軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

95 エルフお白洲

俺が呼ばれて駆けつけてみると、そこにはたしかに見慣れぬ集団が正座しながら引き並べられていた。

総勢二十人ほど。

全員が女性で、たしかに人族とも魔族とも違うエキゾチックな雰囲気を醸し出していた。

「……これがエルフ?」

とりあえず周囲に尋ねてみる。

「そうです。歴史的には魔族から枝分かれした亜種、という定義になっています」

と解説を加えてくれたのは、一緒にここまで駆けつけたベレナだった。

さすが元四天王の補佐官だけあって情報の引き出しが早い。

「そうした枝分かれ種族は何種類もいて、エルフもその中の一つです。魔族とも人族とも交流せず森の中に暮らしている種族ですが……」

「それが何故こんなところに?」

ここは地上から来るとなれば、山超え谷超えしなきゃならない超異境だぞ?

今まで現れた珍客もほとんどが海ルートからの訪問だし、何を思ってそんな苦難な道を乗り越えてきたのか?

「その点については既に調書を取ったわ」

とプラティ。

さすが我が妻用意がいい。

他にも珍客到来ということで、我が農場の住人たちが多数見物に集まっているが、今は割愛しておこう。

「彼女たちは、エルフの盗賊団なんですって」

「そんなことを言っていたな?」

「人族魔族、分け隔てなく荒らし回ったせいで両方からお尋ね者になり、人の住む街や村にいられなくなったんですって。そこで誰も寄り付かない人外秘境の奥の奥まで逃げ続けたところ……!」

ここを見つけてしまった、と。

じゃあ、彼女らがここに来たのはまったくの偶然というわけか。

「この子たちも、まさかこんな秘境の奥底に農場があるなんて想像もしていなかったでしょうよ。それで調子に乗って盗賊本来のお勤めを果たそうとして……!」

「我らが拘束いたしました」

オークボが言う。

「彼女らは既に畑のトマトを盗み食いしておりました。その罪万死に値すると断じ、我が君のご裁可を願うところでございます」

「いやいやいや……!」

値しない値しない。

万死に値しない。

たしかに丹精込めて育てた野菜をドロボーされるのはムカつくけど、死んで償えとまでは行かないわ。

とはいえ、ちゃんと畑の防衛を果たしてくれたオークボたちはちゃんと労っておこう。

それとポチ?

俺がそう名付けたハイリカオンだが、やけに物欲しげな目つきで見上げてくる。

「盗賊たちを最初に発見したのはポチです。取り決め通りの遠吠えで我々に報せてくれました」

おお、そうか。

ではしっかりご褒美に撫でてやらないとな。

それを今か今かと待っていたのか? 嬉しそうに尻尾をガン振りしやがって。

……いや。

撫でるよりエサの方がいいのか?

「それで、肝心のエルフたちの処分ですが……」

おっと。

オークボの指摘で現実に引き戻された。

そうだなあ。

野菜ドロボーとはいえ盗みを働いた時点で、そのまま解放と言うわけにはいかない。

自分から「盗賊団」と名乗っているだけに余罪もたくさんあるようだし……!

と俺が悩んでいると……。

「では決を取ろう」

見物人の一人に収まっていたヴィールがなんか突然言い出した。

「盗みを働いた罰として一人残らず惨殺し、見せしめに死体を戸外に吊るしておくのがいいと思う人。手を挙げて」

おるかああああああああああああッ!?

そんな残忍な案を採用する者がお前以外におるかああああああッ!?

「「「「「「「はーい」」」」」」」

意外にたくさんいた!?

「旦那様、これは重要な問題よ。この畑で獲れる作物は私たちの生命線。収穫の多寡が、そのまま私たちの命運を左右するわ」

「盗人をお咎めなしとするようでは、今後同じことが起きても大事な畑を守り切れる保証がなくなります。ここは極刑をもって『我らの畑を侵せばこうなる』と言う断固たる意志をお示しになるべきかと」

そ、そういうものか……!

うーん。

たしかに、これまで丹精込めて育ててきた畑とその作物。

それを安易な気持ちで盗む者らに、育てる人たちの切実さを知ってほしいとも思える。

「……バティ、ベレナ」

「「はい?」」

居合わせている魔族娘たちに尋ねる。

「彼女らを魔族に引き渡したとして、どうなる?」

「どうなるかは裁判の結果次第ですね。極刑も充分あり得ると思います」

マジか。

「盗賊エルフ『雷雨の石削り団』は、たしか魔国の有力貴族にも盗みを働いていたと思います。そうした層に睨まれては必要以上に重い刑を科せられるのは必定かと」

「ただ、現魔王のゼダン様は人死にを嫌う御方で、死刑執行をお認めになることは滅多にありません。その上に、先の改革でこのエルフらに恨みを持つ勢力はかなり衰退しているかと」

どういうこと?

「前に資料を見たことがありますが、このエルフ盗賊団、貧者からは決して盗まず、裕福な貴族や豪商だけにターゲットを絞っていたとか」

「義賊ってヤツか」

「しかも彼女らの被害にあった貴族は大抵、無理な重税や賄賂で私腹を肥やすタイプだったので。ゼダン様がアスタレス様を娶る際に行った大改革によって大部分が失脚しています」

「益々義賊じゃないか」

…………。

ふむ。

たしかに農場を治める者としては、野菜ドロボーには毅然として当たらねばならないだろう。かと言って血を流すのはなあ。

「よし」

わかった。

よし、行くぞう。

「では、このエルフたちにウチの野菜を盗んだ罪で厳罰を与えよう。その罰の内容は……!」