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作品タイトル不明

879 古代神の独白

我が名はクロノス。

この世界の生末この方を司る、真なる大神である。

本来ならば未来永劫……原初の過去にも亘ってこのクロノスこそが全世界を支配するはずだった。

しかし、その摂理は叶うことはなかった。

我が君臨に不満を持った母ガイアと、不遜なる息子ゼウスの共謀によって私は追い落とされ、大神の座を追われることとなった。

無論、黙って王座から退いたわけではない。

王者の交代には、それに見合った苛烈なる戦いが必要だ。

このクロノス率いる古きティターン神族が、ゼウス率いる新しきオリュンポス神族との間で繰り広げた空前絶後の戦いを『ティタノマキア』と呼んだ。

戦いの終結は我らの敗北。

ゼウスが手に入れた雷霆によってすべては焼き尽くされ、私につき従ってくれたティターン族の神々もあえなく敵の軍門に下った。

そして冥府よりもさらに奥、地の獄タルタロスへと幽閉されることと相成った。

タルタロスに押し込められたのは私だけではない。

私に従ったティターンの神々。

クレイオス、コイオス、アトラス、イペアトス、メノイティオス……。

他にも様々な古代の神々が虜囚の辱めを受けることとなった。

このような責め苦を受けるのもすべてはゼウスたちオリュンポス神族の非道ゆえ。

父なるこのクロノスに逆らい、力ずくで王座を奪おうなど誰から見ても弁護などできぬ悪事。

親殺しの悪逆はいつか己の身に返ってくることであろう。

いや、その前にこの大神クロノスが反逆の罪をヤツに問うことであろう。

今はただ、このタルタロスに閉じ込められて自由にならぬ身であれど、元が全知全能の大神たるクロノスだ。

いつの日かこの牢獄から抜け出し、神域回復の反攻戦争を引き起こしてくれよう。

支配者の座でのうのうとしていたオリュンポス神族どもは平和ボケして戦いも忘れていることだろうから、きっとかつての『ティタノマキア』の時とは真逆に、我らティターン神族の連戦連勝となることは間違いない。

勝利の暁には、今度はヤツらこそをタルタロスの奥底へと封じ込めて未来永劫這い出すことのできぬようにしてくれよう……!

ゼウスだけではなく、その兄弟のハデスやポセイドスどもも、地の底に押し込められる屈辱を味わうがいいわ!

『ハデスは元々地下に住んでいますから関係ないんでは?』

などと私の独り言にツッコミを入れてくるのはコイオス。

私と共にタルタロスへと幽閉されたティターン神族の同胞ではないか。

野暮なことを言うな!

ハデスがいるのは同じ地下でもタルタロスよりずっと上の冥界だろうがよ!

『ハデス殿下も変わった御方ですよねえ。我々を討ち取って地上を制覇しておきながら、それをわざわざ命ある者たちに明け渡して自分は地下に引っ込むなど。一体何を考えなのでしょうか?』

ハデスは、命を憐れむ心を持っているのだ、神にしては珍しくな。

あの神は、地母神の夫として命ある者の生と死を司る役割をえた。

だからこそ、終わりが決まっていながら始めてしまう者たちの切なさを知ることとなってしまった。

その厄介さは、ヤツと同じようなものを司っているこのクロノスにもわからぬではないものよ。

『はーん、新世代に駆逐された悪神が偉そうに』

口悪いなお前ッ。

その悪神と一緒に地の底へ落とされた存在だってことを忘れるなよ、お前もッ。

『まあ、その幽閉の憂き目にあったのだって、もはや年数も数え切れないほど昔のこと。幽閉された他の連中ももはやここでの暮らしに慣れきっております。今さら脱出など考えても無益なことでは?』

たッ、たしかにそうかもしれぬが……!?

そう問題は、いくら幽閉という屈辱の措置であっても、それが長い期間続いてしまったら、それが普通になってしまうということだ。

『住めば都』という言葉もある。

我々も幾千万年とタルタロスで過ごし続けた結果、ここでの生活に慣れきってしまって、年に一回恒例の『ティターン神族のど自慢大会』を開催する始末だ。

ティターン神族たちはタルタロスに慣れきって、もはや出ていこうとする気すら起こさない。

このまま未来永劫変わらぬ時間が過ぎていくのかなー? と思っていたら……。

グゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

と鳴動が起こったではないか唐突に!?

一体何事だ!? タルタロス全体が揺れている!?

その振動と共に頭上から降り注ぐ光と共に現れし女神は……。

『おひさー、久々に見た顔は辛気臭いわねー』

貴様はガイア!?

我が妻レアをそそのかしてゼウスを庇い立てしたヤツが、今さらどの面下げて!?

いや、このタルタロスにガイアが現れたということは……。

キツく何重にもわたって封印され、中からも外からも自由に出入り不可能なタルタロスに、外界にいるはずのガイアが現れたということは……!?

