軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

61.新居を調えよう

仕立屋を出ていった私は雑貨屋へ向かった。扉を開けて、元気に挨拶をする。

「おはよう!」

「おや、早いね。おはよう」

店の奥のカウンターにはすでにおばさんが座っていた。

「お店の商品、見ていってもいい?」

「あぁ、もちろんだよ。好きに見ていってくれ」

許しを得て私は店の中の商品を見て回る。今日欲しいのは今まで石の器を使っていた調理器具やら小物だ。外にいる時はそれでなんとかなっていたが、今度から家の中で作ることになる。だから、石の器は卒業したかった。

まずは油で揚げることの出来る大きな鍋が欲しい。店の中を探してみると、お目当ての鍋があった。鉄製で大きな鍋だ、これだったら色んな揚げ物が出来ると思う。

次にパンを捏ねたり、他の調理などに使う木の器だ。大きいもの中ぐらいのもの小さいもの、色んなサイズのものが欲しい。探してみると、木の器があった。かなりの量があり、選び放題だ。

その中から自分が欲しいものを選び、先ほど見つけた鍋の中に入れておく。これだけあれば、十分だろう。買う物を持ってカウンターに行った。

「すいません、これください」

「はいよ。今計算するからちょっと待っておくれ」

おばさんは一つずつ品物の値段を確認すると、計算機を弾いていく。

「これくらいの値段になるよ」

「はい、これ」

「はい、毎度。これがおつりね」

これで買い物が終了した。少しずつ物が揃っていくのはいいよね、なんだか嬉しくなる。

「そういえば、この間の布団はどうなった?」

「届いて昨日から使っているよ。すっごくフワフワで気持ちがいいの」

「そりゃあ、良かったね。ノアちゃんも良いものが買えるようになったんだね、なんだか嬉しいよ」

「うん、私も嬉しい!」

働いて少しずつお金が貯まって、欲しいものが買える。ようやく普通の生活が出来始めたんだ、と実感した。ここに来た時はどうなることかと思ったけど、なんとかなって本当に良かったな。

「それじゃあ、おばさん。またね」

「あぁ、また買い物していっておくれ」

私はおばさんに別れを告げると店から出ていった。

鍋と木の器を買った私は家に帰ってきた。早速その二つを棚に置く、何もなかった棚に物が増えた。あとは外にある石の棚の中に入っているものをここに移していこう。

家の扉を開けっ放しにして、石の棚にあった食器類や調理器具を家の中の棚とキッチンカウンターの上に移した。これで家の中でも料理が出来るようになった。

外に行き、石の冷蔵庫の前で考える。この冷蔵庫を木の冷蔵庫に変えた方がいいのか、それとも石のままの冷蔵庫がいいのか、悩ましい。

やっぱり、家に置くのであれば木製の方がいいかな。よし、今度は木の冷蔵庫を作ってみよう。必要な金具もあるし、この後木工所に行って買ってこようかな。

じゃあ、この石の冷蔵庫は解除してなくしてっと。地魔法を発動させると、石の冷蔵庫は跡形もなく消えた。

次に石の家だ。同じく地魔法を発動させて、解除を行うと石の家が跡形もなくなくなった。少しの間だったけど、今までありがとう。心の中で石の家とお別れをした。

石の家が無くなった後に残ったのはベッドの代わりに使っていた、シーツの被さった枯草と毛布だった。シーツと毛布は使えるから、ひとかたまりにして洗浄魔法をかける。残った枯草は火魔法で焼却処分をした。

シーツと毛布を持って家の中に入ると、綺麗に折りたたんでクローゼットの下の方に置いておく。うーん、こういうものを入れるタンスとか作ったほうがいいのかな? 緊急性もないし、とりあえず保留でいいや。

これで小物類の移動は終わったかな。えーっと、あとやることは木の冷蔵庫を作ることだね。よし、木工所に行って必要な金具を買ってこよう。

木工所へ行き、必要な金具を買って帰ってきた。早速、木の冷蔵庫作りを始めよう。

残っていた丸太を適切な長さに切って、作業台に置く。そしたら定規のペンを使って線を引いていき、今度は線に沿って風魔法で切る。大きな長方形の木の塊と厚めな板が二枚できた。

