軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

154.山菜取り(5)

昼食を食べた後は帰り支度をする。午前中だけでもかなりの山菜が集まったので、早めに切り上げることになった。私たちも沢山の山菜を採ることが出来たから、もう満足だ。

のんびり帰るだけになったけど、帰り道は騒がしい。山菜を採らなくてすむと子供たちは遊びだしたからだ。あちこちで、子供たちが集まって色々騒いでいた。

それを見ていた私たちのところにも子供が集まってきた。

「なぁなぁ、お前色んな魔法が使えるって本当か? クレハが言っていたぞ」

「私も聞いたわ。珍しい魔法が使えるって本当?」

数人の子供たちが私を取り囲んだ。私が魔法を使えることは二人によってバラされたらしい、魔法を見せて欲しいとせがまれてしまった。

どんな魔法がいいかな? 危険じゃなくて、楽しめる魔法……そうだ! ティアナにやったみたく、魔動力で宙に浮かせればいいんだ。

「じゃあ、宙に浮く魔法を使うよ」

「浮く魔法だって? 面白そう!」

「やってやって!」

「本当に出来るのかー?」

魔動力のことを話すと色んな反応が返ってきた。目を輝かせている子供、信じられないような目で見てくる子供。様々な反応があって面白い。

「じゃあ、最初に誰が受ける?」

「はい、はい! 俺がやる!」

「よし、じゃあ行くよ」

「ちょっと待ってくれ。俺はどうしたらいい?」

「黙って立っていてくれるだけでいいよ」

「お、おう」

名乗り出た男の子は身構えた。体全体に力が入って、顔にも力が入っている。なんだか面白くて吹き出しそうになるのを堪え、魔動力を発動させる。

「お、お、おっ!」

「今、地面から少しずつ浮いているよ」

ちょっと焦らすようにゆっくりと浮上させていく。足が地面から離れると、男の子は足と手をジタバタさせ始めた。

「浮いてる、俺……浮いてるよ」

「もうちょっと高くしようか」

「お、おう!」

そのまま浮上させていき、私たちの背丈よりも高く浮上させた。すると、周りから歓声が沸き起こる。

「凄い、本当に宙に浮いてる」

「どうなってんだ?」

「魔法だよ、魔法の力だよ」

周りにいた子がその男の子の下に集まって、物珍しそうに見上げた。

「へへっ、ノアの魔法は凄いだろう!」

「とても凄い魔法を使えるんですよ」

近くにいたクレハとイリスがなぜか自慢げに話していた。

「すげー、すげー! 俺、宙に浮いてる! イェーイ!」

宙に浮いた男の子は手足をバタバタさせてご満悦だ。宙に浮くだけじゃつまらないから、そのまま前進させてみる。

「お、前に動いたぞ! すげーな、これ!」

「動いてるー!」

「どうなってんの、これ」

ゆっくりの速度で宙に浮いた男の子を前進させた。それだけで周りは大はしゃぎ、楽しそうな声が聞こえる。

「イェーイ、進め、進めー!」

「うわー、いいな!」

「次は私がやりたいわ!」

「次は僕だ!」

宙に浮いて進んでいる男の子を見て、他の子供たちもやりたくなってきたみたいだ。私のところに来て、同じようにやって欲しそうに訴えてきた。

この程度なら、複数も操作できそうだ。だったら、一緒に宙に浮かせて動かせばいいね。

「それじゃあ、行くよー。それ!」

「わっ、浮いたわ!」

「じ、地面がっ」

「高く浮いて、そして移動!」

「高いけど怖くないんだから!」

「前に進んでる、すごーい!」

子供たちは宙に浮いて慌てているけれど、楽しそうだ。前に進ませるともっと大はしゃぎをして賑やかになった。宙に浮いた子供たちを見ていた他の子供たちは目を輝かす。

「うわー、すっげー!」

「こんな魔法もあるんだね」

「ズドドドドッ、っていう魔法だと思ってた」

「やってみたいけど、怖いなぁ」

