軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

94.魔法をかけたリュック(1)

「まず、何入れます?」

「んー……種の袋でも入れてみようか」

「あんなに沢山の種の袋が本当に入るか?」

「どれだけあるか確認は出来そうだよ」

三人で集まって、種が入っている木箱に近づく。その場にしゃがみ込んで木箱を開けると、中から大量の種が入った袋が見えた。

「それじゃあ二人とも、私がリュックを開けておくから、どんどん種の袋を入れて」

「分かりました」

「分かったぞ」

私がリュックの口を開いて持つと、二人が種の袋を中に入れていく。どんどん入っていくのだが、リュックが膨れる兆候はない。それどころか、種を入れて重量が増えているはずなのにリュックが全然重くならない。

「二人ともどう? まだ入りそう?」

「まだ、というどころか……底が見えません」

「なんだこれ、めちゃくちゃ不思議だぞ。種の袋を沢山入れているのに、入れた種の袋を感じないぞ」

二人ともリュックの中に手を突っ込んで、入れたはずの種の袋を探す。でも、どれだけ手を動かしても種の袋の感触はしないらしい。

「うーん、このリュックの中は別次元になっているってことかな」

「別次元ってなんだ?」

「難しい言葉ですね」

「説明も難しいね」

別次元の説明が難しい。うんうん、唸っている間にも二人は種の袋をどんどん入れていく。とうとう、全ての種の袋を入れ終えた。

「種の袋が全部入っちゃいました」

「凄いんだぞ。明らかに種の袋のほうが多いのに、全部入ったんだぞ」

「重さも……リュックと同じ重さだね」

「時空間魔法、こんな魔法なんですね……驚きました」

「ウチには良く分からない魔法なんだぞ」

本当に時空間魔法の空間の魔法はどうなっているんだ? 空間も広げられて、重量すら感じない。不思議な魔法だ、一体どれだけのものを入れられるんだ。

「今度は何を入れてみる?」

「種の袋よりも大きなものがいいですよね」

「んー、薪とか入れてみるか?」

次、何を入れるか相談しあう。そうだなー、次入れる物……もし、このリュックに大きなものが入るんだったら、オークも簡単に入るんじゃないかな。とすれば、オークみたいな大きな物を試しに入れてみるのがいいかも。

この家の中で一番大きなものと言えば……ベッドだよね。

「二人とも、このリュックにベッドが入るか試してみようよ」

「このリュックにベッドをですか? それは、無理なんじゃないですか?」

「リュックにベッド? 訳が分からないことになってきたんだぞー」

「物は試し、やってみようよ」

私が立ち上がりベッドに近づくと、二人は半信半疑ながらも後をついてきてくれる。ベッドの横につくと、リュックの口を広げた。

「どうやって、リュックの中に入れるんですか? 明らかにリュックの口にベッドの大きさが入りません」

「やっぱり、難しいんじゃないか?」

「ちょっと試してみる」

リュックの口を広げてベッドにくっ付けると、ベッドが歪みリュックの中に入った。

「へっ? 二人とも見て、なんかこんな風になったんだけど」

「……ベッドが歪んでリュックの中に入っているように見えるんですが」

「ど、どういうことだー?」

「とりあえず、このまま入れてみるね」

そのままリュックの口を動かすと、ベッドが歪みながらもリュックの中に入っていく。そのままするするとベッドをリュックの中に入れていき、ベッドはリュックの中に吸い込まれるようにして消えていった。

「「「……」」」

三人で絶句する。今、目の前で起こったことが信じられない。

「ベッドが中に入っちゃったよ。見た?」

「見ました、信じられません」

「ど、どういうことだー?」

リュックを持ち上げても、ベッドの重さは感じない。感じるのはリュックの重さだけだ。

「これが時空間魔法の空間の魔法、ていうことだよね」

「……あのベッドは歪められた空間に入っていったということですか」

「歪んだらベッドが壊れるんじゃないか?」

「でも、その様子はありませんでした。どういうことでしょう?」

「うーん、分からないことだらけの魔法だね」

どういう原理か分からないが、多分ベッドはリュックの中に入ったんだろう、それは間違いない。でも、これで時空間魔法をつけたリュックの力が良く分かった。どれだけの物が入るか分からないけれど、沢山の物をいれることが出来て、なおかつ重さを軽減させることが出来る。