次に長方形の木の塊を掘る。前世の冷蔵庫の形を頭に思い浮かべながら、二つのくぼみを作っていく。くぼみを作り終えると、今度は二つ並んだくぼみを遮っている壁に幾つかの穴を掘っていく。この穴は冷気の通り道だ。

くぼみを作り、冷気の通り穴も作った、今度は扉の部分だ。板の大きさをくぼみを覆い隠すような大きさにして、冷蔵庫の中側に面する部分をくぼみにピッタリと嵌るように削っていく。

凸のような形にして、調節することができた。重ね合わせると、板がピッタリと冷蔵庫本体に嵌る。あとは、この板と冷蔵庫を繋げる金具をつけ、二つがきつく締まるような金具をつけたら完成だ。

木の冷蔵庫! 上部に氷を入れて、冷たい冷気が下に下りてくる。冷やしたいものを下に置いておけば、時間をおけば冷やしてくれるものだ。うん、上出来。

出来上がった木の冷蔵庫を魔動力で浮かせて、家の中に持っていく。置く場所はえーっと、棚の隣でいいかな? これで、よしっと。うん、やっぱり物が増えるのっていいね。

冷蔵の上部の所に氷魔法で氷を出して、先に冷蔵庫を冷やしておく。じゃあ、肉屋に行って肉を買ってこよう! さっき、買って来ればよかったな、失敗した。

もう一度村に行き、肉屋に寄って肉を買ってきた。その帰り道、家の近くで馬に乗って移動している人を見かけた。それは見覚えのある姿、男爵様だった。

「男爵様、こんにちは!」

「おお、ノアか丁度いいところにきた」

「何か用事があったんですか?」

「今からお前の家を見に行こうと思ってたんだよ。完成したって聞いてな、どれくらいの仕上がりかが見たいんだが、いいか?」

「もちろん、いいですよ」

家までもうすぐだ、男爵様を先導するように先を走っていく。すると、家が見えてきた。

「本当に家が建っている……信じられない」

男爵様は家を見て驚いた。そのまま近づいていき、家の目の前までやってきた。男爵様は馬から下りると、家に近づいていく。

「これを本当にノア一人で建てたのか?」

「はい、そうです。新しい魔法のお陰でなんとか建てることが出来ました」

「そうなのか、信じられないがこれが事実なんだろうな」

家に手をついてペタペタと触ったり、じーっと見つめたりした。

「驚くほどに木と木の間の隙間がない。木材が真っすぐに切られている証拠だな」

「木を切る作業も魔法でやりました。手でやるよりも早く終わって、正確に真っすぐ切ることができました」

「ふむ、そうか。魔法がここまで便利に使えるとはな、魔物退治以外にも活用方法はあるんだな」

手で木を切るのは本当に大変なことだ。それを魔法で補うことができたのは良かったと思う。色んな魔法が使えたから、この家を建てられたんだよね。

「ちょっと、中を見てもいいか?」

「いいですよ」

男爵様は扉を開けて、家の中に入った。

「おぉ、中はこんな感じなんだな」

感心したように家の中に入り、あちこちを見て回る。

「この家具たちはどうした?」

「自分で作りました」

「何、家具も自分で作っただと? ノアの魔法はなんでも作れるんだな。あそこにある、暖炉とかかまどとかも自分で作ったのか?」

「はい、そこは地魔法で形を整えながら慎重に作りました」

「魔法でこんなものも作れるとは」

男爵様は興味深そうに周りを見て歩く。一番じっくりと見たのは家の壁で、隙間がないかじっくりと見て回った。

「うむ、恐ろしく隙間のない家だな。こういうのは少しでも隙間ができる筈なんだが、これも魔法のお陰なのか」

「人の手だとちょっとした歪みも出来ちゃいますからね。その分、魔法だと正確に木を切ることが出来ると思います」

「そうか……魔法の使い手を木工所に一人置くのも手だな。そしたら、その魔法使いに大工の仕事をさせて、効率と速度を上げるのもいいな」

その後も男爵様は家をじっくりと見回る。時々、何かを深く考えている様子だった。領地経営も大変なんだな、と近くにいた私はそう思った。