軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

59.ベッドで寝よう

戻ってきた私は荷車から布団と枕を魔動力で浮かせると、家の中に入る。それから窓際に三つ並んだベッドに近づく。

「えーっと、これが敷布団、こっちが掛け布団だね。よし」

布団を確認すると、先に敷布団をベッドの上に敷く。その上に掛け布団をかけて枕を置いた、これでベッドの準備は完了。

「ようやく、ベッドで寝られる時が来たのか」

実家にいた時はベッドで寝ていた記憶はある、だけど召使いになってから冷たくて固い床でしか寝たことがない。だから、このベッドで寝られる時が本当に楽しみだ。

今寝転がってみるのもいいけれど、できればあの二人と喜びを分かち合いたい。だから、今寝転がるのはやめておく。一緒に喜んだ方が何倍も嬉しいからね。

「二人が帰ってくるのが楽しみだな。さて、私は夕食の準備でもしようかな」

今日はとびっきりの料理を作って二人を待っていよう。

夕暮れになり、二人が魔物討伐から帰ってきた。

「おかえり。はい、氷水」

いつものように先に氷水を渡す。

「プハー、生き返るー」

「この瞬間が好きです」

「それじゃあ、洗浄魔法かけるよー」

水を飲みほした二人に洗浄魔法をかけると、二人の服や肌が一瞬で綺麗になった。

「今日の夕食は肉と野菜のトマト煮込みときな粉揚げパンだよ」

「やった、きな粉揚げパンだ!」

「わぁ、楽しみです!」

「さぁ、座って!」

石のテーブルに促すと、二人は石のイスに座った。それから温めてあったトマト煮込みを皿に盛り、氷水と一緒に配膳する。

「「「いただきます」」」

手を合わせて挨拶をすると食べ始める。今日あったことを話しながら、楽しそうに会話をした。

「そうそう、二人に言わなくちゃいけないことがあるんだよね」

「ん、なんだ?」

「今日でこの場所で食事をするのをやめようと思うの」

「……ということは」

「そう、明日から家の中で食べることになるよ」

家の中の家具が充実して、今後は家の中で食事が取れるようになった。台所もあってキッチンカウンターもある、ダイニングテーブルとイスだってある。もう、家で食べる家具の準備は万端だ。

「だから、今日はここで最後の食事になるんだ」

「そうか、この石のテーブルとイスともお別れか」

「結構使っていましたから、これで終わりになると思うとちょっと寂しいですね」

「適当に作った石のテーブルとイスだったけど、慣れると意外と快適だったからね」

食事をする場所として急ごしらえで作った石のテーブルと石のイス。ちょっと使い辛いけれど、慣れると案外居心地がいい場所になった。新しい家、新しい家具が出来た今になれば、もうこの場所も必要ない。

「それに、とうとうベッドの布団が届いたの。今日から家の中で寝るよ」

「おお! とうとう、ベッドで寝られるのか!」

「ベッドで寝られるんですか!」

「うん、ベッドはもう準備が終わっているから、あとは横になるだけだよ」

「うわー、楽しみなんだぞ」

「早く横になってみたいです」

ベッドの完成に二人が沸いた。本当に喜んでいるみたいで、用意した者としては嬉しい気持ちだ。三人で気持ちよく寝られるようにいい寝具を用意したし、寝る時が楽しみ。

「早く家の中を見たいのに、食事が美味しすぎて中々離れられないんだぞ」

「この後にきな粉揚げパンもありますからね。味わって食べないと損ですよ」

「そうなんだよなぁ。急いで食べるのも勿体ないし、うぅ……急ぎたいのに急げないこの気持ちをどう表現すればー」

「まぁまぁ、ゆっくり食べてじっくりと見ればいいよ」

手をかけて作った食事が美味しかろう。しっかりと味わってから、家の中を見て欲しい。でも、生殺しのこの状況は私にもダメージだ。私も早く見て欲しいとは思っている。

急がずに急ぎながらトマト煮込みを食べると、今度はきな粉揚げパンだ。熱した油の中にパンを入れて、両面をこんがりと揚げていく。揚がったパンを取り出して、きな粉をまぶすと完成だ。

