軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11.町の外へ

ある夜、抱きしめていた背負い袋を引っ張られる感触で目が覚めた。ぼんやりとする視界の中、私の目の前に誰かがいるみたいだ。ボーッとそれを眺めていると、その人は何度も背負い袋を引っ張ってきた。

そこで、ハッと気が付つ。

「だ、誰!?」

私は背負い袋をギュッと抱きかかえる。

「くそっ!」

明らかに男の声だった。その男は背負い袋を力強く引っ張ってくるが、私は離すまいと必死に抵抗をした。男が力強く引っ張り、私が引きずられる形になっても背負い袋は離さなかった。

「ちっ!」

すると、男はパッと手を放し走ってその場を去って行った。私はギュッと背負い袋を抱えたまま、その場にへたり込んでいた。心臓がドクドクなって煩くて、キュッと喉が閉まる息苦しさを感じる。

寝入っている隙に荷物を奪われそうになった。その事実が恐怖を呼び起こす。

「そうだ、二人はっ」

私は勢いよく振り向いた。二人とも毛布をかぶり、背負い袋を背負ったまま寝ているみたいだ。そっか、私だけ背負い袋を抱えていたから、すぐ盗れそうって思われたんだ。

うるさく鳴る心臓を抑えながら、なんとか気を静めていく。とにかく、暴力を振るわれなくて良かった、お金が入った背負い袋を盗られなくて良かった。ここで、ようやく一息つける。

周囲を確認するが、怪しい人たちはいないし狙っている人もいない。どうやら、あの男性だけみたいだ。ようやく、ホッと安心した。

壁に寄りかかり、寝入っている二人を見る。とにかく、二人に何もなくて本当に良かった。こんな小さな子にあんな怖い思いはさせたくない、自分で良かったな。

膝を抱えて、覚めてしまった頭で色々と考える。やっぱり、建物の中にいないと危ない。外には避難民が沢山溢れていて、その人たちは全ていい人とは限らない。悪い人がいれば、さっきのように大切な荷物を盗まれてしまう。

どうにかして、建物の中で休めるようにしないと。何か手は……そうだ、魔法を使えないだろうか。

「私たちが寝ている間にそんなことがあったんですか?」

「ノア、大丈夫か!? 怪我とかしてないか!?」

あれから眠れなくなった私は二人が起きるのを待った。起きた二人に夜にあった出来事を話すと驚いて心配してくれた。

「間一髪だったけど、荷物は盗まれなかったよ。怪我もしてないし、平気」

「そ、そうか……良かった」

「不審者が現れるなんて……怖いですね」

イリスは不安そうな顔をして背負い袋をギュッと抱きかかえた。この袋に入っているものが私たちの全てだ、盗まれたら生きていけなくなるだろう。緊張感が増して、二人とも押し黙ってしまった。

不安になるのも分かる。ハイベルクに避難してきて、ひと月が過ぎようとしている。始めは大人しかった避難民たちは変わらない状況に苛立ちを隠さなくなった。

最近の町はどこかで喧噪が聞こえるくらい雰囲気が悪くなっている。避難民同士の衝突、町民と避難民の衝突、警備隊と避難民の衝突。時間が過ぎると色んなところで問題が出始めた。

まだ領主からは何も解決案は出されておらず、最近になって避難民向けの炊き出しが始められるようになった。それもまた避難民同士の衝突の原因にもなっている。

後手後手で進む避難民への対策、それがひずみを生み、避難民の苛立ちに変わっていった。このまま町の中にいたんじゃ、その喧噪とやらに巻き込まれるに違いない。

だから、外に出ることを考えた。

「二人とも、町で寝るのは止めて外に出よう」

「外ですか? 外なら狙われずにすみそうですが、大丈夫なんですか?」

「ここにいるよりはいいと思うぞ。ここにいたら、また盗んでくる奴がいるかもしれない」

渋い顔をするイリス、反対にクレハは決意のこもった表情をする。

「私にいい考えがあるから」

自信満々にいうと、二人は不思議そうな顔をした。

町の門から外に行き、壁伝いに門から離れていく。門から見えない位置まで来た、この辺でいいだろう。

「こんなところで何をするんですか?」

「ここで寝るのか?」

「うん、ここが今後の寝床になる」

二人はなんだかしっくりこないような微妙な顔をするだけだ。だけど、ここからが本当の寝床の姿だ。

「二人とも見てて」

両手を前にかざし、魔力を高めていく。

「出てきて、ブロック!」

魔力を解放して地魔法を発動させる。すると地面からブロックが生えてきた。そのブロックを四角い形になるように生やし、天井にもブロックを生やす。あとは出入口の部分は開けておいて……と、完成だ。

