軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

148.新しい住人が来た(1)

雪が解け、温かな日差しが降り注ぐ季節。森のあちこちには様々な植物が芽吹き、新鮮な空気が吹き抜ける。心が浮き立つような陽気でいっぱいの春が来た。

気持ちのいい朝日を受けて起きる。もう、起きる時に寒さで震えなくてもいいのが嬉しい。ベッドから出て着替える時に寒さが肌を撫でることもない、とても心地が良かった。

それからお弁当の用意をして、二人を起こしにいく。

「イリス、おはよー」

「うん……おはようございます」

「クレハー、おはよー」

「むにゃ……ん、はよ」

二人を揺すって起こすと、すぐにムクリと起き上がってくれる。冬の時は寒くて中々布団から出れなかったのに、これも春になったお陰だろう。起こすのが楽になって良かった。

それから二人は仕立ててもらった春の服に着替える。クレハは長いシャツにダボついたズボンにショートブーツ。イリスはワンピースの上にベストを羽織ってショートブーツを履いている。私は襟付きのシャツとカーディガンを着て、膝丈のスカートにスパッツとショートブーツだ。

新しい服を着るのはとても気持ちが良くて、袖を通していると眠気も吹き飛んだ。

「新しく仕立ててもらった服はいいな。着るとワクワクするぞ」

「そうですね、なんかこう体の中から元気が溢れてくれてくるような気がします」

「分かる。なんでもできそうな気がしてくるよ」

三人とも同じ気持ちで良かった、やっぱり新しい服を着るのは楽しいよね。体がすぐに大きくなるから、仕立ててもらっても来年になると着れなくなるのが残念だ。もし、デザインが気に入ったのであれば、来年も同じ服を仕立ててもらう手もあるね。

「じゃあ、宿屋に行ってから村の広場に行こう」

「今日は新しい住人との顔合わせでしたね」

「どんな奴らが来るのか楽しみだぞー!」

そう、今日はこの村に新しい住人が来る日だ。と言っても、昨日のうちに到着しているんだけど。とうとう、作った家に人が住むことになるのが楽しみだ。一体、どんな人たちが来るんだろう?

「その前に腹ごしらえだな。早く行こうぜ!」

クレハが走り出し、扉を開ける。明るい日差しの中に出ると、温かな空気が体を包み込む。辺りを見渡してみると、地面には草が生え始めてところどころ青々としている。

木の枝には新緑の葉っぱが芽吹き、景色に色どりを与えていた。春の景色がそこには広がっていた。良く見れば地面には小さな花が咲いており、景色がより一層華やかになっている。

「んー、気持ちいい!」

「空気がいいですね」

「このまま寝っ転がりたいな!」

三人で外の空気を吸うと、清々しい気持ちになる。歩く足取りも軽いもので、クレハなんてスキップをしているくらいだ。それくらい、私たちの気持ちは浮ついている。

「さぁ、早く行こうぜ!」

先を行くクレハが私たちを呼んだ。私とイリスは顔を見合わせて笑い合うと、先に行ったクレハを追っていった。

宿屋の食堂で賑やかな朝食を食べると、私たちは村の広場へとやってきた。そこにはすでに他の村人たちが集まっていて、新しく来た住人を待っているみたいだった。

「まだ、来ていないみたいだな」

「もう少しゆっくりと朝食を食べればよかったですね」

「あ、そうでもないよ。ほら、向こうから人がやってくる」

辺りを見渡していると、男爵様の屋敷がある方向から大勢の人たちがやってきた。その先頭には馬に乗った男爵様もいて、その人たちが移住してきた人だと分かる。

しばらく待っていると、私たちの前に男爵様がやってきた。

「みんな、おはよう。今日は以前から言っていた通り、この村に移住してきた人たちを紹介する日だ。みんなには新しく住人となった人たちを温かく迎え入れて欲しい」

馬から降りた男爵様は挨拶をすると、早速新しい住人の紹介を始めた。新しくやってきた住人は八家族、全部で三十人を超えるくらいの人数だ。

男爵様は一家族ずつ紹介をしていった。名前、どこからきたか、どこに住むことになったのか、この村での役割など色んな事を説明していく。

その中でふと違和感を感じた。何かの力を感じたのだ。それを探っていると、新しくなった住人から感じるものだった。

力を探っていると、それは一人の少女から感じる。年齢は六歳か七歳くらいだろう、茶色で長い髪をしている子だ。大勢の前にいてとても不安そうな顔をしている。でも、この少女から確かな力を感じた。

だから、興味本位で鑑定をしてみた。

【ティアナ】

年齢:七歳

種族:人間

性別:女性

職業:村人

称号:魔法使いの卵

この子、称号持ちだ! 称号持ちだったから不思議な力を感じたのかな? とうとう、この村にも私たち以外の称号持ちが現れた。なんだか、嬉しいような気がする。

私がジッとその少女ティアナを見ていると、向こうがこちらに気づいた。ティアナは私の姿を見つけると、ちょっと驚いたような顔をした。一体何に驚いたんだろう?

男爵様の話が続く中、私たちはお互いをジッと見つめていた。

「話は以上だ。この後は自由に交流をしてくれ、じゃあ解散する」

どうやら、男爵様の話が終わったみたいだ。すると、他の村人は解散するどころか、新しく来た住人を取り囲んで話を始める。仲良くなるのはいいことだね、私たちもその輪に加わろう。

私たちもみんなの輪に加わって、新しい住人と交流をし始める。誰に話しかけようかな、と悩んだ時にあの子の姿を思い出した。魔法使いの卵、っていう称号が出てきた子に興味が湧いた。

だから、その子のところに行くと、その子はお兄ちゃんの後ろに隠れてもじもじとしているところだった。よし、まずはこのお兄ちゃんと仲良くなってみよう。

「はじめまして、私ノア、十一歳」

「俺の名前はディル、十二歳だ。よろしくな」

「この子がクレハで、この子がイリスね。みんな十一歳なの」

「あー、ノアが自己紹介をとった!」

「私も自己紹介できますよ」

「あ、ごめんごめん」

しまった、つい流れで言ってしまった。二人とも自分で自己紹介をしたかったらしく、頬を膨らまして怒っている。

「この村で暮すことになったから、仲良くしてくれると嬉しい。農家の子か?」

「農家っていえば農家なのか?」

「うーん、うちをなんて言えばいいのでしょう?」

「私たちはね親がいなくて、三人で暮しているんだよ」

「えっ、それは本当なのか? 大変な目にあったんだな……」

私たちの境遇を話すとディルは悲しそうな顔をした。久しぶりにそんな顔をされたから、なんだか申し訳なくなる。落ち込ませるために言ったわけじゃないんだけどな。

「そんな気にしないで、結構楽しくやっているんだから。それで、三人で協力して楽しく暮らしているんだよ」

「そうそう、ノアは家のことや畑仕事、家畜の世話なんかもしてくれるんだぞ」

「私たちは魔物討伐をして働いています」

「その年で色んなことをやっているんだな、すごいな! しかも魔物討伐までしているなんて、強いんだなお前ら」

よし、なんとか明るい話題に変えることが出来たぞ。さて、どうやってその子の話題を出そうかな。