作品タイトル不明
町の誕生祭~腕比べイベントを添えて~(1)
「コルクさーん。作物、持ってきたよー」
お店の奥に向かって声をかけると、そこからコルクさんが現れた。
「おー、お疲れさん。じゃあ、奥の倉庫で確認してもいいか?」
コルクさんが手招きをすると、私は店の奥の倉庫へと入って行った。そこで、指定された場所にリュックから作物を取り出していく。
かなりの量があったため、取り出すのに三十分もかかってしまった。コルクさんは一つずつ検分し、メモに数字を書き込んでいく。
「これで全部だよ」
「ありがとう。じゃあ、精算するからカウンターに来てくれ」
私たちはまた店の中に戻ると、コルクさんがお金を差し出してきた。それを受け取り、袋の中に入れておく。
「それにしても、かなりの量だったね。そんなに隣町では、食料が足りてないの?」
「いや、今度町の誕生祭があるんだよ。その為に必要な物が多くてな」
なるほど、お祭りがあるんだ。それは、たくさんの食べ物が必要になる。
「出来るだけ新鮮な物を使いたいからって、祭りの前日に山のほどの量を用意してくれって言われてな。ノアには大変な思いをさせて、すまなかった」
「ううん、いいよ。最近はのんびりとしていたし、久しぶりに働いたって感じがして楽しかった」
「ふっ……ノアも立派な労働者だな。本当に子供なのによくやるよ」
呆れたように笑ったコルクさんが私の頭を撫でてくれた。すると、「あっ」とコルクさんが声を上げる。
「そうだ。丁度いいから、ノアたちも町に行かないか?」
「町に?」
「仕事や村の事ばかりで大変だろう? だから、町の祭りに参加して息抜きをすればいい」
「えっ、いいの!」
町の祭りと聞いてから興味が出てきたが、すぐに参加する話しになるとは思わなかった。
「クレハもイリスも一緒にな。いつも頑張ってくれているご褒美に遊べばいい」
「うん! きっとクレハもイリスも喜ぶよ。村の祭りも楽しかったけど、町の祭りってどんなのだろう……楽しみ!」
三人で一緒に行けば、絶対に楽しいに決まっている。
「よし、決まりだな。二日後の朝に出発するから、店の前まで来てくれ。馬車で送っていくよ」
「分かった! コルクさん、ありがとう!」
私はコルクさんにお礼を言い、店を出ていった。ワクワクとした気持ちのまま、家へと戻っていった。
◇
「ただいまー!」
「ただいま帰りました」
「二人ともおかえり!」
二人が帰ってきた! 私はすぐに駆け寄り、二人に洗浄魔法をかけた。すると、二人が一瞬で綺麗になり、とても気持ちよさそうに微笑んだ。
「ノア、ありがとう! 腹減ったから、すぐに食べたい!」
「今日は私もお腹ペコペコです」
「ふふっ、二人ともお疲れ様。用意が出来ているから、すぐに食べよう」
二人は持っているリュックや剣を壁にかけると、すぐに席に座った。そして、三人で「いただきます」と声を合わせる。
クレハは食事にがっつき、イリスはいつものように丁寧に食べている。町の祭りを話すなら今しかないよね。
「ねぇ、二人に話があるんだけど」
「話? なんでしょうか?」
「実はね、隣町で誕生祭っていうお祭りが開催されるみたい。コルクさんが作物を届けるついでに私たちを連れて行ってくれるらしいんだ」
「な、何っ!? 祭りだと!?」
すると、クレハが驚いたように立ち上がった。
「村でやったような祭りが、また体験出来るのか?」
「多分、村よりも大きな祭りだから、それ以上に賑やかだと思うよ」
「村の祭りよりも賑やか……一体どんな祭りでしょう」
クレハとイリスが目を輝かせた。村の祭りは楽しかったから、二人は祭りにとても敏感だ。
「どうする? 二人とも、行く?」
「もちろん、行く! 行かないと、グレるぞ!」
「絶対に行きたいです!」
二人とも凄い剣幕だ。これは、行かなかったら拗ねるどころの話じゃない。
「じゃあ、明日コルクさんに伝えておくね。三人一緒に行くって」
「やったー! また、祭りを体験出来るー!」
「わー、どんなお祭りでしょう。凄く楽しみです」
本当に嬉しそうにする二人を見て、心が和んだ。いつも、魔物討伐で大変な思いをしているから、こういった休息は必要不可欠だ。
その日の夜は寝る直前まで賑やかな時間が過ぎていった。
◇
「コルクさーん、来ましたー」
お店に顔を出すと、店の奥からコルクさんが現れた。
「よし、来たな。じゃあ、荷馬車に乗ってくれ」
「どの荷馬車に乗ればいい?」
「一番後ろの荷馬車だ」
そう言われて、私たちは一番後ろの荷馬車を覗き込んだ。そこは、両サイドに席が設けられていて、座れるようになっている。
「ウチがいちばーん!」
「もう、クレハったら……」
クレハが飛び込んで着席すると、イリスが少し怒りながらゆっくりと席に着く。私もそれに続いて席に着いた。
すると、他の従業員も中に入ってきて、荷馬車の中の席はほぼ埋まった。最後にコルクさんが座り、準備が完了した。
馬車が動き出すと、ワクワクは強くなっていく。
「どんな事があるんだろうな!」
「食べるものはいっぱいあるし、楽しいものがいっぱいあるよ」
「イベントも盛りだくさんだし、遊びつくせないかもな」
「そ、そうなんですか? ……楽しみ」
馬車の中は賑やかで、話しが尽きない。クレハとイリスははしゃいで喋るのが止まらないし、それを見ている付き添いの従業員は微笑ましく見守っていた。
村とは違う、町のお祭り。一体、どんな事があるのだろうか?