宙に浮いた子供たちは好きなように手足を動かして遊んでいる。私はそれに合わせて、魔動力で浮かせたり移動させたりした。

「それ、行けー!」

「大分慣れてきたわ」

「不思議ー」

楽しそうに笑顔を見せる宙に浮いた子供たち。それを見ていた他の子供たちが私の周りに殺到した。

「ねぇねぇ、私も宙に浮かせて!」

「俺も、俺もやりたい!」

「僕に魔法をかけて!」

安全だと分かるとやってみたくなるらしい。その場にいた子供たちは、今度は自分がと名乗り出てくる。さて、どうしようかなっと考えていると、離れたところからこちらを見ているティアナを見つけた。

人がたくさんいてこちらにくる勇気はないけれど、使っている魔法を見てとても楽しそうに見てきている。近くに来て欲しいけれど、恥ずかしがり屋のティアナにはハードルが高いかな?

ティアナの隣にはディルもいて、こっちに行こうと誘っているみたいだ。でも、子供がいっぱいいて恥ずかしいのかこちらには来たがらない。

一緒に魔動力で遊べたらよかったんだけど、そう簡単にはいかないみたいだ。でも、こちらを見てくれているのであれば、魔法の楽しさを見ていてもらおう。そしたら、魔法を習いたいっていう気持ちになるかも。

「よし、じゃあ全員浮かすよ……それ!」

ティアナが見ている前で子供たちを全員宙に浮かせた。その瞬間、歓声が響き渡り、楽し気に手や足をばたつかせる。もっと楽しそうにしてもらって、ティアナの気を引こう。私は子供たちを安全に宙に浮かせて少し早めに移動をさせた。

「楽しかったよ、ありがとう!」

「また一緒に遊んでね!」

「今度お家に遊びに行くからね!」

森の外に出て地面に下ろすと、十分に宙を満喫した子供たちはみんな笑顔だった。この機会に仲良くなれた子が沢山いて、友達になれたと思う。今回の交流は大成功だ。

すると、周りで見守っていた大人たちが集まってきて、子供を連れて行く。山菜採りも終わったことだし、後は帰るだけだもんね。私は一緒に遊んだ子供たちに向かって手を振った。

「またねー!」

「またね!」

「今度遊ぼうな!」

「そっちも遊びに来てねー!」

子供たちは手を振って離れていった。なんだかんだで楽しい山菜採りの時間だったな。そう思っていると、誰かが近づいてきた。振り向くとそこには恥ずかしそうにしているティアナとそれに付き添うディルがいた。

「ティアナ、どうしたの? あ、ずっと見ていたから宙に浮きたかった?」

「それもあるけど、お姉ちゃんに……お願いがあって」

「お願い?」

「ほら、ティアナ」

ティアナからのお願いか……なんだろう? もじもじと恥ずかしそうにしているティアナの言葉を待っていると、ティアナが勇気を振り絞って口を開く。

「あのね……やっぱり、魔法を教えて欲しいかなって思ったの」

あのティアナが自分から言ってくれた? 前は断られたのに、自分で言ってくれた! ということは、ティアナが心を開いてくれたってこと?

言葉を言い終わったティアナはやっぱり恥ずかしそうにもじもじとしていた。だからだろうか、隣にいたディルが説明を始める。

「今日一緒に山菜採りをして、ノアと仲良くなれたと思ったらしいんだ。だから、魔法を習う気にもなったらしい」

「私も山菜採りをして仲良くなれた気がしたよ、一緒だね」

「うん……お姉ちゃんのこと沢山知って、そんなに恥ずかしくならなくなったの」

山菜採りで距離が縮まって本当に良かった。今日、仲良くなれなかったらどうしようかと思ったよ。でも、これで堂々とティアナと交流が持てるってことだよね。

「私もお姉ちゃんみたいに魔法が使えるようになりたい」

「うん、ティアナが魔法を扱えるようにちゃんと教えてあげるね」

「うん! お姉ちゃん、よろしくお願いします」

ティアナは礼儀正しく頭を下げた。よし、これで魔法使いのお友達をゲットだね。