軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

281.音楽と踊り

「さぁ、収穫祭も終盤だ。最後にみんなで音楽を堪能して、踊りを踊るぞ」

コルクさんの言葉にみんなは盛り上がった。ステージの前にいた人たちは、一番大きな焚火台の所に移動をした。その近くには、楽器を持ったおじさんたちが待機している。

「よし。じゃあ、音楽を始めるぞー」

その声がした後、広場に音楽が広がった。賑やかな曲調で踊るにはピッタリの音楽だ。その音楽を聞いて、焚火台の周りに集まった人たちが踊り出す。

その輪は段々と広がっていき、踊りの輪はとても大きなものになった。

「わぁ、凄いな! 沢山の人が踊ると、とても賑やかなんだぞ!」

「なんだか、見ているだけでワクワクしますね」

「だね! 音楽と踊りが合っていて、とっても良い」

とても楽しそうに踊る姿を見て、私たちはその光景に釘付けになった。みんな、とても楽しそうに踊っていて、見ているだけで楽しくなる。

そんな大人たちが踊る輪に子供たちが入っていった。あのグループは私たちと友達が一緒のグループじゃない。

そのグループはちょっと恥ずかしそうにしながらも、足や手を動かして踊り始めた。はじめはたどたどしかったけれど、時間が経つごとに動きが滑らかになってきた。

「踊り出したな! この曲はあいつらが踊っていた踊りになるもんな」

「私たちは別の曲でしたものねー」

「どうする? この曲に入ってみる?」

「それもいいかもな! あいつらの真似をして踊ってみようぜ!」

「えー、できるでしょうか?」

「こういうのはノリだよ! 踊れなくても、きっと楽しいから。あっ、他の子も誘ってみようよ」

私たちは他の子供たちの所へと行った。踊りを見ていた子供たちは沢山いて、みんなどうしようか迷っているところだったみたい。

「ねぇ、みんなでこの踊りに入ってみようよ」

「えー、でも……。この曲はいつも踊っていた曲とは違うよー」

「今まで踊っていた踊りの曲は違う曲だろう? この曲で踊れるわけねぇよ」

「踊るんだったら、あの子たちが踊っている踊りでしょ?」

「あの子たちの真似をして踊ればいいよ。下手だっていいじゃん。きっと楽しいよ」

私がみんなを説得すると、しぶしぶながらも踊っている子供たちを見て羨ましそうだった。やっぱり、蚊帳の外が一番つまらないものね。

「みんなで適当踊りを踊ってみよう! 適当にこんな風に……」

そう言ってクレハはおかしな踊りを踊った。クネクネしていて、とてもふざけた踊りだ。それを見ていた子供たちはあまりのおかしさに吹き出した。

「なんだよ、その踊り! おもしれー!」

「そういう踊りだったら、踊れるかも」

「適当踊りか……楽しそう!」

「なっ! みんなで適当に踊ってこよう!」

クレハの言葉にみんなその気になった。

「よし、行くぞ!」

「適当踊りだー!」

「やっほー!」

子供たちがその輪に向かって走り出し、その後を私たちが追う。無事、輪の中に入るとみんな適当な踊りを踊り出した。クネクネしたり、ビシッと決めたり、子供の数だけ新しい踊りがあった。

私たちも適当に踊る。先に踊っていた子たちを真似たようで真似ていない、そんな適当な踊りだ。すると、周りから笑い声が聞こえてきた。

「ふははっ! なんだ、その踊りは! おもしれー!」

「いいぞー、もっとやれ!」

「可愛い!」

どうやら、私たちの適当踊りは大人たちに受けているみたいだ。その声に気分を良くした私たちはさらに適当に踊りまくった。すると、私の両手をクレハが掴んだ。

「へっ?」

「それー!」

「わー! 回さないでー!」

クレハが私の手を握って、グルグルと回転し始めた。頭がグワングワンして倒れそうだよ!

「あははっ! 楽しいな、これ!」

「クレハー、回転がキツイよー!」

「でも、楽しいだろう? それー!」

さらに私たちは回転した。こんなの踊りじゃないよー! そう思っていると、回転が止まりクレハの手が離れた。グルグル回る世界の中で、クレハは次にイリスの手を掴んだのが見えた。

「イリスも行くぞー!」

「えっ、ちょっ、えーっ!?」

クレハは今度はイリスを回し始めた。グルグルと回る二人、凄い勢いだ。それを呆然と見ていると、また私の手が捕まった。その人の方を見ると、そこにはティアナが満面の笑みで立っている。

