軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

211.海水浴(6)

暑い日差しの中、私たちはボール遊びに夢中になっていた。

「うりゃぁっ!」

高く飛んだボールをクレハがアタックする。凄い速さで飛んでいったボールは村の子供がレシーブをして受け止めた。

「そっち行ったぞー」

「よし、来い!」

受けたボールはポーンと高く飛んで、トールの所まで行った。そのトールはボールを軽くトスする。行先はクレハで――。

「おりゃぁっ!」

クレハがまたアタックをした。向かうのはイリスのところ。

「きゃっ!」

イリスはなんとか拾おうとするが、ボールはイリスの足元に豪快に落ちた。

「イェーイ、やったぞトール!」

「やったな、クレハ!」

クレハとトールはお互いにハイタッチをして喜びを分かち合った。

「二人で組んでズリーぞ!」

「あんなの止められないわよ!」

「へへん、別にズルくないもんな。だろ、トール?」

「そうそう、ただ隣にいるだけだもんな。クレハ!」

他の子供たちのブーイングを受けても二人は平然としていた。それどころか、得意げになって肩まで組んでいる。二人は似た者同士なのか、運動センスがずば抜けていい。そのせいで二人に良いように翻弄されていた。

「もう、クレハたちは調子に乗ってますね」

「そうだね。あのアタックは誰も防げないよ」

「私もそんなに運動が苦手な訳じゃないんですけど……なんだか悔しいです!」

二人の猛攻を止められなかったイリスがプンプンと怒っている。普段は穏やかだけど、何かのスイッチが入っちゃうと好戦的になるよね。

その隣では話す機会を窺っているケイオスがいて、もどかしい気持ちだ。私が会話に誘導したほうが……いやいや、ここは自然に任せたほうがいいかも。うーん、悩ましい。

「それにしても、喉が乾いたよな」

「そうだな、ずっと遊んでたから喉がカラカラだぞ」

「だったら、水貰ってこようよ。私も喉が渇いたわ」

「そうだねー、ちょっと休憩にしようか」

私が悩んでいると、みんな暑そうに手で扇いでいた。飲み物が欲しいと……これはあれを使うっきゃないね。

「みんな、待って。私が良いものを持っているから、みんなにも分けてあげるよ」

「いいものって何?」

「水でも持っているの?」

「ううん、もっと良いもの持っているよ」

私は置いておいたリュックに近づき、中から先ほど作ったレモンシロップを取り出す。そして、いつか使うであろうと思って創造魔法で作っておいた炭酸入りのペットボトルを何本も取り出す。

「この瓶に入っているのって……レモン?」

「すっぱいじゃん」

「これは甘くなっているから美味しいと思うよ」

「レモンが甘い?」

「いつものレモンじゃないのか?」

「そうそう、特別製だよ」

リュックの中からコップを取り出すと、コップの中にレモンシロップを垂らす。次に炭酸のペットボトルの蓋を開けると、プシュッと音がした。それに、子供たちはビックリ。

「うわ、なんか音がしたぞ!」

「見て、なんか泡が沢山出てきたよ」

「なんだこれ、面白いな」

「この水をシロップの入ったコップに注いで……」

コップに炭酸が注がれると、シロップと炭酸が混じり合う。そして、コップの表面では炭酸がはじけ飛んでいる。そのコップを冷却の魔法で冷やしてあげると――。

「はい、レモンスカッシュの完成だよ」

甘酸っぱい飲み物の完成だ。コップを子供たちの前に弾ける炭酸を見て、目を輝かせている。

「すげー、こんなの初めて見た」

「これ、水が生きているのか?」

「泡が凄いわね」

「飲んだらどうなっちゃうんだ」

「初めに飲む子は誰にする?」

レモンスカッシュを進めてみると、みんなで顔を見合わせて戸惑っている様子だ。初めてのものに物怖じしているみたい。しばらく無言が続くと、クレハが手を上げた。

「ノアが作っているものならいつも食べたり飲んだりしているから、ウチなら大丈夫だ」

「本当に大丈夫か? あんなに泡が出ているんだぞ」

「そうよ。飲んでお腹の中が泡だらけになったらどうするの?」

未知のものに子供たちは警戒をしている。戸惑う子供たちの言葉を聞いてクレハがたじろぐ。だけど、それも一瞬のこと。すぐに凛々しい顔に変わると、レモンスカッシュが入ったコップを受け取った。

