軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

221.手作り魔法

みんなで海の中へと潜る。すると、目の前に綺麗な青い世界が広がった。色とりどりの魚、色んな形をした海藻。海の中には面白いものでいっぱいだ。

深く潜って、みんなで海底に足をつく。みんなの頭には私の魔法で作った空気の層ができていて、海の中でも呼吸ができるようになっている。

「水中鬼ごっこするぞ!」

「じゃんけんするよー」

「じゃーんけーん、ポン!」

水中に長く留まれることになって、遊びの幅が広がった。その一つが水中鬼ごっこだ。じゃんけんして鬼を決めると、子供たちは散っていく。海の中で歩いたり、泳いだりして鬼から距離を取る。

「よし、行くぞ!」

鬼のクレハが動き出した。すると、その場で体に力を入れ始める。これは……。

「身体強化だ!」

負けたくないクレハは身体強化を使って体を強化した。それを見ていた子供たちは一斉にブーイングをする。

「魔法使ってる!」

「くそっ、卑怯だぞ!」

「早く遠くに逃げなくちゃ」

「ふふん。捕まえればこっちのもんだ!」

動き出したクレハは物凄いスピードで海の中を泳ぎ出した。海っ子顔負けのそのスピードに子供たちは焦り出す。魚みたいにスイスイ泳ぐクレハは次々と子供たちを捕まえていく。

「あー、もう!」

「クレハめっ!」

「速すぎー!」

「はっはっはっ! すぐにみんなを捕まえるぞ!」

ほうほう、魔法を使ってもいいんだね? クレハがこっちを向き、真っすぐに泳いでくると、手を前に構えた。そして、魔動力を発動させてクレハの身動きを止める。

「お? ノア、魔法を使ったな?」

「クレハも使ってるでしょ?」

「こんな魔法……打ち破ってやる!」

魔動力で止めたクレハの体だったけど、抵抗してきた。魔法の発動を強めて、拘束が解けないようにする。すると、クレハの体が動かなくなった。だけど、それで諦めるクレハじゃない。

「やるな、ノア。だけど、ウチの力はこんなものじゃないぞ!」

クレハは身体強化の魔法を強め、さらに抵抗してきた。拘束する魔動力、拘束を解こうとする身体強化。二つの力は拮抗して、中々勝負がつかない。

「ノア、頑張れー!」

「どっちが勝つんだ?」

「っていうか、鬼ごっこは?」

クレハと私が競うようになると子供たちは見守ったり、他の遊びを始めたりした。結局、その戦いは拮抗したまま終わらない。魔法が切れる時間になって、引き分けで終わってしまった。

水中で思う存分遊んだあとは、みんなで砂浜で座って冷たい飲み物を飲んで一休み。

「今日も海の中綺麗でしたね。毎日見ても飽きないです」

「そうだな。気に入ってくれて嬉しい」

「はい! それにしてもケイオスは水の中で綺麗に泳げるんですね、羨ましいです」

「そ、そうか? ……泳ぎ方教えようか?」

「ぜひ、教えてください」

子供たちと一緒に遊んでいくと、必然と仲が深まっていく。はじめは上手く交流できなかったイリスとケイオスも普通に話せるくらいにまで仲良くなったみたいだ。イリスが楽しそうで良かった。

「全く、クレハは魔法を使うなんてずりーぞ!」

「へへっ、魔法を使ったらダメって言われてないぞー」

「くそっ、今度は素で勝負しろよ。素だったら、絶対に負けないんだからな」

「泳ぎに慣れてきたウチだって、トールになんか負けないぞ」

クレハとトールは相変わらず仲がいい。気の合う子がいて本当に良かった。海でいい思い出が沢山できるといいね。

子供同士の仲のいい光景を見て和んでいると、子供たちが集まってきた。飲み物のおかわりかな?

