軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

178.春の素材採取(3)

森の奥を目指して歩いていると、先頭を歩いていたクレハが立ち止まった。

「待て、魔物がいる」

その言葉に緊張が走った。クレハは周囲を見回すと、剣を抜く。

「あっちから、そっちまでに魔物がいる。少しずつ近づいてきている、向こうはこっちに気づいているみたいだ」

どうやら私たちは魔物に見つかったみたいだ。イリスとエルモさんは杖を構え、私は手を前に構えた。

「くるぞ!」

クレハの声が上がった後、何かが走ってくる音がした。しばらく待っていると、その魔物が姿を現した。じりじりと私たちに寄ってくる魔物は狼の形をしている。

「グレイトハウンドだ!」

「気を付けてください、かなり素早いです」

グレイトハウンドがにじり寄ってくる、その数は十。かなり数がいるみたいで、圧が強い。唸り声を上げて近づいてくる姿を見ると、怖くてすくみ上がりそうだ。

「ノア、エルモ! 戦えそうか!?」

クレハの言葉に即答はできなかった。横を見ると、エルモさんは魔物との遭遇で固まってしまっている。どうにかして、解きほぐさないと。私はエルモさんの腕を掴んで揺すった。

「エルモさん、大丈夫?」

「はっ、だ、大丈夫です。杖があれば、わ、私だって戦えます」

かなり怖がっている様子だ。私たちがクレハとイリスの戦闘に入ったら、きっと迷惑をかけてしまう。ということは、二人を自由にさせて、私とエルモさんは身を守る行動をしたほうがいい。

「クレハとイリスは思うままに戦って。私とエルモさんは身を守ってる。自分たちに向かってきた魔物と戦うね」

「分かった、無理はするなよ!」

「いざというときは聖なる壁を出しますね」

二人はグレイトハウンドに意識を集中した。両者が睨み合っている時、私はエルモさんに提案する。

「私たちに向かってくるグレイトハウンドだけ対処しよう。それだったら、どうにかなる?」

「は、はい! それだったら、どうにかなります」

よし、エルモさんが動き出した。その時、グレイトハウンドも動き出す。

「ガウッ!」

「ガァッ!」

グレイトハウンドが一斉に駆け出してきた。先頭にいる二人目掛けて駆け出し、獰猛な牙をむき出しにしている。

「ホーリーシャイン!」

すかさずイリスが魔法を唱えた。無数の矢がグレイトハウンドに向かっていき、その体を貫いた。だけど、それも二体だけだ。他のグレイトハウンドは素早い身のこなしで避けて、怪我一つ負っていない。

「よっしゃ、来い!」

クレハが駆け出し、グレイトハウンドと戦い始める。素早い身のこなしで距離を縮めると、目にも止まらぬ速さで剣を振った。

「ギャンッ!」

「ギャァッ!」

あっという間に二体のグレイトハウンドを討伐した。すごい、こんなに強そうな魔物があっという間に四体も倒れちゃった。二人とも、本当に強くなったんだね。

他のグレイトハウンドが二人に向かって飛び掛かるが、クレハは簡単に避け、イリスは魔法の壁を作って防いでいる。この二人の戦闘なら安心して見ていられるかもしれない。

と、そんな時だ。一体のグレイトハウンドがこちらを窺い、ジリジリと距離を詰めてくる。

「エルモさん、グレイトハウンドが来ます!」

「は、はい! えい!」

近づいてくるグレイトハウンドに向けて、エルモさんは杖を掲げた。すると玉が光り出し、そこから光の棘が無数に出てきた。その棘は速い速度でグレイトハウンドに向かっていく。

「ガウッ!」

「あ、避けられた!」

真っすぐ向かっていった光りの棘はグレイトハウンドには通じなかった。ジャンプして避けられると、こちらに向かってくる。

「あわわっ!も、もう一度!」

再度、エルモさんが光の棘を出して射出した。しかし、それも簡単に避けられてしまう。まずい、このままだったら襲い掛かられてしまう。

私は手を前に出して、グレイトハウンドに向けて魔動力を発動させた。

「ギャウッ!?」

地面を走っていたグレイトハウンドは宙に持ち上げられ、ジタバタと足を動かしていた。自分の思った通りに動けないと焦り、体を動かすが魔動力という触れない力に包まれると何もできない。

