軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

208.海水浴(3)

二人とも泳ぐという言葉にピンと来てないみたいだった。そしたら、実際に見てもらった方がいいかもね。

「じゃあ、私が泳いで見せるから見てて」

胸元まで浸かる場所に移動をすると、足を浮かびあ上がらせてバタ足をした。水面を足で蹴り、水面を腕でかき分けていく。そうすると体が前に進んでいく。

少しの間、泳いでみせると二人に近寄った。

「これが泳ぐってことだよ」

「へー、なるほどな! 水でこんなことができるのか!」

「なんだか、難しそうですね。できるでしょうか?」

「そんなに難しいことじゃないから、慣れたらすぐに泳げるようになるよ」

「じゃあ、早速泳ぐのか?」

「まずは水に慣れないとね。水の中に顔を浸けてみよう」

二人を並ばせて指示を出す。すると、そんなことでいいのか? と不思議そうな顔をした後、ゆっくりと顔を水面につけた。イリスは静かに水面に顔をつけているが、クレハの方はボコボコと沢山の空気が浮かんできている。

「ぷはぁっ! はぁはぁ、めっちゃ苦しいぞ!」

「あ、ごめん。息を止めて、水面に顔をつけないと。ほら、イリスのように」

ガバッと苦しそうにクレハが顔を上げてきた。たしかに、呼吸ができない状態で息をしようとすると苦しいよね。ちゃんと、息を止めることを伝えるべきだった。

イリスは静かに水面に顔をつけてプルプルと震え出すと、勢いよく顔を上げた。

「はぁはぁ、こんな感じですか?」

「うん、イリスはバッチリ。クレハはもう一度やってみて」

「おう! 今度は息を止めてだな!」

クレハはまた水面に顔をつけた。今度は空気が漏れてボコボコしている様子はない。しばらくすると、クレハが水面から顔を話した。

「どうだ、こんなもんか?」

「うんうん、いいよ。じゃあ、次は浮いてみようか。こんな風に体から力を抜いて」

私は仰向けになって水面に体を浮かび上がらせた。プカプカと浮いて見せると、足を元に戻す。

「こんな風に浮くこともできるんだよ」

「なんだか気持ちよさそうですね」

「こんなの簡単だな!」

「じゃあ、やってみて」

二人に浮くように指示をすると、二人は海底から足を離して水面に浮かぶ。イリスは体の力を上手に抜いているので、水面にプカプカと浮いている。だけど、クレハは余計な力が入っているので水面でジタバタと動き続けていた。

「うわっ、なんだこれ! 全然、浮かばないぞ!」

「体から力を抜かないと。ほら、イリスを見習って」

「こんな風ですよー」

「そんなこと言ったって、うわわっ!」

クレハは水面でジタバタと暴れているため、中々浮かび上がらない。うーん、どうにかして体に入った力を抜けさせる方法はないか。……そうだ、あの方法ならできるかも。

「イリス、ちょっと来て」

「はい、なんですか?」

「耳貸して」

ある方法をイリスに伝えると、親指を立てて強く頷いてくれた。

「うわわっ、浮かべないぞ!」

まだ水面でジタバタと暴れているクレハに私たちは近づいた。そして、クレハの頭に手を重ねると、耳も含めて優しく撫でて上げる。

「よしよし、これで力が抜けるかな?」

「はいはい、クレハはいい子ですねー」

「ちょ、お前ら! 何をっ……ふにゃぁ」

クレハの頭を耳ごと撫でると気持ちよくなるらしく、蕩けたような顔になる。

「ふっふっふっ、ここがいいのかな?」

「それともここですかねー」

「撫でるのやめろー……」

「えー、止めて欲しいの?」

「そういうことをいう子には……こうです!」

「あう~……」

わしゃわしゃと頭を撫でていくと、クレハの声色が変わっていく。すると、どんどん体から力が抜けていき、その体は浮き上がった。

「やったね、成功だ」

「やりましたね」

無事にクレハの体が浮かび上がったことで、私たちの任務は終わった。ハイタッチをして喜びを分かち合っていると、クレハが立ち上がる。

「水に浮くことができたじゃない」

「良かったですね」

「うっ……うん」

でも、クレハはちょっと納得がいっていないような顔をする。そして、恥ずかしそうに沈んでいき、水面に口をつけてブクブクと泡を出す。これはきっと照れているんだ。

「頭を撫でられたくらいで……いつものクレハはどうしたの?」

「そうですよ、頭を撫でたくらいで」

「それがウチにとっては大きなことなんだよ!」

いつもとは違う自分を見られて恥ずかしかったのか、クレハはそっぽを向いた。

「そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに。顔、可愛かったよ」

「あう~っていう声も可愛かったですね」

「くっ……おまえらー!」

「うわっ、怒った!」

「逃げましょう!」

「待てー!」

二人でクレハをからかっていると、我慢しきれなくなったクレハが詰め寄ってきた。私たちはそんなクレハを見て水をかき分けて逃げていく。だけど、その後ろをクレハが執拗に追いかけてきた。

