軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

4.避難民が溢れた町、ハイベルク

あれから歩いて四日、私たちの前に高い壁が見えてきた。

「見て、ハイベルクの町です!」

「とうとう着いたか、いやー長かったな」

イリスは喜び、クレハは感慨深く腕組をする。

「なんとか食糧がもって良かったね」

リュックの中に入っていた肉類は半分を食べ終えて、水は残り一本しか残っていない状況だった。着くのがもう少し遅れれば、危ない状況になっていたかもしれない。

「もう少ししたら町に着きますけれど、町に着いたらどうします?」

「ウチはベッドで寝たいー」

「あ、私も賛成」

「でも、お金は大丈夫ですか?」

六日間地面に寝そべるだけの生活だったから、きちんとしたベッドで寝たい。イリスだけは不安げな顔をするけど、大丈夫!

「お金だったらあるから大丈夫だよ。みんなで泊まれるように、安宿に宿泊しよう」

「いいんですか? でも、そうしてくれると助かります」

「町に行ったら働くから、そしたら使った金は返すからな!」

みんなで安宿に泊まりつつ、あの町で働いて暮すことができたらいいな。もう奴隷のような召使いをしなくてもいいし、やりたいことはなんだってできる。

町から追い出されたのに、私には希望があった。今までの待遇がこれ以上ないってくらいに悪かったから、後は上がるしかないよね。これからは平穏な暮らしをするんだ。

「みんなで協力してあの町で暮そう!」

「おー!」

「はい!」

ハイベルクを囲う外壁、門の周辺には町を追われた人々でごった返していた。町に入りたい人の行列が続き、時折喧噪も聞かれる。

「凄い人ですね、こんなに沢山の人が逃げてきたんですね」

「歩いている時はそんなに人は見なかったけれど、ウチらの前にこんなに人がいたんだな」

二人は驚いたような表情をして辺りを見渡していた。私たちも町に入る列に並び、自分の順番を待っている。

とにかく沢山の人が詰めかけているのが分かった。列は凄い勢いで前へと進み、自分の順番が近づいているのが分かる。その時、門の付近から門番の声が聞こえてきた。

「ゆっくり前に進んで町に入ってくれ! そこ、喧嘩をするんだったら追い出すぞ!」

「通行料は取らない、だが町に入ってからは問題を起こさずに大人しくして欲しい!」

「今、領主様が対応をお考え中だ! 近日、お考えが発表されるだろう! それまではこの町で大人しく暮していろ!」

良かった、受け入れられているみたい。これだったら安心して中に入れるね。でも、こんなに大勢の人を受け入れて大丈夫なんだろうか?

待てよ、こんなに大勢の人が入ったら宿屋なんてすぐに埋まっちゃうんじゃないかな。いけない、町に入ったらすぐに宿屋を探さないと、泊まる場所がなくなっちゃう。

「二人とも、町に入ったらすぐに宿屋を探しに行くよ」

「ん、どうしてだ?」

「私たちが宿に泊まりたいと思っているんだったら、他の人も同じ考えだと思う。早く宿を取らないと、寝るところがなくなっちゃう」

「そうですね、だったら町に入ったらすぐに宿屋を探しに行きましょう」

二人に宿のことを話すとそれもそうだと分かってくれた。せめて、今日だけでも宿に泊まりたい。疲労が溜まった足で動いていく列を進んでいく。

無事、町の中に入れた私たちは宿屋を探して町の中を歩き回った。町の中は人が大勢いて、避難してきた人たちが沢山いるということが良く分かる。こんな中で宿屋なんて見つかるんだろうか……いいや、見つけるんだ。

表通りにある宿屋はみんな高そうな佇まいをしているから、狙い目は路地にある宿屋だ。色んな路地に入り宿屋を探していくと、一件目の宿屋が見つかった。

「あそこなんて良さそうだぞ」

「私たちにぴったりな宿屋ですね」

「聞いてみよう」

ちょっと寂れたような宿屋を発見して浮足立つ私たち。あの宿屋なら自分たちでも泊まれそうだ。駆け足で近寄ると、扉を開けた。

「いらっしゃい」

すぐ目の前にあったカウンターにおばさんが座っていた。

「あの、三人泊まりたいんですけど」

そういうとおばさんは険しい表情をして話始めた。

「もしかして、避難してきた人たちかい?」

「そうだぜ」

「はぁ……そうかい。だが、あいにくここは満室になっちまってるよ」

「え、どうしてですか?」

「沢山の人が避難してきたんだ、まずは泊まる場所を確保する人がいるんだよ。ウチの宿屋もそういったお客で一杯になっちまったよ」

この宿屋はすでに一杯になっていたみたいだ。私たちはがっくりと項垂れる。

「もしかしたら、同じような宿屋はもう満室になっているかもよ」

「え、そうなのか!?」

「早く次の宿屋を探しましょう」

「おばさん、ありがとうございました!」

「宿屋が見つかるといいね」

会話をそこそこにして私たちは宿屋を飛び出した。

「次は手分けして探してみましょう」

「そうだな、そのほうが見つけやすい」

「それじゃあ、次の路地を探していこう」

作戦を練ると私たちは路地を駆け出した。どうにかして、今日は宿屋に泊まりたい。その思いが原動力となり、疲れた体でも元気に走り回れた。

「そっちはどうだった?」

「ウチのところは宿屋がなかった」

「こっちの路地も宿屋がなかったです」

あれからずっと探していたけれど、泊まれる宿屋は見つからなかった。町中を駆け回っていたから、足が棒になっちゃったよ。疲れ果てた私たちは家の壁に寄りかかり、その場に座り込んでしまった。

「もう夕暮れだ、今日はもう無理なんじゃないか?」

「今日はどこで寝ましょうか」

辺りを見渡せば夕日に染まっていた、町の人たちは帰路につく頃だ。だけど、私たちには帰るべき場所がない。途方に暮れて、二人は体を縮こませる。

そうだよね、十歳といってもまだ子供なんだから心細くて当たり前だよね。私は前世の大人だった記憶と召使いだった時の記憶があるから、そこまで落ち込んでいない。

ここは大人の精神を持つ、私が二人を励まして守らなくちゃね。

「宿屋がなくたって大丈夫だよ。今までだって地べたで寝ていたんだから、その延長だと思えばいい」

「だけどよ、地面で寝るのも辛いぜ」

「孤児院にいた時はベッドはありましたし、今の状況は慣れていません」

落ち込んだ二人を見ると胸が痛くなる。どうにかしてあげたいけれど、どうにもできない歯がゆさが残った。私も落ち込みそうになる気持ちをぐっと堪えて、二人に声をかけ続ける。

「命が助かっただけでも私たちは幸運だったんだから、これ以上悪くなることはないって。今が底辺だとしたら、これからは上がるしかないよ。ね、いい暮らしをするために今は我慢だよ」

励ますように明るい声でいうと、元気のなかった二人の目に光が戻ってきた。

「これから上がるしかないってなんで分かるんだよ、変なの」

「ふふっ、三人でいい暮らしをしてみたいですね」

良かった、少しは元気が戻ってきたみたい。落ち込んでいる暇なんてないんだから、やれることは一杯あるから、一つずつ消化していこう。

「じゃあ、二人とも立って。行くよ」

「行くってどこへ行くんだよ」

「どこか行く場所ってありましたっけ?」

「それはもちろん、商業ギルドへ」

まずは商業ギルドで登録だ! そしたら、明日からこの町で働けるかも。働き出したら、きっとなんとかなる! まずはお金稼ぎから始めよう。