軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

199.海に行こう!(4)

空の散歩を楽しんだ後は街道に下りて、道を進んでいった。旅路は順調で特にトラブルもなく進んでいる。そして、日が暮れだすと辺りは赤く染まっていった。

暗くなる前にどこかで止まったほうがいい。辺りを見渡しながら進んでいくと、道を外れたところに大きな岩があることに気づいた。よし、あそこの陰で一泊することにしよう。

車を街道から見えない位置に止めると、今日の移動は終了した。扉を開けて外に出ると、みんなで大きな背伸びをする。

「んー! 移動はここで終わりかー」

「こんなに黙って座っていたのは久しぶりです。なんだか体が鈍りそうですね」

「ずっと同じ姿勢だったからね。病気にならないようにちゃんと動かしてね」

三人で体を動かしてコリを解す。そうこうしている間に日は落ち、辺りがあっという間に暗くなる。私は光の魔法で光の球を出して、辺りを照らした。

「じゃあ、夕食にするね」

「これから作るんですか?」

「ううん、もう作ってあるんだ」

「すぐ食べられるのか?」

こんな時のためにリュックの中には調理済みの料理がある。しかも、この時のために創造魔法を使って出した新食材を使っている。

「でも、動いていないからそんなにお腹が空いてませんね」

「うーん、そうだなぁ。いつもみたいに、食べたい! って、思わないな」

「ふっふっふっ、そんなことを言っていられるのも今の内だよ。食べたらきっと、沢山食べたくなるから」

二人はいつも魔物討伐をしているから、体を沢山動かしている。そのせいでお腹が減るのだが、今日はあんまり動いていないからお腹が減らない。そんなことだろうと思って、私はあの料理を作っていた。

リュックの中から熱々の鍋を二つ取り出す。すると、すぐにその匂いが漂っていく。

「くんくん、なんだか辛そうな匂いがするぞ」

「この匂いはなんでしょう。初めて嗅ぐ匂いです」

「この鍋に入っている料理だよ」

そう言って、二人に鍋の中を見せた。熱い湯気が立ち上るその中には茶色いドロッとした液体がある。

「なんだこれ……スープか?」

「こんな風にドロッてしているものだよ」

「スープみたいでスープじゃなさそうですね」

「これはね、カレーっていう料理だよ」

「「カレー?」」

二人は不思議そうに首を傾げた。

「野菜とお肉を色んなスパイスを入れて煮込んだ料理。ちょっと辛いけれど、食欲をそそると思うんだよね」

「そういえば、初めて嗅ぐ匂いなのに食べる気が大きくなってきたような」

「私もです。匂いを嗅いでいるだけなのに、お腹が減ってくるような感じがします」

「色んなスパイスが刺激になっているんだね。そして、そのカレーに合わせて食べるのが……これ、お米だよ」

もう一つの鍋の蓋を開けて中を見せると、そこにはふっくらと炊きあがったお米があった。

「くんくん、これもいい匂いがするなー」

「素朴な感じですね、私好きです」

「これ、初めて見るよな!」

「うん、創造魔法で出したんだー。ご飯っていうものだよ。中々作れない作物でできているんだよ」

創造魔法でお米を出して、それを種にして生産することができるだろう。でも、精米が難しいんだよね。精米機を創造魔法で作ることも考えたんだけど、自分の想像の力でそれができるのか不安でまだやってない。