「あれだったら、できる!」

「えっ、ティアナ?」

「それー!」

いつの間にかやってきた、ティアナに手を引っ張られてその場で回転させられる。だけど、クレハみたいに凄い速いっていう訳じゃない。歩く速度でゆっくりと回転していた。

「お姉ちゃん、どう?」

「うん、これくらいなら大丈夫そう」

「えへへ、楽しいね」

「うん、楽しい!」

ただ、手を握って回っているだけなのに楽しい。二人でニコニコと笑いながら回っていると、ティアナの手が離れた。

「他のお兄ちゃんとお姉ちゃんのところにも行ってくる!」

「うん、行っておいで」

あの恥ずかしがり屋のティアナはいなくなったのかな? 今では、元気な子供になって他の子供と楽しそうに遊べる。成長って早いなぁ、としみじみしてしまった。

手持無沙汰になった私は隣を見た。クレハの回転に付き合わされたイリスが頭を抱えてフラフラしている。今度は私がイリスの手を掴んだ。

「えっ……もう回転するのは無理ですよ」

「これでもかな?」

イリスの手を掴んでゆっくりとその場で回転する。先ほどと同じく歩く速度で回転するから、イリスはちょっと驚いたように目を見開いた。

「これだったら大丈夫でしょ?」

「ふふっ……これなら大丈夫です」

「ただ回っているだけなのに楽しいのはなんでかな?」

「さぁ、どうしてでしょう? 音楽があるからですかね」

クルクルと二人で回転しながら言葉を交わす。それだけなのに、こんなに楽しいのはどうしてだろう? 二人で楽しく回っていると、突然私たちの手が掴まれた。その方向を見て見ると、そこにはちょっと不貞腐れたクレハがいた。

「ウチだけ除け者にして、ズルいぞ!」

「除け者って……そんなつもりはなかったんですが」

「そういうつもりはないよ」

「だった、ウチも入れろー!」

クレハが強引に私たちの間に入り、また強く回転し始めた。

「二人に引き回しの刑だー!」

「くっ、今度は負けない!」

「クレハには負けませんから!」

クレハが私たちを回転させようとしてきたので、対抗して私たちもクレハを回転させることにした。物凄い勢いで回る私たち。周りからは笑い声と拍手が沸き起こった。

高速で回転していたが、その速度が落ちて止まってしまった。その途端に私たちの手は離れて、地面に座り込んでしまう。

「うわー、グルグルするぞー」

「回しすぎですよー」

「何やってたんだろう」

回転して頭の中がグルグルになった。しばらく、その場に座っていると……流れてくる音楽が変わった。この曲は私たちが練習した曲だ。私たちは立ち上がって、他の子供たちと合流した。

「よし、俺たちの曲だ。存分に踊るぞ!」

「私たちの舞台ね!」

「踊ろ、踊ろー!」

集まってみんなで気合を入れると、踊りやすいように間隔を開けて並んだ。そして、曲に合わせて私たちは足を動かして踊った。リムート漁村で体験したコッカを真似て作った、私たちだけの踊りだ。

飛び跳ねて、足を交差したり、足踏みをする。時々、手の動きも入れて体全体を使って踊って見せる。みんなと動きが合うのを見ると嬉しくなって、もっと上手に踊ろうと思う。

「子供たち、いいぞー!」

「その調子だ!」

「良い踊りだねー!」

みんなから声援が届くとちょっと恥ずかしい気持ちになる。でも、嬉しくなって踊りに力を入れる。その時、私たちの踊りを見ている中にエルモさんの姿を見つけた。

そういえば、エルモさんはこの曲で歌を歌っていたな。そうだ、エルモさんもこの中に入れてみんなで一緒に歌ったらもっと楽しそう!

私はみんなの輪から抜けて、エルモさんに近寄った。

「エルモさん!」

「えっ、どうしたんですか?」

「エルモさんもこっち!」

「えっ? えっ?」

「この曲で歌えるでしょ? だから歌って欲しいの!」

「えーっ!? み、みんなの前でですか!? 無理ですよー!」

私は嫌がるエルモさんを連れて、みんなのところに戻った。

「そうか! エルモは歌が歌えたな! 一緒に歌うから、歌ってくれ!」

「ぜひ、エルモさんの歌声が聞きたいです!」

「で、ですが……」

「みんなと一緒に歌うから、いいでしょ? ね?」

みんなでエルモさんを囲んで、可愛くおねだりをしてみた。その光景にやられたのか、エルモさんはドキッとした表情になった後苦悶に歪む。

「わ、分かりました……。ちゃんと歌ってくださいよ」

「うん、分かった! 踊りながら歌うから!」

「えーっ、ゴホン」

私たちが踊りを再開すると、エルモさんは勇気を振り絞って歌を歌い出した。とても綺麗な歌声で、聞き惚れてしまうような歌だ。その歌声を聞いて私たちも大人の人たちも感心した。

ハッ、いけない! 私たちも歌わなきゃ。みんなで目配せをすると、エルモさんに続いて歌う。エルモさんみたいに綺麗な歌声じゃないけれど、明るく楽しく歌っていく。

すると、焚火台の周りはより一層賑やかになった。流れる軽快な音楽、それに合わせて紡がれる歌に踊り。収穫祭はこれ以上にない盛り上がりを見せた。

みんなで踊って歌うと本当に楽しい。こんなに楽しいのは、この村に来て初めてだ。今までこんなイベントが無かったから、特段に楽しく思える。

仲のいい友達に見守ってくれる大人たち。私の周りにはいつの間にかいい人たちで溢れている。もう、私は悲劇のヒロインじゃない。ただの村の子供になったんだ。

この幸せをいつまでも大切にしていきたい。そう強く思いながら、みんなで一緒に歌を歌う。どうか、この時間がずっと続きますように。