軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

953 祭りのあとの神々の遊び・前編

『うわぁあああああああッッ!? ボクのヴァルカンがぁあああああああッッ! なんだなぁああああああッッ!!』

ヘパイストス兄さんのこんな声量初めて聞いた。

あッ、紹介が遅れました知恵の神ヘルメスです。

そしてここは天界。

地上にてヘパイストス兄さんの自信作の巨大ロボットが一撃粉砕されるさまを覗いていました遠見の術で。

……いやぁ、見事なまでの木っ端微塵だったな。

さすが超竜アレキサンダー。

天地海すべての神々が束になって、さらにそれを十倍にしてかかったとしても一秒以下で全滅させられるという力の持ち主。

ただ少し空気の読めないところがある模様。

『うほぉおおおおおんッ! ボクのヴァルカンがぁあああッ! ボクの情熱を傾けて作った傑作がぁあああああッッ!!』

ヘパイストス兄さん泣き崩れておりますけれど、でも悪いのはあの究極竜だけじゃないとは思いますよ。

聖者くんからの指摘にもあったように、兄さんのロボット性能でぶっちぎっていましたですやん。

相手側と比べたら次元違い。

宇宙帝国を敵にして弓矢で戦うような感じになっちゃってた。

あんなのチートといわれても否定できんだろうがよ!

プレデターの人がブロンズ帯で初心者狩りをするような行為!

そう考えたらアレキサンダーの乱入なんて、運営側の怒りの鉄槌みたいなものだったんだよ!!

『うう……その辺は僕の配慮が足りなかったんだな。第一話の敵役みたいなことをしてしまったんだな』

そうそう。

ホビーマンガで完全素人の主人公を舐めくさってやられる中級プレイヤーみたいな感じね?

『反省はするけど、この情熱は抑えきれないんだな! たとえ超竜が相手だろうと立ち向かえるスーパーロボットを今後とも拵えていく所存なんだな! 作り上げて壊してまた作っていくんだな!』

ヘパイストス兄さんが謎の情熱を燃やしている?

あのアレキサンダーを倒せるロボットを、ヘパイストス兄さんなら本当に作り出しそうで怖いんだけど?

『へーえ、面白そう。じゃあ完成したらジュエルやシールでデコッちゃいましょう』

ん? 誰だ?

この軽薄で、頭なんも詰まってないような女の声は?

『じゃじゃーん! 来ちゃった!』

ほんげぇええええええええええッッ!?

き、貴様は!?

美の女神アフロディーテことイシュタル!?

なんでお前が!? ここに!?

『私がいることに理由なんているのかしら? 私は自分の行きたい場所、求められているところにならどこにでも現れるのよ』

うるせぇ、誰もお前なんか呼んでねえよ!

歩くトラブル生産機が! こないだ地上に召喚されたって聞いたから警戒していたのを、早速目の前に現れやがるとは!

そもそもお前、実家に住んでる姉神のエレシュキガルさんブチギレさせて強制送還されたはずじゃなかったっけ!?

なんで何食わぬ顔でここにいるの!?

『そりゃ脱走してきたからに決まってるでしょう。ショーシャンクの空に!』

ここに脱獄囚がいるぞぉおおおおおッッ!!

警察と書いてエレシュキガルさんと読むヒトに連絡しないと! しまった私、彼女とLINE交換してねえ!!

『なんか面白いことはないかなーと飛び回ってたら、なんか変なロボット? みたいなもの見つけて、あーあれはヘパちゃんの作かなーって思って。ホント男の子ってああいうの好きよねー』

しまったあのロボットがこのクソ女神の呼び水になってしまったとは!?

『ああ、ごめんなさい。ああいうのロボットって言うと怒るんだっけ? モビルスィーツ、って呼ばないとねえ?』

半端に聞きかじったオタク知識を実行するなぁああああッッ!!

ここで唐突だが説明しよう!

この私ヘルメスが何故このクソ女神を恐れているかというと!

我々の神界でこのクソ女神より恐ろしい存在は他にいないからだ!

ゼウス? ヘラ様?

いいや、あのマッチポンプ夫婦よりも断然コイツの方がデンジャラスだね!

特にここにいる我が兄ヘパイストスにとっては!!

『はぁい、ヘパイストスちゃん愛妻が会いにきてあげたわよー。そんな人形より生身の女体の方がいいでしょー?』

『兄さんに近づくなこのハゲェえええええええええええッッ!!』

思わず声に出てしまった。

そう、このイシュタル。

元々こことは別にある神界の出身だが一時期こっちの世界で暮らしていたことがある。

その際はアフロディーテあるいはヴィーナスと呼ばれる女神であった。

そしてアフロディーテは、この世界のとある男神と正式に結婚した。

それが誰か?

ヘパイストス兄さんなんだよなぁ………………………………ッッ!!