「ウチは飲む! 見てろよ!」

腰に手を当てると、クレハはコップを口につけて飲み始めた。ごくん、と喉が動くのを子供たちはジッと見ている。

「うわぁ、なんだこれ! 口の中とか喉とかおかしいぞ!」

「ど、どんな感じですか?」

「なんか弾けている感じだ! こんなの飲んだことがないぞ!」

炭酸の弾ける感覚にクレハは地団駄を踏んだ。そんなクレハを見ていた子供たちは次々に言葉をかける。

「弾けるって、お腹の中でもか?」

「お腹の中は……良く分からないな」

「そうだ、味はどうだ?」

「甘くて、でも酸っぱくて……味は美味しいんだぞ!」

「お腹は大丈夫? 泡がいっぱいになってない?」

「お腹は全然平気だぞ」

子供たちの質問にクレハは気づいたことを正直に言った。まだ、みんな警戒しているみたいだ。

「ほら、クレハ。もっと飲んでみて」

「おう!」

飲むように促すと、クレハはレモンスカッシュをゴクゴクと飲み始めた。その様子を固唾を呑んで見守る子供たち。そして、コップの中身を全て飲み終えた。

「めちゃくちゃシュワシュワしたんだぞ! なんか新しい飲み物って感じだ! ……ゲフッ」

レモンスカッシュを飲み終えたクレハはゲップをした。

「で、どうなんだ? 美味しいのか?」

「うん、美味い! 甘くてでも酸っぱくて、それに冷たい。なんか爽やかな感じがするぞ!」

「へー、そうなんだ。自分も飲んでみようかな」

「私も飲んでみたいわ」

クレハが飲み干したことによって、子供たちの警戒が薄れたらしい。次々に飲みたいと言い出した。でも、コップは三つしかないから順番に飲むしかないね。

「じゃあ、作るからどんどん飲んでね」

私はコップにシロップを入れた後に炭酸を入れた。冷却の魔法で冷たくすると、出来立てのレモンスカッシュを飲みたい子に配る。コップを受け取った子供たちは恐る恐ると言った感じでコップに口を付けて、飲む。

「うわっ、本当にシュワシュワする!」

「甘くて、でも酸っぱい! どうしてこんなに甘いの!?」

「飲んだ瞬間、口の中で弾けますね。面白いです」

子供たちは驚きながらも、レモンスカッシュを楽しそうに飲んでいる。イリスがちびちびとレモンスカッシュを飲んでいると、視線が隣にいるケイオスに向いた。

「ケイオスも飲んでみますか? 面白くて、美味しいですよ」

「えぇっ!?」

その展開はちょっと早すぎじゃないですかね? 純粋な子供同士だったら、あり得るかもしれないけれど……。意識しちゃっているケイオスには驚きの展開じゃないかな?

差し出されたコップを見て、顔が赤くなるケイオス。意識しちゃっている相手から渡された物なので、どうすればいいのか迷っているみたいだ。複雑な表情をした後、コップに手を伸ばし――。

「……いい! それはイリスのだろ?」

「そうですけど……」

「俺は後で貰うから、気にするな!」

「うーん、それもそうですね。一緒に飲んで、私の気持ちを知ってもらいたかったんですが」

「そ、そんなの後でもできるだろ」

なるほど、なるほど……そうきますか。いやー、良く断ったね。流されると思ったんだけど、男の子の意地みたいなものが発動した感じかな? イリスも警戒なく良く言えるよなー……まぁそんな必要は全くないんだけどね。

「ゲフッ! これを飲むと、ゲップが出る!」

「ほんと……ゲフッ!」

「私も出……ゲフッ。ちょっと、恥ずかしいですね」

レモンスカッシュを飲んだ子供たちは次々にゲップをした。ちょっと恥ずかしそうに笑い合いながら、ゲップをするのも楽しんでいるみたいだ。

「次は俺も貰おう」

「僕にも頂戴!」

「私にもくれ」

「はいはい、順番だよー!」

空になったコップを受け取り、冷たいレモンスカッシュを作っていく。未知の飲み物に賑わった子供たちの声が響き渡る。夏の暑い時間、飲み物一つでとても楽しい時間を過ごすことができた。