軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

61話 君に伝えたいこと⑦スラムの主人

商人ギルドには、ボスであるトーマス、副リーダーであるアルス、12歳代表の商人になりたいブラウン、わたしとソレイユで行くことになった。

わたしは昨日帰り道で眠ってしまったのだけど、帰ってきてからみんなで話し合ったらしい。高額な魔物を手に入れたかもしれない。みんなどうしたい?と。

案として出したのは、何かあったとき用にとっておいて、使い道を考えながら保留。

分配。

土地を買って、みんなの住むところを整え、ゆくゆくは商売をする。

意見は割れるかと思われたが、みんな同じ意見だった。みんなで、ずっと一緒に暮らしたい。

トーマスから後日、あれには泣かされたと教えてもらった。一人で夜泣けてきて困った、と。

まぁ、みんな今はそう思っていても、いつか考えが変わる時がくるかもしれない。そのときは、また話し合うことにして。今はまず土地を買いたいと話はついたそうだ。

わたしとソレイユはみんなが不利なことにならないようアドバイザー的な気持ちで臨んでいる。

商人ギルドに入るのは初めてだったが、しっかりした機関じゃないかと思えた。

入りやすい雰囲気。テキパキした職員さんの動き。所々に生花が飾られているのも好感度高し。生花は状態が一目瞭然だからね。手をかけてなかったらすぐにわかる。ここは隅々まで気を配られている。子供のわたしたちにもきちんと対応してくれる。この街の冒険者ギルドとは大違いだ。わたしたちの人数が多かったからか、一室に案内される。

お茶も用意され、すぐに入ってきたのは、好々爺にしか見えないおじいちゃんと、40代ぐらいの有能そうな男性と、20代の若い女性だった。

「お待たせいたしました。昨日は、高位魔物であるモスマンと、アグレシの討伐をありがとうございました。街を代表してお礼申し上げます」

3人はピシッと揃って頭を下げた。討伐はしていないし、こうされると居心地が悪い。ソレイユ以外は同じ考えみたいだ。

「正しくいうと俺たちが討伐したわけじゃないんですけど、それは大丈夫ですかね?」

「昨日、お話くださいましたね。三つ巴で生き延びたのです。あなたたちの勝利です」

そんな言葉でわたしたちを安心させてくれてから、座って話しましょうかと促される。

そして自己紹介をしてくれる。

「私は、商業ギルド副長を務めております、ラシードと申します。こちらは前ギルド長、現顧問を務めるムロイスです。そして」

40代くらいの有能そうな男性がリードを取ってくれて、おじいちゃんは前ギルド長ということも教えてくれる。そして彼は副長だ。格別の扱いなんじゃない? わたしたち。

「今後皆さまの相談窓口の担当をさせていただきます、フローネと申します。よろしくお願いします」

20代の女性も丁寧な仕事をしそうないい感じのお嬢さんだ。

「俺が代表のトーマスです。隣が副代表のアルス。それからランディ、ソレイユ、ブラウンです。初めてのことでわからないことだらけですが、よろしくお願いします」

トーマスに合わせてわたしたちも頭を下げた。

「昨日運んでくださったモスマンとアグレシはどちらも高位の魔物。討伐料、素材などでかなりの高額になると思います。ただ、こちらは商人ギルドですので、討伐料は冒険者ギルドより落ちると思います。こちらにおろしてくださるのでよろしいですか?」

「はい、冒険者ギルドにはいつも買い叩かれているので、今回は商人ギルドに頼ることに決めました」

「買い叩かれる?」

おじいちゃんが不思議そうな声を上げる。

「アルス、副リーダーは錬金術師で、ポーションを作っています。冒険者ギルドの仕事としてあちらのギルドに売りに行っていたのですが、スラム出身ということでいつも買い叩かれていました。仕事をしないとギルドランクに響くので、そのままにしていましたが」

「買い叩かれるとはいくらですか? 教えていただいても?」

アルスが言いにくそうなので、思わず口出ししてしまう。

「150Gです! アルスの作ったのはすっごく状態がいいんです。それを鑑定もしないで」

「ランディ」

隣のアルスに袖を引っ張られる。

「他の街のギルドは子供相手でもそんなことないよ? この街の冒険者ギルドがおかしいんだ」

わたしは商談中なことを忘れて憤った。思い返しても腹の立つ!