『愛しい旦那様の下を訪ねてあげる女神! 甲斐甲斐しいくない?』

『お前の甲斐甲斐しいのハードルひっくいなあ!!』

地中に埋まっているレベルのハードルの低さだよ!

解説を続けたもう!

一応夫婦関係となったヘパイストス兄さんとこのクソ女神。

しかし幸福な夫婦生活などありうるわけがなかった。

理由は当然、このクソ女神の浮気性によるところだ。

愛と美の女神を自称するコイツはとにかく性に奔放、男と見れば跨ろうとする女でむしろ性欲の女神じゃねえの? とツッコみたくなるぐらい。

特にベラスアレス兄さんとの浮気が一番酷くて、あの天の神では比較的良識的なベラスアレス兄さんが……。『真面目な人ほどハマるとヤバい』ってことを認識させられたな。

『あら、そんな他人事みたいに解説する資格がヘルメスちゃんにあったかしら?』

うっぐ!?

『私とアナタの愛の結晶ヘルマプロディートスちゃんは元気?』

き……気づいたら性転換手術受けてた……!

くそッ、そうだよ!

白状してしまえば、この知恵の神ヘルメスもまた彼女の色香に惑わされた者の一神。

ことほど左様にアフロディーテことイシュタルはこの世界の男神を片っ端から食いまくり、気づいたらオリュンポスの神々のほとんどが穴兄弟になっていたという恐ろしい存在なのだ!!

うわぁああああ、語るのもおぞましい!

むしろここまで色ボケしていながら、同じく女なら片っ端から犯そうとするゼウスと何の関係もないのが疑問なくらい。

たくさん食い散らかしているからこそ、地雷を見分けるセンサーがお互いに発達しているのだろうか?

しかし最大の被害者としてはヘパイストス兄さんだ。このクソ女神と法的に結婚しているんだから。

そもそもがオタク気質で女の子に対して強く出られない人だというのに、この無制限奔放女を押し付けられて、嫌がらせとしか思えない引き合わせであった。

お前は存在自体がヘパイストス兄さんのトラウマなんだよ!!

『ダーリンおひさ~! 私ねえ、宝石が百八個散りばめられたアクセサリーほしいぃ~!』

会ってすぐさまおねだりするんじゃねえ!!

大丈夫ですかヘパイストス兄さん!?

怖くて泣いたりしていない!?

『どちら様なんだな?』

ほらあまりに嫌な思い出すぎて記憶から消去されてるじゃんけ!!

『忘れてるなんてひどぉい、アナタと愛を誓い合った妻イシュタルじゃない。……あぁ、アフロディーテって言わないとわからない?』

『ボクの嫁は二次元にしかいないんだな』

ヘパイストス兄さんが必死に過去から目を逸らそうとしている!

そもそもモノ作りオタク気質であるヘパイストス兄さんと、ギャルビッチ女神アフロディーテことイシュタルの相性最悪なんてのは火を見るより明らか。

オタクに優しいギャルなんてやっぱり幻想に過ぎなかったんだよ!

そんなこんなでついにブチキレたヘパイストス兄さんが報復したことで二人の結婚生活は瓦解した。

イシュタルのクソ女が浮気中に投網して、網にかかって身動きできなくしたところで浮気の動かぬ証拠を公開したのである。

おかげさまで二人の結婚を押し進めたゼウスとヘラ様夫妻も抗弁できず、無事離婚が成立できた。

NTRされても黙って受け入れはしない、それがヘパイストス兄さんのカッコいいところだ!

離婚した元妻がまったく懲りずにタカってこなければ無事平穏なのになあ。

『私たちの愛は書類一つで引き裂かれるほど薄っぺらいものじゃないわ! 私たちが真に愛し合っている限り、私たちは夫婦なのよ!』

その愛が最初からなかったでしょ、って話なんだが。

こんなクソ女郎が『愛の女神』とか言われる時点で世の中間違ってる。デミウルゴスが作り出した疑似世界だという説を信じたくなっちゃうよ!

ヘパイストス兄さんは頑なに自分の殻に閉じこもってビッチをやり過ごそうとしているけど、この自己全肯定ビッチは拒絶などおかまいなしに自分が愛されているものと信じて疑わずに相手スペースに踏み込んでくる!

私が止めたいが無理だ! 私程度ではこの女神のゴリ押しに弾き飛ばされるだけ!

コイツの天敵たるエレシュキガルさんをお呼びするのが一番いいんだけど、連絡するにはベラスアレス兄さんにLINEしてもらわないと!

ベラスアレス兄さんに助けを求めに行く余裕があるのか?

その間にヘパイストス兄さんの自我が崩壊してしまう可能性が!?

ああ誰か、救いの神はいないのか!?

いや私たちが神様だった!