軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

86.家畜を飼おう(4)

宿屋で朝食を食べ終え、雑貨屋で餌を入れる袋を大量に買ってきた私たちは家に戻ってきた。

「畑仕事をする前に、牛と鶏に餌をあげてこようか」

「一緒に行ってもいいですか?」

「ウチも行くぞ!」

「なら、一緒に行こうか」

昨日作っておいた牛と鶏の餌が入った袋を持って三人で外に出た。牛と鶏がいる石の囲いに近づくと、牛は地面の上に座り込み、鶏は三羽で固まっている。

「全然動いてないな」

「元気なさそうですね」

「そうなんだよね。だから、優しくしてあげてね」

二人は頷いて答えてくれた。それから、石の囲いの中に入るとまずは水の入れ替えをする。牛の水場の水を魔動力で浮かせて地面に捨てる、それから新しい水を入れた。鶏用の水場も同じように水を入れ替える。

それから餌場を作る。昨日は木の器ごと渡したけど、今回からは水入れと同じようなものを作る予定だ。地面に手をつき、餌場をイメージして地魔法を発動させる。すると、石がせり上がっていき、イメージ通りの餌場を作ることが出来た。

「二人とも、今作った餌場に餌を入れて」

クレハに牛の餌、イリスに鶏の餌を預ける。二人はそれぞれの餌場に餌を入れた。

「もう餌がないんだぞ」

「今日作らないとダメみたいですね」

「そうなんだよね、昨日は少ししか作れなかったから今日はいっぱい作るつもり」

「ホラー、餌だぞー」

「食べてください」

クレハは牛に近寄り、イリスは鶏に近づいた。だけど、反応はいまいちで餌に集ることはしない。

「どうしたんだ、お腹が減っていないのか?」

「反応が鈍いですね」

「餌の近くに誘導してあげて」

「牛に触ってもいいのか?」

「鶏もいいですか?」

「もちろん、いいよ」

クレハは恐る恐る牛に近づいてその体をさすってあげた。

「おーい、聞こえているか? 餌があるんだぞー、美味しいぞー」

牛に声をかけるが、反応が鈍い。それでもクレハは懸命に声をかけ続けた。

一方、イリスは鶏の体を両手で掴んで餌場へと誘導する。

「はい、怖くないですよ。昨日食べた同じ餌がありますからね、そちらに行きましょう」

三羽の鶏を餌場の近くに移動してあげる。しばらく、ボーッとしていた鶏だったが餌の存在に気づいた。すると、ゆっくりとだが餌をついばみ始める。

「あ、食べました! いっぱい食べて、早く元気になってくださいね」

イリスは嬉しそうにそういうと、鶏を撫でてあげる。

「ふふっ、フワフワしてて気持ちがいいですね」

優しい手つきで撫でているが、鶏は逃げない。もしかしたら、逃げる意思すらないかもしれないけれど、嫌がっていなくて良かった。

「うー、動けー! あっちに餌があるんだぞー!」

クレハの声が聞こえたので振り返ってみると、クレハは牛の体を押していた。でも、牛は動かずに黙って座ったままだ。

「クレハ、そういう時は手に餌を持って口の近くに寄せてみて」

「分かったぞ」

クレハは餌場から餌を片手に盛ると、牛の鼻先にそれを差し出した。

「ほらほら、餌だぞー」

ちらちらと餌を見せびらかすと、牛の頭が動いた。顔を傾かせて、餌を見ているように見える。すると、牛が長い舌を出した。

「うわっ、びっくりした」

クレハの片手に乗った餌を舌で巻き取って食べた。良かった、餌を食べてくれて。

「ほら、こっちだぞー。ほら、立って!」

少しの距離を取ると、牛は重い腰を起こしてクレハに近づいていった。ゆっくりとした足取りで餌場へと向かい、舌を使って餌を食べ始める。

「おー、ようやく餌を食べてくれたぞ! よしよし、いい子だいい子だ」

大きな体をペチペチと叩いて牛を労った。これでなんとか餌を与えることに成功した、食べてくれて安心だよ。

「二人とも、牛と鶏に触れ合ってどうだった?」