「見て、石の家!」

そこに現れたのは、出入り口付きの四角い石の家だ。これが私の魔法を使った秘策、上手くいって良かった。

二人を見てみると唖然として石の家を見つめている。

「どうかな、ここに住もうと思うんだけど」

「魔法でこんなことができるんですね」

「すっげー、家だ」

ポカンと呆気にとられた二人は石の家を見つめたまま動かないでいる。まぁ、突然こんなのを作ったらそうなっちゃうよね。しばらく、そのままでいると二人がこちらを向く。

「すげーな、ノア! こんなこともできるのか!」

「これだったら、雨が降っても大丈夫ですね。ノアさん、すごいです!」

良かった、喜んでもらえたみたいだ。二人は石の家の中に入っていくと、歓声を上げる。

「結構いい感じだぞ、頑丈だし、安心して眠れそうだ」

「中は意外と温かいんですね。これなら寒い思いもしなくてすみます」

「気に入ってもらえて良かったよ。じゃあ、ここで住むで決定でいい?」

「もちろんだ!」

「はい、大丈夫です」

これで住む場所は確保できたね。でも、ちょっと中を改造したいな。

「これから中に枯草を敷き詰めようと考えているんだ。そしたら、寝ている時は枯草の柔らかさで体が痛くならないと思うの」

「いいな、それ。じゃあ、今日はみんなで草を集めよう」

「でも、枯草なんてどこにあるんですか? ここら一帯には普通の草しか生えていませんが」

「あぁ、それはね私の生活魔法の乾燥で草を枯草にするんだよ」

「そうでしたか、それだったら枯草になりますものね」

少しでも住環境が良くなるように、石の家の中に枯草を敷こう。クレハとイリスも手伝ってくれるみたいだし、仕事が早く終わりそうだ。

「よし、それじゃあ片っ端から草を抜いていくぞ」

「あ、ちょっと待って。草を抜くより、いい方法があるの」

「なんだそれ?」

「まぁ、見てて」

私は草が沢山生えた場所の目の前まで行くとその場にしゃがみ込み、手を前にかざす。それから、魔力を高めていきそれを放出する。

「いけー、風魔法!」

イメージは鎌のような風。そのイメージを魔法に乗せて放つと、風が鎌のように通り抜けていく。そして通り抜けた後には、刈り取られた草が残った。

「はい、これで抜かずに済んだよ」

「すげー、すげーな魔法って。いろんな事ができるんだな」

「便利でいいですね」

「この辺り一帯全部刈り取るから、ちょっと待ってて」

向く方向をかえて、再度魔力を高めていく。そして、先ほどのように鎌のような風をイメージして放つ。それを何度か繰り返すと、一帯の草は殆ど刈り取られた。

「よし、これを石の家の中に運んで」

「おう!」

「はい!」

クレハとイリスは刈り取った草を集めて両手いっぱいに抱える。それからそれを石の家の中に運び込んだ。私もそれに続いて草を集めて抱えて石の家の中に運ぶ。

三人でせっせと運ぶと、そんなに時間が掛からずに終わった。後はこれを乾燥させるだけだ。

「二人はちょっと家から出てて、草に乾燥魔法かけるから」

二人を家から離すと、草に向かって手を掲げた。そして、魔力を高めて放出する。

「乾燥!」

すると、草がみるみる黄土色になって枯れていく。全体が満遍なく乾燥するように魔法を唱えていくと、数分後には全てが枯草になった。

「ふー、二人とも寝そべってみて」

できあがったばかりのフカフカの枯草ベッド、二人に寝転ぶようにいうと恐る恐る横になった。

「うわ、フカフカになっているぞ」

「石の床の上で寝るより、断然いいです。ノアも来てください」

私も一緒になって横になってみる。すると、枯草がクッションとなって地面の固さを気にしないくらいの柔らかさになっていた。

「うん、いい感じだね」

「今日はぐっすり寝られそうだぞー」

「そういうクレハは石の床でもぐっすりだったじゃないですか」

「むぅ」

「あははははっ」

三人が十分に寝られる場所は確保できた。ここにいれば、町の中で起こったようなことは起きないし安心して眠れる。少しだけ肩の荷が降りたような感じがしたよ、魔法が使えて本当に良かった。

今度目指すべきは町に住むことだ、よーしお金をどんどん稼ぐぞ!