軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

197.海に行こう!(2)

暑い日差しが窓から差してきた。そろそろ、起きる時間……。

「朝ーっ!!」

「「っ!?」」

突然のクレハの大声に私たちは勢いよく起き上がった。寝ぼけ眼で隣を見てみると、ベッドの上で仁王立ちしているクレハが見える。

「朝、朝だ、朝が来たー! 二人とも、そんな顔をしてないで早く着替えるぞ!」

とう! と、ベッドから飛び降りたクレハが靴を履くとクローゼットに駆け寄っていった。

「び、ビックリしました……もう朝から脅かさないでください」

「私もビックリした。いきなり大声を出すんだもん」

「二人ともー、遅いぞ! 早く着替えろよ!」

「クレハのせいでビックリしていたんです。もう少し静かに寝ていてください」

「いつもは最後に起きるのにね」

のそのそとイリスと一緒にベッドから出ると、靴を履いてクローゼットに近づく。すると、クレハは急いで着替えろと言わんばかりに服を手渡してきた。

私たちはそれを受け取ると、さっさと着替えた。すると、クレハが背中を押してくる。

「さぁ、早く行こう! まずは食事を取って、そのあとモモたちを預けに行くんだよな」

「う、うん。わわっ、そんなに押さないで」

「クレハは少しは落ち着いてください」

「だってー、早く行きたいんだよ」

クレハに急かされながら、私たちは宿屋へと向かっていった。

食堂につくとすぐにミレお姉さんがやってきて、朝食を出してきてくれた。すると、クレハが凄い勢いで食べ始める。

「はぐっ! んんっ、はぐっ!」

「そんなに急がなくてもいいよー」

「ゆっくり食べましょうよ」

「二人とも遅いぞ! 早くっうぐっ!」

「ほら、そんなに一度に詰めるから」

「はい、水です」

食べながら喋ったせいか、食べ物を喉に詰まらせたクレハ。私は背中を叩いてやり、イリスが水を差し出した。慌てて水を飲み干すと、脱力したように息を吐く。

「はー……ビックリしたんだぞ」

「こっちがビックリしたよ」

「朝から何度もビックリさせないでください」

「だってよー……なんで二人はそんなに落ち着いてられるんだ? とうとう行くんだぞ、海へ!」

目をキラキラと輝かせて嬉しそうにするクレハ。気持ちは分かるけれど、まだやることが残っているからそこまでは感情が高ぶらない。

すると、話を聞いていた冒険者が話しかけてきた。

「とうとう、今日出発するんだってな。しばらく会えなくなるのが寂しいぜ」

「色んな思い出を作れるといいな」

「帰ってきたら土産話とか期待しているからな」

みんな温かい言葉をかけてくれる。また、戻ってくるから湿った言葉は合わないよね。

「おう! いっぱい、楽しい話を持って帰ってくるな!」

「素敵な思い出作ってきます」

「無事に戻ってくるから、楽しみに待っててー」

こっちから言葉をかけると冒険者たちは嬉しそうな顔をして頷いた。と、そこに一仕事終えたミレお姉さんが加わってくる。

「ふふ、しばらくいなくなっちゃうから寂しいわ。けど、この雰囲気だと楽しみが増えてきたわ」

「お土産、期待しててよね」

「無理しなくても良いわよ、お話だけで十分だわ。そんなことより、気を付けていってくるのよ。悪い人にはついていかないように」

「うん、気を付けていく」

ミレお姉さんはちょっぴり寂しそうな顔をすると、私たちの頭を順番に撫でた。その温かさにちょっとだけ胸が温かくなると、残りの食事を綺麗に食べた。

「よし。それじゃあ、行ってきます」

「行ってきますね」

「じゃーなー!」

「おう、いってらっしゃい!」

「気を付けていくのよー!」

食堂にいたみんなに見送られながら私たちは食堂を後にした。

家に帰った私たちはモモと鶏たちを連れて作物所へとやってきた。