じゃれ合いの後、泳ぎの練習を続けた。私が二人の手を持って、二人がバタ足をする練習だ。

「そうそう、いいよ。太ももから意識して足を動かしてね」

二人ともコツを掴むのが早いからか、上手にバタ足ができていた。私が手を引くと、二人はバタ足の力で前に進んでいく。

「息継ぎの練習もしようか。水面に顔をつけて進んで、ある程度進んだら顔を上げて呼吸だよ」

そういうと二人は上げていた顔を水面につけた。そして、そのまま進むと顔を上げて呼吸をする。

「タイミングが難しいぞ」

「苦しくなる前に顔を上げる感じだよ」

「苦しくなる前ですね」

そうやって呼吸の仕方も教えていくと、良い感じにバタ足も呼吸もできるようになってきた。これなら、新しく作った魔法を使うまでもないかな?

しばらく、浅いところでバタ足と呼吸の練習をした。

「うん、上出来! もう、一人で泳いでも大丈夫かも」

「本当か!?」

「でも、まだ不安です」

「なら、いいものがあるよ」

私は二人を置いて、休憩所までやってきた。シートの上に置いておいたリュックの中を漁り、中からこの世界にはないものを取り出す。この時のために創造魔法で出しておいた前世のもの、ビニール製の浮き輪だ。

吹き出し口から息を吹き込むと、浮き輪はゆっくりと膨らんでいく。一生懸命息を吹き込んでいくと、浮き輪は膨らんだ。吹き込み口を閉めれば、パンパンに膨れ上がった浮き輪の完成だ。

もう一つの浮き輪を膨らませると、それを持って二人に近づいた。

「おまたせ、これを使ってもらってもいい?」

「これはなんですか?」

「これはね浮き輪って言って、浮力をつけてくれるものなんだよ」

「これを使えば浮くってことか?」

二人は物珍しそうに浮き輪を見たり、触ったりしている。初めて触る感触に驚いているが、嫌がったりはしていない。

「使い方を教えるね。水面に浮かばせて、体を乗せて、そのままバタ足もできるし。この輪っかの中に体を入れて、そのままバタ足で進むことができるよ」

実際に使って見せて、浮き輪を二人に渡した。手に持った浮き輪の感触を楽しみながら、二人は早速使ってみることになった。イリスは浮き輪の上に上半身を乗せて、クレハは体に浮き輪をくぐらせた。

「わっ、本当に浮きますね」

「面白いなこれ。簡単に浮くぞ」

「無理なく浮かぶことができるから、バタ足で進むことができると思うよ」

「クレハ、やってみましょう」

「おう!」

二人は海の浮かぶと浮き輪の力を借りてバタ足をしてみた。すると、体は前へと進み、しっかりと泳げている。

「わぁ、進みますね。これは楽しいです」

「これはいいな! とっても泳ぎやすいぞ」

二人は浮き輪を使って楽しそうに泳ぎ始めた。あれだけ泳げるようになったなら、大丈夫かな? 私は海から上がるとシートの上に腰かけた。

青空の下、青い海でカラフルな浮き輪をつけて二人は楽しそうに泳いでいる。海にきて正解だったな、そう思いながら二人を見守っていた。

そして、照りつける太陽。今はパラソルの下にいて大丈夫だけど、空気が暑くなっている。こうなってくると、冷たい飲み物が欲しくなる。普通ならリュックからコップを取り出し、魔法で水と氷を出せば事足りる。

だけど、折角なら特別なものが飲みたい。何か作れる物はないかな? そういえば、料理にレモンが必ず出ていたな、ということはここにはレモンが生っていることになる。

そのレモンを使ってレモネードが作れるかも。いや、どうせなら炭酸の体験もさせたい。よし、作ろう。レモンスカッシュ!