軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

947 スペシャルゲストの墜落

とりあえず今年のオークボ城。

ステージワンが終了した。

その功労者たちをねぎらいに行こう。

まずはオークボの下へ。

「新オークボ城、最高の出来栄えだったね」

「我が君のお褒めに預かり恐悦至極」

いやホント。

まさかファンタジー異世界で巨大ロボットに出会えようなんて思いもよらなかったもの。

しかも変形ロボット。

普通ファンタジーなら剣と魔法じゃん。

鉄と油、蒸気に硝煙、レーザー超電導相転移とかまったく縁のない世界。

そんなところで巨大ロボットと出会えるなんてまさに望外の幸運。

これもオークボたちのお陰だなあ。

彼らも時の経過とともに『好き』にのめり込んでいき、俺のアッと驚くようなシロモノを拵えてくれるとは。

彼らの成長にも驚愕だなあ。

「出来上がったオークバトラーたちはこれからどうするの?」

「各所に配置し、最寄りの都市からオークボ城へ行き来するための送迎装置として利用されます。あと何体かはアレキサンダー様がお持ち帰りされることに……」

あの 人(ドラゴン) も、大概あの巨大ロボット気に入ったようだからなあ。

人の分明文化の歩みを好むアレキサンダーさんとしては好みのど真ん中なんだろう。

またお家で『同じ物を作ってくれ!』って無茶言い出さなきゃいいけどなあ。

それはそれとして……。

「さっきの件が多少引きずっているけれど大丈夫?」

「我が君にご心配をおかけして不徳を痛感いたします。ですがこれ以上の心配はご無用、既に手は打ってあります」

うむ、さすがオークボ。

プロ出場者の口ぶりはまるでオークボ城を乗っ取らんとする感じだったからな。

とても見逃してはおけない。

かといって力ずくで押し潰すのも平和的ではないし、オークボ城のルールに則ってスマートに決めてくれたまえ。

まあ俺も、そのための策練りには参加しているのだがさ。

「御意、きっと今年も観客の皆様は大満足してくれるでしょう」

「彼らに頼らずともね」

俺とオークボは、悪役みたいな笑いをクックックと浮かべた。

さあ、今年のオークボ城本戦が始まるぞ。

* * *

観客席の様子はどうでしょう?

「今年はジャングラッソは出場しないのか?」

「残念ねー、あの人の捻り三回転岩回避見たかったのに……」

思ったよりプロ出場者の脱落を惜しむ声は上がっているようだ。

彼らの存在がオークボ城の盛り上がりに一役買っている……という言葉はまったくのウソではなかったようだな。

オークボ城本戦の内容は、第一回からほとんど変わり映えがない。

第一関門が平均台。

第二関門が転がっていく岩を避けて坂道を上がっていく。

第三関門が叩くと増える人造生命体ホムンクルスに捕まらず出口まで駆け抜けていく競技だ。

種目内容を変えない理由としては、参加者さんたちの努力を最大限に活かせるように。

種目が固定されているならば、その対処法も確立されて挑戦回数を重ねるごとにクリアの確率も上がる。

毎回別種目に変えると対処法が意味をなさず、完全なフィジカル勝負になる。そうなると生まれ持っての身体能力が大きく影響し、クリアできない人は永遠にクリアできなくなると思ったからだ。

やはり挑戦してくれるからには皆にクリアしてもらいたい。

もっともそうした配慮が、回を重ねるごとに経験者の有利さに繋がり、件のプロ出場者を生み出す土壌になったというのも否めない。

そういう道を選んでも簡単にはいかないな……!

本戦の場は、久々にフレッシュな顔ぶれとなっている。

プロ出場者が篩い落とされた分出場枠に余裕があり、若い出場者が数多く見知らぬ顔も目立つ。

何やら華やいだ雰囲気になってきた。

若いというのはそれだけでいいものだなあ。

「フン、若いだけが取り柄だ。それ以外に何の価値もない」

どこからか聞こえてくる辛口批評。

「技も未熟なら振る舞いも未熟。あんな稚拙さで客を沸かせるパフォーマンスなどできるはずがない」

「すぐにオレたちを追い出したことを後悔するさ」

どうやらオークバトラーに吹き飛ばされたプロ出場者たちが観客席で悪態をついているらしい。

しかし大きな声だ。

できるだけ多くの人たちに聞こえるように。自分らの立場を守るために必死なんだろう。

彼らの思惑通り、今年のオークボ城は未熟な参加者たちによってしらけて終わるかな?