皿に盛って二人の前に出すと表情が一気に変わった。

「あちちっ、はむっ。ん、ん、んまーい」

「香ばしさとほのかな甘味を感じて、本当に美味しいです」

二人は幸せそうな顔をしてきな粉揚げパンを頬張った。私もアツアツのうちに一噛みする、するときな粉の香ばしさの中に砂糖の甘味を感じることができてとても美味しい。

三人で夢中になってきな粉揚げパンを食べた。

「あー、くったくったー。ごちそうさま」

「満足です、ごちそうさまでした」

「おそまつさま」

二人は満足そうな顔をしてお腹を撫でた。こうやって美味しそうに食べてくれるのが一番嬉しいよね。

二人が食べ終わった食器に洗浄魔法をかけると、食器を棚に片づける。食事はこれで終了した、ということは――

「じゃあ、家の中に行ってみようか」

「おう!」

「はい!」

ようやく、お楽しみの時間が来た。立ち上がった私たちは家へと近づいていく。辺りが暗くなり始めたので、生活魔法の光源を使って家を照らした。

「じゃあ、中に入るよ」

「ドキドキするな」

「はい」

ゆっくりと扉を開けて、光源を部屋の中央に移動させた。光源が照らす部屋にはダイニングテーブルとイスがあり、その右手にはかまど、石窯、棚、キッチンカウンターがある。部屋の奥にはクローゼットがあった。

そして、肝心のベッドは窓際に置いてあり、そこに三つ並んでいる。

「家の中に家具が増えてるぞ」

「普通の家みたいです」

「好きにみてもいいよ」

クレハはダイニングテーブルに近づき、イリスはクローゼットに近づいた。

「すっごく立派なテーブルとイスなんだぞ! これもノアが作ったのか?」

「うん、そうだよ。しっかりと出来ているでしょ」

「イスの座り心地がいいんだぞー。ここで食事をするのが楽しみだ!」

クレハはイスに座り、ダイニングテーブルの感触を確かめていた。

「わぁ、クローゼットもあるんですね。中は……まだ服はありませんね」

「これから服が沢山増えてもいいように、大きく作ったよ。下には引き出しも作ったし、小物なんかも入れられるよ」

「大容量ですね。これを見ていたら色々と物を増やしたくなります」

イリスは女の子らしく服のことが気になるみたい。クローゼットを見ながら、どんなものを増やそうか悩んでいるみたいだ。

みんなが一通り家具を見回った後、一か所に集まった。それはベッドの前だ。

「本当に布団があるー!」

「しっかりとしたベッドですね!」

ベッドを見た二人の目が輝いて見えた。待ちかねたベッドの存在が目の前にあることが嬉しいらしい、私もこの時をずっと待っていたよ。

「それじゃ、三人で同時にベッドの上に乗ってみようよ」

「ベッドに飛び込もうな、な!」

「そうですね。いっせーのーで、で飛び込みましょう」

「じゃあ、行くよー。いっせーのーで!」

合図と一緒に私たちはベッドに正面からダイブした。布団に体がつくと、ふんわりとした感触がする。ベッドの布団は私たちを柔らかく迎え入れてくれた。

「やわらかーい!」

「気持ちいいです!」

「なんだこれ、なんだこれ!」

掛け布団は柔らかくふかふかしていて、敷布団と枕は固すぎず柔らかすぎずのいい感じ。手で布団をもみもみすると、幸せの感触がした。

「この布団、気持ちいいね」

「はい! こんな気持ちいい布団、孤児院ではなかったです!」

「ふかふかー、ふかふかー」

布団の上でゴロゴロして感触を楽しむ。もっともっと、この感触に包まれたい!

「ちょっと早いけど、もう寝ない?」

「いいですね。外も暗くなってきましたし、寝てしまいましょう」

「この布団に横になったらすぐに寝そうだぞ」

ちょっと早いけどもう寝ることにした。私たちは靴を脱いで、改めて布団の中に入った。全身を包み込む布団の感触が心地よすぎて、溶けてしまいそうになる。

「こんな布団で寝られるなんて幸せだな。今日寝られるかどうか心配になってきたよ」

「ふかふかすぎて興奮するんだぞ! 今日は寝られないかもな!」

「この中に入ったら、もう出られなくなりそうです。暑いのに布団も被っていたい気分です」

布団の上で横になりながら、感想を言い合う。このままずっと起きていそう、そう思って楽しくお喋りしていたのに、私たちはいつの間にか寝入ってしまった。