「鶏はフワフワして気持ち良かったです」

「牛は舌がすんごく長くてビックリしたぞ」

「元気がないので、早く元気になって欲しいって思いました」

「ウチもそう思った。この子たちの世話、頑張ろうな!」

牛と鶏を身近に感じてくれて本当に良かった。これで家族の一員になった気になってくれたらいいな。

「それじゃあ、畑仕事をしようか。種を持ってくるね」

「畑で待ってますね」

「じゃーなー、おまえら」

私は石の囲いの外に出ると、家の中に入った。持っていく種はとうもろこし、大豆、麦だ。種の入っている袋をチェストから取り出して、急いで外に出ていく。畑の前に行くと二人が待っていてくれた。

「お待たせ。この種を畑全体に埋めてね」

「ウチはこの袋の種をやるぞ」

「じゃあ、私はこの袋をやりますね」

三つの袋を三人で分けて、早速作業開始だ。と、その前に試してみたいことがある。

「二人ともちょっと待ってて、いいことを思いついたからやってみたいの」

「何をするんだ?」

「地魔法で種を植える穴を空けられないか試してみたいの」

「へー、そんなことが出来るんですか」

私は地面に手をつくと、意識を集中する。この畑一面に種の穴が出来るイメージをして、地魔法を発動させた。全く動きのない畑を見て不安になるが、近寄って確認してみる。

「あ、穴が出来てる!」

「どれどれ……本当だ沢山の穴が空いているんだぞ!」

「やりましたね、成功です」

良かった、地魔法が成功したよ。二人が手を上げてきたので私も手を上げて、みんなでハイタッチをした。

「じゃあ、この穴の中に種を入れていこう」

「これだと早く終わりそうですね」

「どんどん、入れていくんだぞー」

それぞれが畑に散らばると、種を撒き始めた。穴に種を入れて、指で簡単に土を被せる、作業はそれだけだ。だけど、量があるのでこれを沢山やらないといけない。

地道に作業を続けていく。種を入れて、土を被せ、種を入れて、土を被せる。黙々と作業を続けていった。

数十分後、全ての種を植え終えて三人で集まる。

「腰が痛いぞー」

「ずっとかがむ作業は大変ですね」

「こういう時はストレッチすればいいよ。ほら、こんな風に」

私が腰を回したり、前や後ろに倒したりして見本を見せてみた。

「こうか?」

「こうですか?」

二人も真似して腰を動かす。

「お、お、おー……なんだか楽になったぞ」

「あんなに重たかった腰が軽くなりました」

「このストレッチっていうのいいな。魔物討伐の後にやると、良さそうじゃないか」

「それいいですね。疲れて固くなった体が解されますよ」

まさか、こんなにストレッチを気に入ってくれるなんて思ってもみなかった。体を伸ばすのは気持ちがいいし、体にもいいから積極的にやっていこう。

「じゃあ、夜に一緒にストレッチしようか」

「それ、いいな!」

「なんだか楽しそうです」

クレハもイリスも喜んでもらえて嬉しいな。さて、遊びはこの辺までにして仕事をしなくっちゃ。

その場にしゃがみ込むと、地面に手をつく。そして魔力を高めると、植物魔法を発動させた。すると、種から芽が出て作物はぐんぐん成長していく。

大きくなって、沢山の実をつけて、植物魔法を切る。畑にはあっという間に、成長しきった作物で埋め尽くされた。

「うーん、絶景かな」

「沢山出来たなー」

「収穫頑張りましょうね。まず、何からやりますか?」

「麦から始めていこうか」

「なら、脱穀はウチがやるぞ!」

「じゃあ、私は実を拾いますね」

それをいうと三人は散らばっていった。私は麦の傍に近寄ると、その場でしゃがむ。それから風魔法を鎌のように扱って、麦の茎を切った。切った麦に乾燥魔法をかけると、今度は魔動力で宙に浮かせてクレハの傍まで持っていく。

「じゃあ、よろしくね」

「任せろ!」

そういうとクレハは麦の束を持って脱穀を始めた。私は元の位置に戻り、また麦を刈っていく。