タルタロスの封印が解けたということか!?

『そういうことよー、いい加減アンタも反省できたと思ったから。また以前みたいに仲よくしてやろうと思ってね』

何をぬけぬけと!

ほとぼりが冷めたかだと!?(言ってない)。

ゼウスの若僧どもを操って、我らを追い落とした恨み忘れてないぞ! むしろこの地の底に封じられている間に恨みは増幅していた!!

間抜けにも貴様の方から封印を解いてくれたとは好都合!

今ここでガイアに報復し、その余勢を駆ってがら空きのタルタロスを這い出て憎き簒奪者……ゼウス、ポセイドス、ハデスの親不孝三兄弟もちゃぶ台返ししてくれるわ!!

『あらあら予想通りの反抗的な態度。永遠に等しい程度の長期間拘束されていたところで少しの反省の色もないというのは、さすが我が眷属といったところね』

貴様の血脈おしなべてたち悪いんだよ始祖神!

諸悪の根源であることを大いに自覚して、我が復讐のサターンアタックを食らえ!!

『うふふふふ……、アナタのようなバカ息子の行動を、この万象母神が予測できていないと思ったのかしら?』

な、何どういうこと!?

『こちとらとっくにアンタが武力行使に出てきた時の対策を整えているのよ。……聞こえてる聖者ちゃん? 見てのとおり残念な結果になっちゃったわ! 対処よろしく』

一体なんだ? 反撃しようとでも言うのか?

だとしたらバカな。

敗れたとはいえ、現役の支配者オリュンポス神族と互角の戦いを繰り広げた我らティターン神族に、一体いかなる抑止が利くというのか?

手っ取り早くゼウス、ポセイドス、ハデスの三バカでも揃えてきたか?

この大神クロノスに対抗できる存在など世界で唯一あの三神ぐらいしかいないだろうが、それでも精々能力は拮抗する程度のもの。

もう一度戦ってまた勝てるほど、この私も安い相手ではないぞ。

仮に負けるとしても激闘を繰り広げ、数千年にわたって地上を焼き尽くすことぐらいはしてやろうぞ!

いるのか!?

我らにそんな悪あがきもさせずに一方的に打ちのめせる最大強者など!?

『ではやっちゃってー』

『かしこまりなのだー。農場ドラゴンブレスぼえぇええええ……!』

ぎゃあああああああああああああああッッ!?

なんだなんだなんだ!?

突如現れた巨大生物の、口から吐き出される炎が熱くて痛い!?

我らティターン神族が一秒だって耐えきれないほど!?

なんなのだガイアよ!? そのトカゲか何かのような巨大な生物は!?

巨大なだけじゃなくてめっちゃ強くない!?

『この子はドラゴンといってアンタたちを封じたあとに創造した生物よ。ゼウスたちがアンタらみたいに暴走した時に抑えられるように力を与えておいたんだけど、世代交代しているうちに神を遥かに超える力を手に入れてね』

『神なんぞ一捻りなのだー、がっはっはっは』

笑う大トカゲ、もといドラゴン?

なんという怪物を作り上げたんだガイア母上は!? 神々を止めるためといっても、それ以上に強大な種族を作って、ソイツが暴走したらどうするつもりなんだ!?

『とはいってもドラゴンに対抗できる種族は他にもいるしねー』

え?

『そういうわけでよろしくね不死王さん』

『万象母神様の頼みであれば聞かぬわけにもいきませぬの。「死光気」全開!』

おんごぉおおおおおおッッ!?

今度は何!? なんだ!?

あの、死体みたいなのに独りでに動いているヤツから発せられる、得体のしれないオーラ的なものが、我らティターン神族を蹴散らしていくぅううッッ!?

『ワシも千年生きて、神々に直接力試しをしたのは初めてですのう。長く生きてもいい経験ができるのは嬉しいことですわい』

『神が生み出せし人類が、己の死を越えて最凶最悪の存在と成り果てたモノがノーライフキング。この先生は、その中でも群を抜いた実力者よ。そんじょそこらの神々じゃ太刀打ちできない程度にね』

人類にはもう既に、神を超えるモノを輩出するポテンシャルに達したってことか!?

『まだまだ行くわよー。今度はゼウスが地上制圧のために創り上げた戦闘生命。しかし独自の進化を遂げて今や神をも超える力を得た天使よ』

「行きます。納豆ハイメガマナカノンフルバースト」

うごネバネバするぅうううううッッ!?

『ポセイドスがバグらせて生み出された聖唱魔法を継承する人魚プラティちゃんよ』

「ぼげぇ~」

ぎゃああああッ!?

耳が、耳がぁあああああああッッ!?

どういうことなんだ!?

我々が地の底深くに封印されている間、世界では何が起こっていたのだ!?

我ら神々の力がまったくもって通用しない!?

人類はとうの昔に神を越えていたというのかああああああッッ!?