全部に特徴は書いてありますので、探す時に少しは役立つはずです」

先ほどまで書いていた紙を手渡された。かなり細かく書いてあるので、探す時に役に立つだろう。

「まだ子供ですからね、森の奥に行くような無茶はしないでくださいよ。魔物討伐のプロがいる、と言ってもみんな等しく危険なんですからね」

「うん、分かった。魔物討伐のプロが無理しない程度のところまでにする」

「はい、そのほうがいいと思います」

あの二人が行けないようなところまでは行かないつもり。でも、あの二人はいつもどれくらい奥まで進んでいるんだろう? まさか、森の奥までなんて行ってないよね?

「はぁ……いつもは怖い冒険者さんたちとやり取りして緊張しましたが、今日は子供相手で良かったです。満足のいく接客が出来たと思います」

両手で拳を作って気合の入った様子だ。そんなに冒険者の人たち怖いかな? みんな気さくでいい人だったと思うけど、エルモさんは他人との交流が苦手そうに見える。

「私の対応は平気なの?」

「はい、大丈夫みたいです。子供だからなのか、変に緊張しなくてすみました。ノアが常連さんになってくれたら嬉しいんですけれど、そう簡単にはいきませんよね」

「常連さんかー、そうなれるように沢山素材を採取してくるね」

「はい、期待しています」

よし、常連さんになれるように頑張って素材採取をするぞ!

「錬金術師のお店に行って、採取する素材について聞いてきたよ」

夕食が終わって、二人に錬金術師のお店に行ったことを話した。その時もらった紙を二人に見せると、感心したように紙を見つめる。

「こんなに素材があるんですね。森の中を移動してましたが、こんなに素材があるなんて気づきませんでした」

「どこかで見たようなものがあるようなないような……とにかくあの森で探せば見つかるんだな!」

「うん、この素材は私たちが行けるくらいの範囲にあるものらしいから、無理に奥に行かなくても大丈夫だからね」

まずは森に慣れることが大切だよね。無理に奥に行って大変な目にあったら嫌だから、地道に範囲を広げていこう。

「じゃあ、明日はノアでもいけそうな範囲で行動しましょうか」

「そうだな、いきなりウチらに合わせて奥に行くのは大変だからな」

「二人ともありがとう。ごめんね、二人の魔物討伐の邪魔になってないかな?」

「邪魔だなんて、そんなことないですよ。むしろ、ノアと一緒に行動が出来て嬉しいですし」

「ノアにウチらのカッコいいところを見せられるのがとても楽しみなんだぞ!」

「そうだよねー。二人の戦っている姿が見られるんだ、それはそれで楽しみだな」

二人が魔物討伐をしているのは知っているけど、戦っている姿を見たことはない。初めてみる二人の戦い姿ってどんな感じなんだろう、とても気になるな。

「私たちの戦っている姿を楽しみにされると、なんだか恥ずかしいですね。あんまりジロジロみないでくださいね」

「イリスは気にしすぎなんだぞ。ノア、ウチのカッコいいところを沢山見てくれよな!」

「二人が活躍しているところを見させてもらうよ」

「もう、ノアったら。あんまり私たちに集中しすぎて、素材採取のことを忘れたりしたら知りませんからね」

「素材採取に夢中になって、ウチらを見ないこともありそうだな。それはそれで、寂しいんだぞ」

「そんなことにはならないから大丈夫だよ。二人のこともしっかり見るし、素材採取もするよ」

魔物討伐の時は素材採取をしないようにしないとね。そうじゃないと、いざという時に動けないと思うから。もし、素材採取をするんだったら魔物がいない時にしよう。

「明日はノアと一緒に森かー、楽しみなんだぞ!」

「初めて森で一緒に行動しますね、私も楽しみです」

「二人とも、よろしくね」

「おう! ノアはしっかりとウチらで守るんだぞ!」

「安心してくださいね」

二人が気合を入れて、そう言ってくれる。お陰で森に行く不安はない、だって二人が守ってくれるから。それにいざとなったら私も魔法で魔物をやっつければいいからね。

翌朝、お弁当を作って三人で一緒に家を出た。いつも通り宿屋の食堂に行き、朝食を食べる。その時、私の装いが違うことにミレお姉さんが気が付いた。

「あら、ノアちゃんっていつもリュックを背負っていたかしら?」

「実は今日、二人と一緒に森に出かけることになったの」

「そうだったの。でも、ノアちゃんが森に出かけるのって珍しいわね、何か用事でもあるの?」

「素材採取にいくつもりなんだ」

「素材採取ね……ノアちゃんは本当にいろんなことをするのね、感心しちゃうわ」

ほう、とミレお姉さんは感心したように頬に手を当てた。そうだなぁ、本当に色んなことをしているね。色々と出来ることがあるのって楽しいよね。

「森の中には魔物がいるからね、気を付けていくのよ」

「うん、大丈夫。魔物討伐のプロがいるからね」

「ウチらに任せるんだぞ!」

「ノアはしっかりと守ります!」

気合の入った二人の声が響いた。それを聞いていた周りの冒険者たちは、声を上げて私たちを応援してくれる。

「いいぞー、頑張れー!」

「二人とも、カッコいいぞ!」

「ノアをしっかりと守ってやれー!」

「ウチに任せろー!」

「ちょっと、クレハ!」

冒険者たちの応援を受けて、クレハが立ち上がって拳を突き上げてそれに応える。その行動が恥ずかしかったのか、イリスは挙動不審になりながらクレハを座らせようとした。

食堂は一層賑やかになり、楽し気な声があちらこちらから聞こえてくる。

「ふふっ、クレハちゃんたら。三人で初めての冒険ね、気を付けていくのよ」

「うん、心配してくれてありがとう」

そう、私にとっては初めての冒険だ。どんなことが待ち受けているのか、不安だけど楽しみでもある。魔物に気を付けながら、素材採取を頑張っていこう。