「このリュックはすごいことになったね」

「はい。ベッドが中に入ったとなると、オークも中に入りそうですね」

「ほ、本当か!? そしたら、このリュックを持っていけばオークを倒しても良いんだな!?」

「……うん、そうだね。多分、この時空間魔法のついたリュックを持っていけば、オークを入れられると思う」

ベッドが入ったんなら、オークも入るはずだ。だったら、このリュックを持っていけば荷車を持っていく必要はない。クレハはオークが倒してもいいことを知り、とても嬉しそうに飛び上がった。

「そういえば、取り出す時はどうしたらいいんでしょう?」

「あ、そうだね。それも確認しなきゃ」

入れることばかり考えていたから、出すことを考えていなかった。手を突っ込んでも、手は何にも当たらない。これだと手探りで出すことは無理だということだ。

そうしたら、どうやって取り出すんだろう?

「うーん、ベッド出ないかなー」

そうつぶやいた時、手に木の感触が当たった。それを掴み引っ張っていくと、空間が歪みベッドの足が外に出てくる。

「あ、出てきた」

「なるほど、口で言えば出てくるんでしょうか?」

「鞄に耳でもついているのか?」

「うーん、耳はついていないけど。多分、自分の意識がこのリュックにかかった魔法と連動しているような気がする」

多分、心の中で思っても出てくると思う。試しに出てきたベッドをもう一度リュックの中に戻して、手には何もない状態にする。そして、ベッドを意識するとベッドの感触が手に当たった。それを引っ張り出すと、ベッドの足が出てくる。

「ほら、口に出さなくてもベッドを取り出したよ」

「本当ですね。だったら、意識すれば出てきますね」

「ウチは口で言った方が楽だぞ」

「じゃあ、ベッドを出してみるよ」

リュックを置いて、ベッドを引っ張って出してみる。不思議なことにベッドの感触はしっかりするのだが、重量を感じられない。どういう原理かは分からないが、歪められた空間に入っている時は重量を感じられないようになっている。

そして、ベッドを全て出した時にズシンという重さが手に伝わり、ベッドは床に再び置かれた。

「重さを感じずに簡単に取り出せたよ」

「こんなに簡単に取り出すことが出来るんですね」

「ウチやイリスにも出来そうか?」

「うん、出来ると思うよ」

「試してみてもいいですか?」

「うん、やってみて」

イリスにリュックを手渡すと、イリスはリュックを片手にベッドを中に入れようとする。その光景を見ながら、思いついたことがある。イリスとクレハのリュックにも同じ魔法を施そう。

私はイスにかけてあった二人のリュックをダイニングテーブルの上に置くと、リュックの中に手を突っ込む。そして、時空間魔法の空間を意識して魔法を発動させた。

その時だ、グラリと視界が揺れて体が脱力する。なんとかテーブルを掴み、倒れることは阻止できた。もしかして、魔力切れを起こしたのかな?

魔法を発動しようとした時に異変が起こったんだから、魔力に関する不具合なことが起こったに違いない。ということは、今日はこれ以上の魔法付与は出来ないということか。

ということは、一日一回までこの付与魔法が使えるってことかな? 大層な魔法だから、それぐらいの制約はあっても仕方ないだろう。

「やった、入りました!」

「おお、凄いんだぞ! 次はウチにも使わせてくれ!」

そんなことをしている間にイリスはベッドをリュックの中に入れるのを成功したらしい。二人で嬉しそうにしている姿を見ると、微笑ましく感じる。

明日は私のリュックを持っていって使ってもらおう。そして、使い心地を教えてもらおうかな。