軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

8話 とんずら③ダメな流れ

ここ、どこ?

そりゃぁ、森の中だよ。

少しだけ森に入り、木の根に腰を下ろし、じっとしていた。人の声が聞こえて、怖くなってもう少しだけ中まで入り込んだ。だいぶ時間がたったからと引き返してみれば、村はどこにも見えなく、どこから戻って来たかのかもわからなくなっていた。

わたしの馬鹿。阿呆。命に関わることなのに。どうして危機感が薄ぼんやりしてるの?

お腹も空いて、余計に惨めだ。

だけれど、現実を直視しなければいけない。

動物にわたしは見える。ということは、魔物にもわたしは見えるだろう。

大問題だ。

武器がいる。幸い作れそうだが、わたしに戦えるのか? 武器を扱えるのか?

剣系、突き刺せる距離に入るが前提、無理だよね。叩く系も近寄らないとだよね。弓、ハードル高い。パチンコあたりは? そうだ、絶対外さないパチンコに、眠らせるとか気絶させる玉を作るとか、どうよ?

ちょうど視線を落とした先に二股の枝を見つける。イメージしやすい。

木に巻き付いていた、蔦を力任せに引っ張ってブチっといただく。摩擦で手のひらが切れた。手のひらだけじゃない、気がつかないうちにぶつかったり触ったりしているみたいで、足や手には細かい傷が何箇所もついている。傷口から化膿してって怖いな。ポーション早く作りたい。

落ちている木の実なんかも拾い集める。出来上がった『玉』を入れておくものがいるな。

ポシェットみたいに肩からぶら下げられるのがいいかな。

大きめの葉っぱをいくつかいただき、マチのある袋に見立てる。一部の蔦を肩ヒモに見立て、定義する。

しなやかで丈夫なポシェット。見かけよりもいっぱい入って、取り出しやすい。

深緑色のポシェットが出来上がった。なかなかいい手触り。

ふふふ、『創造力』のコツが掴めた気がする。躊躇しちゃダメだ、思い込むことが大切。葉っぱが布になるのか? なんて思っちゃいけないわけだ。わたしができると思えば、定義を込めれば、力は応えてくれる。

次はパチンコだ。これは見たことがあるから、イメージしやすい。

二股の枝に蔦を絡ませ、定義する。

狙ったところを外さない、命中率100%のパチンコ。力をあまり入れなくても楽に打つことができる。

おお、蔦の部分が、ゴムっぽいものになっている。グリップの部分に布が巻いてあって、いつかどこかでわたしが目にしたものと似ていた。

さて、あとはこの木の実を。

ポシェットに木の実を入れて、まとめて定義。

眠り玉である。当たった対象を眠らせる。

ふぅ。ちょっと、寒い。魔力っぽいものは残り少ないとみた。

あたりを見回す。やはりどちらから来たとか、見当もつかない。

明るい方に向かっていくか。

パチンコと玉を握りしめ、神経を研ぎ澄ますようにして、どれくらい歩いただろう。

ちょっと森の中に足を踏み入れただけのつもりなのに、未だ村へは届かない。

見当違いの方向に歩いてきてしまったと考えるべきなのだろう。

わたしを餌とする動物や魔物との遭遇も困ることだが、同時に食べるものがなくて、動けなくなる未来も迫りつつある。

武器もね、とりあえず用意できてよかったのだが、わたしの心情的に。でも、でもだよ。はい、魔物出ました、パチンコ構えました、玉装着しました、ビュン。この過程をだね、魔物が待っててくれるわけないよね。

近距離で戦うの無理、の発想から飛び道具でできそうなものをと思ったんだけど、わたしの運動神経で、魔物が現れてから最速の行動を取れる自信もないし、無理な気がしてきた。

っていうかさー、この玉に絶対命中するを定義すればよかったんじゃない?

パチンコを構えての過程を縮められる。

自分の魔力がどれくらい残っているのかわかっていない状態で闇雲にやって、魔力枯渇で意識を失うのはまずいし。

わたしって、なんでこんなダメダメなんだろう。

そりゃそうだよね。生きる場所が変わっても、わたしが変わったわけではないのだから。

何でもっとちゃんと、考えられないんだろう。浅はかなんだろう。頭が悪いんだろう。

命がかかっている時でさえ、こんなヌケサクなんだから。

武器もだけどさ、それよりもわたしに害するものが寄ってこないお香的なもの作ればよかったんじゃない? 今更だけど。このトホホ感は、ものすごく心当たりがあり、以前もよくこんな思いをしていた気がする。

っと!

木の根につまづいて転んでしまった。スカートだったのが災いして、両膝が大惨事だ。

傷口は洗わなきゃねなんてノロノロ考えてはいたけれど。

涙が出た。こんな歳になって転んで痛くて泣くってアウトだろ。

そう思うのに、涙が止まらない。後から後から流れ出す。あ、これダメな流れだ。

「ああ、痛い! 最悪!」

言葉にしてみる。痛くて泣いていると自分で思うために。この歳で転んで泣いたらアウトだけど、それより今落ち込んだらドツボにはまる自信があったので、痛くて泣いた、の方がまだいい。そう思い込もうとして失敗する。

「もう、なんなのよ、ほんとに。最悪すぎるでしょ!」

召喚のおまけで異世界に放り出されて、襲われそうになって、逃げ出して、迷って。怖い思いをして。

自分の残念さにここでも向き合わされて。さらに、こっちの世界だとその残念さは死に直結。

情けなくて、惨めで、立ち上がる気力もなくて。さめざめとわたしは泣いた。

こんなに自分のダメダメさを思い知らされるんだったら、あのまま消滅していた方が良かったのではなんて考えが一瞬よぎり。

そしたらお腹がクゥーと切ない音を告げた。

ハッ! 思わず笑ってしまう。ほんと残念だな、自分。こんな状況で、お腹が空くんだもんなー。

体は生きたがっている。心と身体、自分の意思統一もできないなんて。

しょうがない。残念な生き物だ、わたしは。そこは諦めるしかない。

泣くだけ泣いたし、気分を変えよう。

わたしは水を出して、まず膝を洗う。拭かずに放置。ボックスからコップに良さげな葉っぱを取り出し水を飲み、チーズの欠片を口に放り込んだ。