「エルモさん、今だよ!」

「えっ、は、はい!」

宙につなぎとめたグレイトハウンドに向けて、エルモさんが杖を振る。すると、光の棘が出てきてグレイトハウンドに向かっていった。そして、棘は深く突き刺さり、グレイトハウンドは絶命する。

「やったね、エルモさん!」

「いえいえ、ノアちゃんの魔法が凄いお陰だよ!」

エルモさんの魔法が当たり、ようやく一体のグレイトハウンドを仕留めることができた。残りはどうなったのかな? 辺りを見渡すと、最後の二体がクレハとイリスに向かっていた。

「はぁっ!」

「ホーリーアロー!」

クレハの剣が切り裂き、イリスの魔法が貫く。その攻撃で残りのグレイトハウンドは絶命して戦闘が終わった。すると、二人がすぐにこちらに振り向いてきた。

「二人とも、大丈夫か?」

「怪我はありませんか?」

「うん、大丈夫だよ。私とエルモさんで協力してたから、グレイトハウンドを倒せたよ」

「ノアちゃんの魔法のおかげなんです」

「無事で何よりだったぞ。結構手ごわい相手だからな、心配してたんだ」

「やっぱり、聖なる壁の中にいてもらった方が良かったでしょうか?」

戦い慣れている二人でも手ごわいと感じる魔物だったんだ。なんとか無事で済んで本当に良かった。

「周りには魔物がいないみたいだ。もう大丈夫だぞ」

「なら、魔物の討伐証明を取りますね」

クレハが周りの音を自慢の耳で拾うが、どうやらもう周りに魔物はいないらしい。それを聞いたイリスは倒したばかりのグレイトハウンドの討伐証明となる部位を切り始めた。

「それにしても、あっという間に倒しちゃったね。二人が強いっていうことが良く分かったよ」

「そうですよ、お二人ともまだ子供なのにこんなに強そうな魔物を倒せるなんて凄いです!」

「そ、そうか? えへへ、褒められて嬉しいんだぞ」

「そうですね。魔物討伐で褒められることってあまりないので、照れ臭いです」

二人のことを褒めると、とても照れ臭そうにしていた。他の冒険者と比べられないけれど、きっと二人はとっても強いと思う。そっか、もう魔物討伐をはじめて一年を超えたんだね。

一年も魔物討伐をすれば、こんなに強くなれるんだ。私も一緒に戦っていれば、同じように強くなれたかな? でも、私は私の仕事があったし、頻繁には魔物討伐にはいけなかったから仕方がない。

もしもの時があるし、折角魔物と戦うチャンスなんだからしっかりと戦う経験をしないとね。よし、次はもっと戦えるようにしよう。

「次はもっと倒そうよ。私、魔法をバンバン使うよ」

「そうですね。お二人にお任せするのも心苦しいので、私も頑張ります」

「私が魔動力で魔物の動きを封じるから、その隙にエルモさんの杖の攻撃を当てればいいと思う」

「あの魔法いいですよね。動きの速い魔物を止めることができれば、私も安心して杖で攻撃ができます。次はもっと頑張りましょうね」

魔動力があれば、魔物の動きを止められる。時空間魔法の時間停止の魔法もあるけれど、魔動力のほうが発動が早いし使い慣れているからそっちを使っていこう。

私たちが話をしていると、討伐証明の刈り取りが終わったみたい。二人が近づいてきた。

「お待たせしました。先に行きましょう」

「そういえば、どこまで行くんだ?」

「あと、三十分くらい歩いたところでいいです。そこから素材採取を開始したいです」

「あと三十分だな、分かったぞ。なら、行こうか」

クレハとイリスを先頭に私たちは再び歩き出した。