「おう、来たか!」

そこには私たちを待っていたコルクさんがいた。みんなをお願いするために、頭を下げる。

「コルクさん、この子たちの事よろしくお願いします」

「任せておけ。事前に貰った餌を与えて、しっかりとお世話をするな」

「じゃあな、モモ。行ってくる」

「ココ、ルル、テテ、行ってきますね」

しばらくのお別れだ。みんなを一度抱きしめると、コルクさんに手渡した。

「モー」

「コッコッコッ」

「なんだかちょっぴり寂しいですね」

「あぁ、そうだな」

「いつも一緒にいたからね」

しばらくのお別れはやっぱり寂しい。三人でちょっとだけしんみりとする。

「こいつらのことは任せて、海を目一杯楽しんでこい。そうじゃないと、こいつらを預けてまで行ったかいがなくなっちまうだろう?」

「うん、そうだね。折角預けてまで行くんだから、楽しまないと損だよね。よし、寂しがるのはもうやめよう」

「ノアのいう通りだな、楽しく行こうぜ!」

「はい!」

モモたちのことはコルクさんに任せれば大丈夫だ。私たちは私たちで楽しんでこればいい。心を入れ替えた私たちはコルクさんにモモたちを任せて、その場を後にした。

「気を付けていって来いよ!」

「いってきまーす!」

手を振るコルクさんに向けて私たちは手を振った。さぁ、準備が終わったら出発だ。

家に帰ってきた私たちは必要なものをリュックに詰め始めた。

「パジャマって持ってったほうがいいのか?」

「持っていきましょう。話によると宿屋はあるみたいなので、そこのベッドで寝ることになりますから」

「宿屋があって良かったね。もしなかったら野宿になっていたから」

「野宿も楽しいんだぞ!」

「柔らかいベッドの上のほうがいいです」

三人でワイワイお話しながらする準備は何気に楽しい。いる物、いらない物を選別しながら荷物をリュックに詰めていった。

事前に用意しておいた道具や食糧はリュックの中に入れてあるから、後は細々としたものを入れるだけだ。家を見渡して、他に入れるものがないか考える。

すると、棚に目がいった。そうだ、食器やコップも入れておかないといざという時に使えない。棚に近寄って食器やコップを持つと、リュックの中に入れておく。

「それも必要なんですね」

「うん。最低でも一回は野宿する予定だから、食器類がないと困ると思って」

「使い慣れた食器があるのは嬉しいぞ。外にいるのに、家にいるような感じがする」

必要なものを好きなだけ詰める、マジックバッグのおかげで荷物の重さを考えなくて済むからとても楽だ。だから、ついつい色んなものを詰め込んじゃう。

「一応剣も持っていかないとな。魔物が出てきたら大変だから」

「私も杖と盾を持っていきます。これでノアを守りますよ」

「二人ともありがとう。私も戦えるようにならないとなぁ」

「海に魔物がいれば、戦う練習もできるぞ! そこでノアを鍛えることもできる」

「いざという時のためにも、少しは戦えるようになったらいいと思います」

「そうだね、機会があったら二人に協力してもらおうかな。っと、荷物は終わりでいい?」

もう必要な荷物はない。二人に確認すると、頷いてくれた。

「準備完了。じゃあ、車に行こうか」

三人で家の外に出ると、まず扉につけておいた創造魔法で出しておいた番号式の鍵をセットする。窓もしっかり鍵をかけたし、これで留守は大丈夫だと思う。

それから車に移動をすると、中に入ってシートベルトをする。とうとう、出発の時だ。

「じゃあ、行くよ」

魔動力を発動して車体を浮かせる。十分に浮かせると、今度は前に進ませて移動させた。

「おっ、動いたぞ」

「とうとう行くんですね。楽しみです」

車が動き出すと、ワクワクが溢れだしてきた。

「海に向けて、出発!」

「おー!」

「はい!」

私たちは元気よく声を上げると、車はスピードを出して動き始めた。