「ねぇねぇ、ノアは魔法を使えるんだよね」

「うん、そうだけど」

「違う魔法とかないの? どんな魔法が使えるのか知りたいの」

おっと、魔法に興味を持った子が来た。この村には魔法を使える人がいるらしく、魔法は馴染みのある力になっているみたいだ。だから、魔法を見せても怖がる子はいなかった。

だったら、この時のために新しく作っておいたもう一つの魔法をお披露目しよう。

「新しい魔法もあるよ」

「本当!?」

「ねー、みんな来てー! ノアが新しい魔法を見せてくれるって!」

子供が声を上げると、周りで座っていた子供たちが集まってきた。すると、クレハとイリスが話しかけてくる。

「なんだ、ノアはまだ新しい魔法を作っていたのか? ノアばっかり、新しい力はズルいんだぞ」

「もう一つ新しい魔法を作っていたんですか? 凄いですね」

「まぁ、今使っている魔法を応用して作った物だから難しくはないんだよね。まぁ、見てて」

私は立ち上がって、海の方に近づいていく。海の前で立ち止まると、自分の体に新しい魔法をかけた。そして、そのまま海に足を伸ばすと――足は海に沈まずに水面に立った。

ピチャピチャと音を立てて、私は水面を歩いて見せた。後ろを振り返り子供たちの様子を見てみると、こちらを見てみんな驚いていた。

「どう? 水面を歩ける魔法だよ」

水面を蹴って立っていることをアピールすると、子供たちから歓声が上がった。

「すげー! どうなっているんだ、それ!」

「わー、水面を歩けるなんて夢みたい!」

「なー! 魔法をかけてくれよ!」

波打ち際まで近寄ると子供たちははしゃいだ。水面を歩く、それをしたかったっと顔に書いているみたいだ。

「じゃあ、魔法をかけるよ」

私は手を前に構えて波打ち際に並んだ子供たちに魔法を順々にかけた。全員に魔法をかけ終わると、声をかける。

「はい、もう水面に立てるよ」

すると、子供たちは恐る恐る海に入ってくる。そして、打ち寄せる波に足を置くと、体が浮く。その感覚に驚きながらも足を進めていくと、水面に足を乗せた瞬間、子供たちの表情が変わった。

「立ってる、水面に立ってるよ!」

「すげー! どうなってるんだ!?」

「わー、わー! すごい、なにこれ、すごいー!」

水面に立ったことを自覚すると、子供たちははしゃいだ。慎重に歩いたり、飛び跳ねたり、走り回ったり……色んなやりかたで水面に立っていることを堪能した。

「ノア! 今回の魔法も凄いな! 水面に立てるなんて思わなかったぞ!」

「こんな魔法を作れるなんて凄いですね!」

「楽しんでもらえて良かったよ。こんなこともできるんだよ」

私は誰もいないところに向かって走り出した。そして、前方に飛び込むと、私は水面の上を滑ってみせた。水面にスライディングをすると水しぶきが上がってとても綺麗。それを見た子供たちはさらにヒートアップした。

「あれ、面白そうだな!」

「滑ってみようよ!」

「よーし、行くぞ!」

子供たちは海に向かって走り出し、思い思いの恰好をして水面を滑り出した。海の水面ではあちこちから色んな水しぶきが上がる。普段とは違う水遊びに、子供たちはすぐに夢中になった。

「行くぞ、トール!」

「おう、クレハ!」

クレハとトールが全速力で走りと、思いっきりスライディングをした。すると、とても高い水しぶきが上がる。

「あははっ、凄いの上がったな!」

「めちゃくちゃ、高かったぞ! もう一回やろう!」

「おう!」

二人はしぶきの高さを競うように水面を滑り出した。やっていることが男の子なんだけど、二人なら合うな。

「一緒に滑りましょう!」

「お、おいっ」

こっちではイリスがケイオスの手を引っ張って走っている。丁度いいところで飛ぶと、水面の上を滑り出す。手の引っ張られたケイオスは体勢を崩しながら水面を滑っていった。

「あっ、ごめんなさい。その体勢は辛かったですよね」

「い、いや……大丈夫だ。滑ってどこか痛くなかったか?」

「はい、全然平気です。楽しかったので、もう一回滑りましょう」

楽しそうにするイリスと心配そうにするケイオス、対照的な二人で見ていてニヤニヤする。仲良くなって二人の距離がグッと縮まったけど、その分ケイオスも戸惑うこともあるみたいだ。

いやー、イリスも気づいていないけど、肝心のケイオスも自分の気持ちに気づいてなさそうなんだよね。一緒にいたいんだけど、変に緊張してしまって、上手く交流を持てない時もあるし。

そんな二人がまた走る。イリスは楽しそうにしているけれど、ケイオスはイリスを心配しているみたい。それでも楽しい気持ちには勝てなかったのか、二人で仲良く水面の上を滑っていった。

仲が深まって良かったのか、それとも悪かったのか……いいや、悪いことなんてないよね。普通の友情を育んでいくのか、淡い思いを育んでいくのか……夏は長くて短いからなぁ。

「ノア、何やってんだよ! 滑らないのか!?」

「楽しいよ、一緒にやろう!」

おっと、ボーッと見ていたら子供たちに両脇から腕を掴まれてしまった。

「それじゃあ、行こう!」

三人で固まって走ると、思いっきり水面に飛び込んだ。そして、高い水しぶきを上げながら水面を滑っていく。考えることは止めて、私もみんなと一緒に楽しもう!