軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

893 新しいオモチャづくり

俺です。

リテセウスくんの特別授業は思った以上の成果を上げてくれたものよ。

俺も最初はどうなることかとドギマギしたが、リテセウスくんにもリテセウスくんなりの考えがあった様子。

圧倒的な力を見せつけ、その上で人間共和国官僚としての高みを見せつければ生徒たちのやる気に火がつくと。

彼の計画通りだったのだろう、生徒たちの目の色が即座に変わった。

『いい刺激になったようですのう。さすが卒業生、後輩のやる気の引き出し方が上手い』

と先生もご満悦だ。

さすがにすぐさま連れていくことはなかったが、来年はここからの卒業生が何人正式に人間共和国官僚として採用されることやら。

未来に胸馳せるのもいいが、近々の話もしておこう。

ここ最近も外から押し寄せてくるエピソードが色々あったので、今回は内向きの日常的な話を……。

今度こそ大それた展開にならずに小さくたたみたい。

そんな願いを込めて進めていきます。

* * *

ここ最近さ。

ジュニアも大きくなってきた。

言葉もたくさん話せるようになってきたし、足腰もしっかりしている。

庭など駆け回って親としてはさらに心配が募るものだ。

第二子のノリトもすくすく大きくなってきているし、そろそろ彼も一言二言発する頃合いになってきたんじゃないか?

そう思うと、そろそろ今使ってるオモチャも替え時なんじゃないかなって思えてくる。

オモチャには対象年齢というものがある。

三歳には三歳の、五歳には五歳の、七歳には七歳に相応しいオモチャがあるってことだ。

時には対象年齢八歳に三十代四十代が夢中になることもあるが、それはまあ特例ということで。

知能が発達してきたジュニアのためにも、もっと知的なオモチャを提供してあげたいと思う親心。

そこで俺は、ここ最近色々と考えていた。

ジュニアの知性を真っ向から受け止める新しいオモチャはないか? と。

そこで浮かんだ一案……。

「……カードゲームとかどうだろう?」

カード。

手に収まる程度の適当な大きさの紙を何十枚と使って、独自のゲームを行う。

そのための遊具。

カード遊びの起源はエジプトだったりインドだったり中国だったりと諸説様々だが、それぐらいハッキリしない昔から遊ばれ続けているのがカード遊びということだろう。

その種類も数多くあり、世界中で行われてきた。

カルタや花札といった日本独自のカード遊びもあれば、ここ最近のドローに運命を託す系の、闇のゲームで精神を焼き尽くすヤツもある。

あとバイクに乗りながらゲームしたり……。

そういう上級者向けの応用編はいったん棚上げするとして……。

やっぱり最初にプレイするなら、すべてにおいてオーソドックスな源流的なカードゲームにすべきだなと思う。

いつかジュニアが、オーバーレイネットワークを構築するとしても。

まだ五歳の段階では、もっとオーソドックスな遊びに興じてほしいと思っている。

そこで目を付けたのが、こちら。

トランプ。

トランプこそカードゲームのもっとも基本にして源流と考えてよかろう。

いずれジュニアが自称キングになるとしても、その前に一番の基本を知っておいてもらいたい。

そのためにも今この時にトランプを作ってジュニアに遊んでいってもらうのだ!

というわけでトランプを作ります。

まあそれぞれ絵柄の違う五十四枚の紙の束を作ればいいだけだろ?

簡単簡単とは思ったが、これが実際作ろうとしてみたら案外に難しい。

まず何よりカードの紙質。

トランプって一応紙ではできているけれど材質が他の紙製品とはまったく違うじゃん。

使用上ペラペラじゃ話にならないし、柄がかすんだり劣化しないためにも防護処理が施されている。

ラミネート加工って言うのかな?

違う気もする。

それにトランプの絵柄って案外複雑だしな……。

数字の札はまだいいんだよ、スペードとかダイヤとかのマークを規則正しく配列すればいいだけなんだから。

絵札が難しい。

ただでさえクッソ複雑な模様。俺の記憶を頼りに再現するのも無理。そもそも全部覚えていない。

スペードのキングはあんな形で、ハートのキングはどうだった?

とか聞かれても答えようがない。

たしか斧持ってるキングもいたと思うけど、どのキングだった?

答えられねえ……!!

そもそもジャックって何?

キングは王様、クィーンはお妃。

じゃあジャックは王子様?

違う?

ジャックって何だよ?

ジャックがキングなのはさっきのネタに出てきたカードゲームでの話だろう!?

ジャックって何!?

豆の木? 切り裂き? ハンマー?

ジャックって何者!? ジャァアアアアアアアッックッッ!?

って取り乱すこともあった。

さらに厄介なのは裏側の柄。

これも地味に大変。

何故なら大抵のカードゲームは、カードを裏側に伏せて何なのかわからないようにしてあることでゲームが成立する。

そのためにもカードの裏側の柄はすべてまったく同じでないといかん。

ミリの違いもなくだよ。

そんなの手書きじゃ絶対無理。

こんなのどうすりゃいいねんと悩みうめいた末に、また新しい技術をいくらか生み出す破目になった。

まあ柄を揃えたりするのは、かつてエルフたちが開発した活版印刷でどうにかなるとしても。

あのカードらしいしっかりした紙質を作り出すのに随分苦労した。

あのツルツルした手触りを出すには一体どうしたらいいんだろう……!?

って。

紙自体は以前からゴブリンたちが昔ながらの方法で摺っていたんだが、そうすると和紙のような質感になってくるのだよなあ。

まあそれでもいいんだが。

ペラッペラでさえなければ何とかなるかと思って試行錯誤の結果、何とか出来上がった。

異世界トランプ(試作品)が!!

スペード十三枚、ハート十三枚、ダイヤ十三枚、クラブ十三枚。

それにジョーカー二枚を加えた計五十四枚のスターターデッキ!

これを使って早速ゲームを始めていきたいと思う!!

トランプにも色んな遊び方があるが……!!

俺が最初に選んだ記念すべきトランプゲームの種目は……!

ソリティア!!

…………。

解説しようソリティアとは。

トランプゲームの一種、で一人で遊べるゲームだ。

大体集中して何時間も潰してしまうんだよ。

さらに厄介なことにウインドウズに標準搭載されていてパソコンでも遊べちゃうんだよな。

気軽に立ち上げると帰ってこれなくなる。

他にパソコン使ってやることがいくらでもあるというのに、アレのお陰で何時間潰されたことかまったくわからない。

明日までにレポート提出させなきゃなのに……!

インストールしたばかりのゲームがPCの中に入っているのに……!

しかし何故かソリティアを延々としている!

早く寝なきゃなのに!!

なんで俺は延々とソリティアしてるの!?

ソリティアの何が俺をここまで引き込むの!?

……ってことをやってた時代を思い出した。

そして異世界でもまたソリティアをプレイしております。

ソリティア無間地獄。

って何故、俺は異世界まで来てソリティアしている!?

所詮一人遊びだろうがソリティアは!?

家族もできて、友だちもたくさんいる中でソリティアにのめり込む意味!?

……はあ、ヤバいソリティア。

孤独の最高の友だちソリティア。

家族を得て一人きりでなくなった今なお、俺を引き込もうとするのか孤独の世界に。

恐るべしソリティア。

異世界でトランプを作ってまず思い知るのは、際限なしに時間を浪費させるトランプ一人遊びの懐かしさであった……!