軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28話 ブルーノイズ④誘拐

強面の外面に反して、デリックさんは気さくでフレンドリーで非常におしゃべり。常に何かを喋っていて、時間を感じさせない。急いでいたので、わたしはモードさんの腕に座らせてもらって運ばれている。もう7歳と大きいので心苦しいが、わたしを抱えてもモードさんにブレはなく、どうってことないと言ってくれるので、信じることにする。

森から出ると、そこにはギルマスさんをはじめ、何人もの冒険者が焦った様子で駆けつけるところで、それを見た魔術師のスンホさんが短く声をあげた。

「すいません。報告を入れ忘れました。こちらの方が討伐してくださいました」

スンホさんはグスコングスに遭った時に、自分たちだけではとても無理だとギルドにヘルプの魔術を送ったそうだ。

へー、そんなことをできる魔術があるんだ。

モードさんが討伐したので、その報告をしなくてはいけないところだったが、あまりのイレギュラーな出来事に動揺してうっかり忘れていたと。

わたしはモードさんに降ろしてもらった。冒険者の端くれなのに抱っこって恥ずかしすぎる。

ギルマスさんがキレイな角度でモードさんに頭を下げた。

「いや、やめてくれ。たまたま居合わせただけだ」

「ルベラミ支部、ギルドを任されているヘラルドだ。そうだとしても、感謝する」

ギルマスさんが改めて頭を下げると、何人もの人たちが一斉に胸に手をあてて、モードさんに頭を下げた。

「もし、貴殿が仕留めてくれなかったら、街が壊滅状態になったことだろう」

モードさんはそっぽを向いて短く息を吐く。

あのどでかい屍を思い出して、身が震える。確かにモードさんが倒さなかったら。あれが街に入り暴れていたらと思うと、今更ながら恐ろしくなった。

ギルマスさんはデリックさんとスンホさんを鋭く見た。

「デリック、スンホ、グスコングスはどこにいたんだ?」

「F地点で遭遇しました」

スンホさんの報告に、皆が息を呑む。

「どれくらいの個体だった? 屍は森の中か?」

「彼のバッグの中に。森の守護者級です」

「それが人に牙を剥いてきただと?」

「神獣に何かあったのか?」

ギルマスさんとふたりのやりとりに、あちこちで声が上がる。なんか大変なことらしい。

関係ないけど本当にブルーの髪の人が多い。ギルマスさんとスンホさんもそうだけど、頑丈そうなアーマーに身を包んだほとんどの人がブルーの髪をしている。

モードさんはギルドまで来て欲しいと言われて頷いた。

個体を見てから、ギルドで話し合いが持たれるらしい。

ギルマスさんに頭を撫でられる。

「大変なところに居合わせちまったな」

わたしはふるふると首を横に振った。

「ディアンはスゴイですよ。そっちの旦那に支援の魔法を送ってましたからね」

「ディアン?」

「あんなチビッコが支援魔法使えるのか?」

ざわざわされた。

ディアンという名前で不思議がったのはギルマスさんだ。ステータスを見ているから、名前でハテ?って思ったんだろう。ちらりとわたしの顔を見て、理解してくれたような顔をした。

それはそうと、支援魔法を使えることになっている。これから適当なことを返すのはやめよう、うん。

「どうした? 疲れたか?」

モードさんが抱きあげてくれる。

「大丈夫だよ、歩ける」

「でも、眠そうだし。先に帰って寝ていろ。今日は驚いただろう?」

「モードさんが疲れちゃうよ」

お前ぐらいなんともないと言って、モードさんはまた抱っこで運んでくれた。

街の中でギルマスさんたちと一旦別れ、わたしを宿まで送ってくれる。

「じゃぁ、俺はギルドに行ってくるから、お前は寝ておけ」

わたしは頷いた。ちっとも眠くなかったが、ベッドの誘惑に負けてコロンと転がったら、あっという間に眠りに落ちていた。

目を覚ましたときは夕方前ぐらいだった。

モードさんがいない。まだギルドのようだ。

ぐーっとお腹がなった。そういえばお昼も食べてなかったっけ。

モードさんも、きっとお腹が減っているだろう。

下に降りていく。モードさんはまだ戻ってないかと一応尋ねる。

まだ戻ってないということなので、ギルドに迎えにいくことにする。

「あ、ディアン君。もしどこかでジフを見かけたら、帰ってくるように言ってくれる? いつもならもうとっくに帰ってきているのに、どこで何をしているのかしら?」

「わかりました」

元気よく返事をして、宿を出た。

ふと、寄り道していこうと思ったのは、始まろうとしていた夕焼けがあまりにもキレイだったからだ。神秘的なキレイさに惹かれて神獣までもやってくる湖。そこに訪れる夕暮れはどんな美しさなんだろう。寄り道しても10分もかからないし。一眠りしたので元気いっぱいだったのも手伝って、わたしは気分良く湖まで歩く。少し肌寒いぐらいだが、緩やかな上り坂で体が温まってきた。

目の前が開けて、湖が見渡せるようになったときに、わたしは遠くのジフと目があった。

大きな大人に羽交い締めにされ、口には声が出せないようにするためかタオルのようなものを噛まされている。

その後ろには白いもふもふしたものの山があって。大人は何人かいて、手には武器を持っている。

助けを呼ばなくちゃ。踵を返したところに、ひょろっとした金髪の大人がいた。

「あの、助けてください! ジフが縛られてて」

わたしは助けを求めた。

「見ちゃった、よね?」

ゴロツキの仲間⁉︎

横をすり抜けて、走っていこうとしたのを止められる。

「ごめんね」

声を上げようと息を吸い込んだ時、口元を布のようなもので覆われた。