そうしないように手は打ってあるがね。

「では本戦開始の前に、皆様にお知らせがあります!!」

またしてもオークボが主催役としてアナウンスに入る。

不器用朴訥だった彼があんな器用なことをこなせるとは、これも結婚による変化なのかなあ。

「今回オークボ城は、特別ゲストをお迎えいたしました! 大会を盛り上げるため、またゲストにオークボ城を知ってもらうために急遽決定しました! 来ていただいたのは……!」

壇に上がる壮観な若者。

「人間共和国初代大統領のリテセウス様です!!」

その紹介と共に大歓声が上がった。

リテセウスくんは、会場のどこからでも視線が届く位置にいて、溌剌と手を振っている。

その趣は勇壮で、もはや王者の風格を伺わせていた。

観衆は熱狂している。それもそうだろう、現れたのは現在時の人。新たに発足した人間国の主なのだから。

誰もが彼のことを噂し、実物を見たいと望んでいた。

そして今、その実物が現れた。

興奮もするだろう。

……実際のところリテセウスくんは去年も一昨年もオークボ城には参加しているんだけどな。

一般人として。

しかし所詮一般人だったんだから注目度は低かっただろう。

長くオークボ城を見守ってきたオークボ城フリークといえども、彼を初めて見たと思うはずだ。

今世界一番の注目度を誇るリテセウスくんの参戦に、それこそ会場は熱狂した。

たかだか三~四年程度、オークボ城という範囲内だけで名声を積み上げてきただけのプロ出場者たちの記憶など容易に吹き飛ぶ。

「では、オークボ城最初の難関『イライラ平均台』にリテセウス大統領がチャレンジします。皆さんご注目ください!」

言葉と共に視線が一点に集まる。

これだけの数の視線を一身に受けたら、凄まじいプレッシャーだろう。

しかしリテセウスくんは……いやリテセウス大統領は、その肩書きに相応しい注目も見事に耐えて、平均台へと足を踏み出す。

オークボ城名物『イライラ平均台』は、城郭の足元に掘られた空堀……それに渡された細い木の棒を伝って渡ろうという競技だ。

平均台……と言ってもいいぐらいに細い橋を渡るには絶妙なバランス感覚が必要で、とても全力ダッシュなどでは渡り切れない。

そんなことをすれば途中で足を踏み外してしまうだろう。

確実に渡りきるためには一歩一歩着実に踏みしめていかねばならない。

しかもこの『イライラ平均台』にはさらなる困難が待ちかまえていて、何とかバランスを取ろうと慎重に進む出場者へ向けて、砲弾が狙い撃ちされるのだ。

砲弾といってもクッションせいなので命中しても怪我しない。

それでも細い道の上で落ちるまいとバランスをとっている人には致命的な衝撃で、ヒットすれば間違いなくバランスを崩して落下。

それを防ぐには狙いを定められないように高スピードで駆け抜けるのがいいんだが、そうしたら足を踏み外す可能性が上がってしまう。

新調にゆっくり進むとクッション砲弾が当たってしまう。

ゆっくりもダメ、高スピードもダメという絶妙なバランスのゲーム。

そんな平均台を……リテセウス大統領は、全力疾走で駆ける!

「なんだってーッ!?」

まさかの全速!

それでもう観客の度肝はブチ抜きよ!

速いから当然クッション砲弾も狙いを定められない。

これだけでもリテセウスくんの勝利は確定的なのに、さらなるパフォーマンスを見せつけてきた!

何と平均台の上で前転した!?

その次は側転!? さらにはジャンプして捻りを加えて宙返り!?

まるで体操の選手みたいじゃないか!?

この『イライラ平均台』でここまでのパフォーマンスをしたのは今までいなかったぞ!

凄いぞリテセウスくん! これで観衆の視線はキミに釘付けだ!

これで難なく平均台を渡りきり、大統領としての威厳を見せつけるかと思いきや……。

「あッ?」

最後の一歩……というところでリテセウスくん、ぬるっと足を踏み外した。

「あーれー」

そして空堀へ真っ逆さま。

一番重要な一歩でしくじるとは。

やはりリテセウスくんも人の子。

恐ろしいまでのプレッシャーに身体がついてこれなかった模様。