「あなたは他の街のギルドに行ったこともあるのですか?」

ラシードさんに答える。

「はい、わたしは旅先の街で素材などをよく買ってもらっていますが、今まで買い叩かれたことはありません。最近この街にやってきて彼らに助けてもらい、今やっかいになっているんです。この街の冒険者ギルドにわたしもポーションを売りました。着いた時は他街と一緒で、400Gでした。今は聖水さまさまで、ポーションの価値がなく、300Gでしたが。アルスのは状態も見ずに適正値の半額に値段を決めていました」

「そうですか。よくわかりました」

ラシードさんとムロイスさんが目で何かを伝え合う。

あ、なんかしてくれそうだ。よかった、商人ギルドはまともに機能していて。

「では、こちらでおろさせていただきます。報酬の件ですが、どのようにいたしましょう? 現金にするか、それとも、どなたかのギルドカードを作りますか?」

「ゆくゆくは商売をしていくつもりなのですが、まだ具体的には決まっていません。それでも商人ギルドに加入できるのでしょうか?」

ソレイユが尋ねる。

「普通なら、商売の算段がついてからの加入とさせていただきます。何故かと申しますと、定期的に審査がありまして商売をしていなかったらギルド員とはみなせなくなるからです。商売といいましても、値は常に変動しますので、いつもうまくいくとは限りません。ときには利益が出ないこともあります。そこで商人ギルド員にもランクを打ち出し、そのランクによって、利益の監査をいたします。皆様の場合、大変高額なものをおろしていただきましたので、3年は利益がなくても構成員であることが可能です。ここからはご相談ですが、皆様が作られている食事が大変な評判を呼んでいるとか。それを商売のひとつにするのも手ですね。そこまで利益が出なくても、細々と何かしらの商売をしていけば、構成員でいることは可能との判断をさせていただいております」

なるほど、高額なものを売ったという実績と商売していけると見込んで商人ギルドの構成員になることが可能なんだ。

「……こちらは共有カードと個人カードを作ることができるのでしょうか? それと何歳からカードは作れますか?」

「共有カード、個人カード、両方ともお作りすることが可能です。カードは7歳からです」

それを受けて、ソレイユがトーマスに伝える。

「トーマス。アジト共有のカードを作るのと、7歳以上は全員カードを作っておいたほうがいいよ。共有はトーマスとアルスの連名で作っておいて、ふたりの承認で使えるようにしておくのがいい」

トーマスの決断は早い。

「今、彼が言ったように、俺とアルスの連名で共有のカードと、7歳以上の全員のカードを作りたいです」

「承知いたしました。カードを作るときにご当人の血が一滴必要になりますので、全員のカードについては後ほどフローネと詰めていただく形でよろしいでしょうか? 今は連名のカードを作らせていただくということで」

「はい、それでお願いします」

「皆様で分配されるのであれば、カードができ次第、資金を移すことは可能です。分配なさる予定ですか?」

「それなんですが。相談にのっていただきたいことがあります」

「相談ですか? はい、なんでしょう?」

「どれくらいになるかもわからないのに、どうかと思われるかもしれませんが。俺たち、土地を購入したいんです」

「土地、ですか?」

「はい。みんなで暮らしていけて。ゆくゆくは商売ができるように。報酬はそこまでの金額には届きませんか?」

ラシードさんが驚いたような顔をする。

「おい、ラシード。何を惚けておる。お客様が不安になるだろう」

「大変失礼いたしました。あまりに心躍るご提案でしたので、意識が飛んでしまいました」

ムロイスさんに小突かれて、ラシードさんが動き出す。

「概算ですが、街に近い森でのVレベルの個体の討伐、しかもモスマンですからそれだけで1億5千万Gはいくと思います。それから素材が高額です。アグレシは入れずに、3億Gはくだらないでしょう。貴族街は難しいですが、土地の購入は良いことだと思います」

「3億G?」

アルスとトーマスが声を揃える。

ブラウンは指を折って、億の桁を数えている。

「2億ですと、どれくらいの広さの土地が買えますか?」

ソレイユが尋ねる。

「そうですね。それなりに広い土地となると思いますが、そこまで広い土地の空きがありません。あちこちになら空いているのですが、まとまってだと難しいです」

「スラム一帯だとどうですか?」

ブラウンが声をあげた。

「スラム、ですか? あちらは整地されておりませんので、整地してからとなると時間と資金とがかかってきます」

「整地なしで、あのまま買うことって可能なんですか?」

わたしが尋ねると、ラシードさんが街の地図を広げた。

「スラムと呼ばれているこの一帯ですね。こちらの部分を整地なしででしたら、1億5千万Gですね」

わたしはトーマスを見た。みんなもトーマスを見ていた。

トーマスは小さく頷く。

「ここ一帯を整地なしで購入したいです」

こうしてトーマスたちは本当のスラムの 主人(あるじ) となった。