軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

270.秋の嵐(9)

「凄いわ! 折れたところも、割れたところも直っちゃった! ノアちゃん、ありがとう!」

ミレお姉さんに抱き着かれながらお礼を言われた。あれから、宿屋の壊れたところを修理して回った。そのお陰で壊れたところは綺麗に直ったし、割れた窓も元通りだ。

これで、宿屋に泊まっている冒険者たちは安心して過ごせるだろう。すると、ミレお姉さんが袋を手渡してきた。

「はい、これはお礼よ。受け取って」

「こんなにいいの?」

「もちろんよ。すぐに直ったんですもの、これくらいはしておかないとバチが当たるわ。だから、遠慮なく受け取ってね」

「うん、分かった。ありがとう」

お金の入った重い袋を貰うと、それをマジックバッグの中に入れた。さて、次はどうするかな? そう思っていると、クレハが駆けつけてきた。

「ノア! エルモのお店が派手にやられたみたいなんだ。そっちの修理をお願いできるか?」

「次はエルモさんのお店だね。よし、行こう」

どうやら、エルモさんのお店も大変みたいだ。私たちは宿屋を後にしてエルモさんのお店へと急いだ。

村の中を走って、エルモさんのお店に辿り着いた。周囲には色んな物が転がっているけれど、壁に枝が刺さっているようなことはない。あんまり酷い被害じゃない?

「大変なのは店の中なんだ」

「そうなの?」

そう言ってクレハはお店の扉を開いた。

「エルモー、ノアを連れてきたぞー!」

「ありがとうございます。こっちに来てください」

クレハが声を上げると、お店の奥から声が聞こえてきた。私たちはお店の奥へと移動すると、そこで想像絶する光景を見てしまった。

大きな窓は破壊されていて、広い机と床には沢山のガラス片が散らばっている。それだけじゃなく、本棚が倒れていて床に本が散乱していた。

「うわー、凄いことになっているね」

「これを見た時、言葉が出なかったんだぞ」

「雨戸を付けていたのに、太い枝が飛んできて窓が割れて、そこから突風が吹いてきてこんな風になってしまったんです。大切な錬金術のガラス器具が壊れてしまって……もうどうしたらいいか……」

片づけていたエルモさんは今にも泣きそうな声を出している。仕事道具が壊れてしまったようで、途方にくれているみたいだ。

「こんな状態でも、ノアちゃんは直せるんですか?」

「そうだなぁ……元の形が分かると直せるよ。ここの仕事場の様子が分かれば、なんとかなるかも」

「そ、そうなんですか!? だったら、今絵を描きます。どんな物があって、どんな様子だったのかは覚えてますので」

泣きそうだったエルモさんはパァッと表情を明るくして、紙をペンを取り出して絵を描き始めた。

「じゃあ、その間に私たちは壊れたガラス片を机に集めておこう」

「分かったぞ。目に見えるものは全部拾って机に置くんだぞ」

エルモさんが絵を描いている間に、壊れたものを集めることにした。床に散らばったガラス片を手を切らないように拾っていき、机の上に置いた。

黙々とその作業を続けていくと、床に散らばったガラス片は拾い終わった。目に見えないほど、小さなガラス片は拾えなかったけど、足りない部分は創造魔法で補おう。

「絵ができました。こんな様子なんですが、どうにかなりますか?」

すると、エルモさんが一枚の紙を差し出してきた。その紙を受け取って見ると、色んな形のガラス器具が並んでいる絵になっていた。なるほど、こんな感じのガラス器具か。

「うん、大丈夫だと思う。じゃあ、魔法を使っていくよ」

「お願いします」

「ノア、やったれー!」

机に向かって手をかざす。心を落ち着かせて頭の中で先ほどの絵を思い浮かべる。色んな形のガラス器具を事細かに想像をして、間違いがないようにイメージする。

しっかりとイメージができたら、創造魔法を発動させた。すると、机の上が光った。その光が収束していくと、机の上に形が整ったガラス器具が現れた。

「わっ、わぁっ!?」

「こんな感じで大丈夫?」

「一瞬でこんなことが……これがノアちゃんの物を作る魔法ですか!」

エルモさんは口元を手で押さえながら、目をパチクリして直ったガラス器具を眺めていた。

「まるで、夢みたいな魔法ですね! ノアちゃんの魔法がこんなに凄い物だとは思いませんでした!」

「そうだろう、そうだろう。ノアの魔法はとっても凄いんだぞ!」

「はい! あ~、仕事道具が壊れた時はどうしようかと思いましたが、ノアちゃんのお陰でなんとか仕事ができそうです。本当にありがとうございます!」

「喜んでもらえて嬉しいよ」

エルモさんは大げさに喜んでいて、その隣でクレハが腕を組んで何度も頷いていた。なんでクレハが嬉しそうなんだろう、ちょっと面白い。

「それに、窓も直してもらってありがとうございます」

「絵に書いてあったから、直すことができたんだよ」

「そうなんですね。物作りの魔法がこんなことに活用できるなんて考えつきもしませんでした。流石ですね」

まぁ、実際は違う用途の魔法だけどそれは言わないでおこう。

「そうだ! 魔力回復ポーションの在庫はある? これから、修理で魔法を使わないといけないから、魔力が足りなくなりそうなの」

「在庫はありますよ。でも、無理はしないでくださいね。体が疲れたら、使うのを控えてくださいね」

「うん、無理はしないよ。でも、少しでも早く直してあげたいんだ」

「今、持ってきますね」

エルモさんは部屋を出て行った。しばらく待っていると、ポーションと袋を持って戻ってくる。

「お待たせしました。こちらがポーションと、こちらが今回のお礼のお金です」

「ありがとう。わっ、お礼が多い」

「仕事道具を元に戻してくれましたから、その気持ちが入っています。それに今回のポーションは感謝の気持ちで差し上げます。遠慮なく受け取ってもらえると嬉しいです」

「そんなにしてもらって、なんだか悪いなぁ。でも、色々とありがとう」

お金とポーションを受け取るとマジックバッグに入れる。別れの言葉を言うと、私たちはエルモさんのお店から出てきた。

「それじゃあ、次の所に行くか! その人たちもノアの事を待っているはずだぞ!」

「うん! 助ける人は沢山いるから、早く行こう!」

クレハが駆け出して行くと、私もその後についていく。エルモさんのように困っている人は沢山いるはずだ。早く助けてあげたい、その気持ちが体を動かした。

その後も村の中を駆け回り、被害が出た人のところを訪ねた。家が一部破損していたり、雨戸を閉じていたのに窓が壊れて家の中が大変な事なっていたり、と様々な事が起こっている。

一つずつ壊れたところを直していくと、住人はとても喜んでいた。その度に感謝をされて、とてもくすぐったかった。

クレハと一緒に村を回っていくと、一人で行動していたイリスの話を聞く場面もあった。この嵐で怪我をしてしまった人が大勢いたみたい。

気になって外に出てしまった人、突然窓が割れてガラス片で怪我をした人、割れた窓から物が飛んできて怪我をした人。私が思っていたよりも多くの人が怪我をしたみたいだ。

イリスは一軒ずつ家を回って、住人の怪我を治したみたいだ。イリスも順調にみんなを助けていることを知って、私たちも嬉しくなった。

その日だけでは修理は終わらず、翌日も村を回って壊れた部分の修理を続けた。