だから、このお米は創造魔法で出したものだ。一度に出せる量は多くないけれど、私はとうとうお米を手に入れた。そして、こうして初めて食べる機会も得ることができたんだ。

リュックの中からシートを出して地面に広げる。それから皿を出して、そこにご飯とカレーを盛った。それにこの時のために作っておいた、醤油味の福神漬けを添えると……。

「はい、これが新しい料理……カレーライスだよ」

二人の目の前に完成したカレーライスを差し出した。

「ご飯にカレーに、これはなんだ?」

「福神漬けって言って甘い漬物だよ。カレーは辛いから、口の中が辛くなったら食べる用だね」

「へー、珍しい盛り付け方ですね。どうやって食べるんですか?」

「スプーンにご飯とカレーの両方をすくって、いっぺんに食べるんだよ」

ふーん、と話を聞いていた二人。だけど、イリスがハッとした表情で勢いよくこちらを向いた。

「そういえば、パンがありません!」

「そうそう。ご飯がパンの代わりなんだよ」

「ご飯がパンの代わり……見た目が全然違いますね」

「味は同じなのか?」

「味も食感も違うよー。まぁ、食べてみようよ」

三人分のカレーを盛ってシートの上に移動する。あとはスプーンとコップを出してたっぷりの水を中に入れておく。これでカレーライスを食べる準備が調った。

「「「いただきます」」」

皿を手に持って挨拶をした。久しぶりのカレー、久しぶりのご飯だ! ワクワクしながらスプーンを持つと、ご飯をすくいカレーをすくう。カレー独特のスパイシーな匂いとご飯の柔らかく甘い匂いを嗅ぎながらパクリと一口食べる。

口の中でご飯の甘味を感じたあと、すぐにカレーのスパイシーな味が広がった。あぁ、懐かしいご飯の甘味。懐かしいカレーのスパイシーな味。この二つの味に体が喜びで震えている。

「うん、美味しい」

満面の笑みでいうと、私の様子を窺っていた二人がカレーライスを眺めた。

「ノアがそんなに笑顔になるのは珍しいな。そんなに美味しい食べ物なのか」

「匂いから味が想像できませんが、ノアを笑顔にするほどの力があるんですね」

「えっ、私のこと見てたの? 恥ずかしい……ニヤニヤしてたかも」

「食べる前からニヤニヤしてたぞ。珍しかったな」

「はい、とても幸せそうな感じでした」

私を見る二人をの顔もニヤニヤしている。うぅ、恥ずかしいところを見られてしまった。

「ほら、私のことはいいから食べてみて!」

「ふふっ、じゃあ食べますね」

「どんな味なんだろうなぁ」

ニコニコしながら二人はカレーライスを一口食べた。すると、二人はビックリした顔になる。

「ん、初めての味だ! 辛い、だけどご飯が甘い!」

「ご飯はパンみたいに甘いところがあるんですね。カレーは辛いですけど、嫌な辛さじゃないです」

「美味しいでしょ? どんどん食べて」

「この組み合わせ、最高なんだぞ!どんどん食べれる!」

「カレーは辛いですけど、ほのかに甘いご飯と食べるのが合います」

一口食べた二人はどんどんカレーライスを食べ進める。うんうん、カレーの味にはまってくれたみたいだ。私もスプーンでご飯とカレーをすくって食べ進める。

ご飯の甘味、カレーの辛味が丁度いい塩梅に合わさって美味しさに変わる。その中には甘味の強いにんじん、ジューシーな肉が入っていて、玉ねぎはトロトロになっていて、ホクホクしたじゃがいもが入っている。

食べているのに足りなく感じでまた食べる。そうやって手が止まることがなく、夢中になれるのが素敵だ。

「辛ーーっ!」

「食べ続けると辛いですー」

「そういう時は水を飲んだり、福神漬けを食べたりしたらいいよ」

結構食べ進めた二人の口の中に辛さが溜まったみたいだ。なので、水と福神漬けを勧めてみると、水をがぶ飲みして福神漬けを食べた。

「この福神漬け、甘いですね。辛いのがなくなっていくようです」

「いい休憩になるぞー」

二人は幸せそうに福神漬けを堪能している。私も福神漬けを食べると、甘味が口に広がって辛さを緩和してくれる。作ってよかった福神漬け、あって良かった福神漬け。

「よし、まだまだ食うぞ!」

「夢中になって食べれますね」

「でしょ? おかわりもあるからどんどん食べて」

「おう、絶対におかわりするぞ!」

「私もおかわりしたいです」

「二人とも? ふふっ、私もおかわりしよう」

三人で夢中になって食べるカレーライスは特別美味しかった。カレーとご飯は綺麗に空になり、お腹いっぱいになった私たちは大の字になって星空を眺めながらカレーライスの余韻を楽しんだ。