軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

871 視察の終わり、そして建国へ

「我が君どうでしたか? 冒険者の仕事は?」

「楽しかったけど、やっぱり俺には向いてないかなー? 農作業の方が性に合ってるかなー?」

自分で一から育てて成長を見守る喜びの方が俺には勝る。

冒険者の道は、それに適した他の誰かにお任せしよう。

「の……ノーライフキングを一瞬で消滅させるような猛者でも、冒険者に向いてない……!?」

そして、本日同行していた新人冒険者のヘリジェーヌさんは驚きのあまり足腰立たなくなったので帰りはウチのオークの一人に背負って運ばれている。

「これほどの強者が通用しないなんて、冒険者とはなんと恐ろしい世界なんだ……!? 私ごときではとても及ばない……!!」

しまった。

あまりにパワーを見せつけすぎて、自信喪失させてしまったか?

鼻っ柱をへし折ろうとは思ったが、これじゃあやりすぎて逆効果ではないか!?

せっかく冒険者の流入政策を推し進めているというのに魔王さんとシルバーウルフさんの失望する顔が目に浮かぶ。

「……いいや! こんなことでへこたれるか! 私は栄光ある魔王軍! 今でもまだ予備役!! その誇りを失わぬためにも冒険者の務めを果たして見せるぁあああああああッッ!!」

しかし復活した。

強い。

やはり数百年と人族軍をはね返し続けてきた魔族の軍人はお強いようだ。

こうして魔王軍を辞めたあとも誇りをもって、冒険者としての第二の人生を歩んでくれたらいいなと思った。

「さすが我が君……、見事不満を持った元魔王軍人を改心させましたな」

「いや、ただの偶然偶然。みずからを省みる心が彼女にあっただけだよ」

「それこそまさにシルバーウルフ様の思惑通り……」

「え?」

まさかここまで誰かの『計画通り』だったってこと?

そこでオークの一体が、俺には告げられなかった事実を明かす。

俺の冒険者職業体験を申し込んだとき、それらをすべて整えてくれたのはシルバーウルフさんだった。

S級冒険者にしてギルドマスターでもある彼の権力をアテにしてしまった。

その点非常に申し訳なく思っているんだが、実は彼にも彼なりの思惑があった?

この冒険者としての身分証引き渡しの際、俺に聞かれぬようにお供オークの一人に告げていたらしい。

――『魔族側にはまだ、冒険者や冒険者ギルドのことを快く思ってないヤツがいる』

――『つい何年前まで戦争していた敵国だし、お国の正規エリートである魔王軍にとっちゃあ冒険者はただのアウトロー。気持ちはわからんでもないがな』

――『しかし現状を放置していたら、冒険者ギルドは魔国という美味しい新規市場をいつまで経っても取り込めないし、あちらの都合で私たちを受け入れてくれた魔王さんを失望させることになる』

――『ここは何としてでも魔族側の意識を一手に覆す、大きな衝撃が必要だろう』

ってことで呼ばれたのが俺?

自慢じゃないがヒトを驚かすことに関してはそこそこのもんだと思っている俺。

その俺を送り込むことで、エリート意識に凝り固まった元魔王軍の方々を鼻っ柱をへし折り、一からの気持ちで冒険者として再スタートを切らせるようにしたと。

そこまで考えて俺を送り込んだのかシルバーウルフさん!?

だったら俺にも一言言ってくだされたらよかったのに!!

「いえ、我が君は演技が下手……あまりお上手ではないので、意識させると却って意図せぬ方向に行くかもしれぬから自然に任せた方がいいと……」

「今、下手って言ったのを言い直した!?」

そんな風に考えていたなんてシルバーウルフさん!!

しかし、そこまで深いお考えの下によろず諸々を動かすのはさすがギルドマスターの貫禄。

彼も伊達にクローニンズの一人ではなかった!

「ささ我が君、用件も済んだことですし戻って最優先の案件を勧めましょう」

「そうだな」

エルフの森に、お茶格闘、そして冒険者の魔国進出。

色々なプロジェクトの途中経過を見届けて、その集大成というべき人間共和国の設立を見届けることにしよう。

こうしている間も代表に祭り上げられた……もとい抜擢されたリテセウスくんを中心に、領主ダルキッシュさんなども協力して建国式典の準備が着々と進んでいるはず。

式本番には俺も駆けつけて、歴史的瞬間を見届けなければな!

「……我が君、もしかして……」

「さあ、駆けつけるか人間国に!!」

「式典準備のあれやこれや大変なことで泣きつかれるのが嫌で、こうして外を回って逃げていたとか?」

「さあ、行こうか人間国に!!」

けっしてそんなことはない!

下手にあっちの建国準備に関わって、重要な役職に就かされそうになったらヤダなとか、そんなことを思ったりはけっしてない!!

だから話がまとまるまでは所在を明らかにせず、話を聞くこともできないようにしたとか、そんなことはない!

けっして!!

* * *

そして、ついに建国式典の日がやってきた。

式典の会場は、旧人間国の王城。

かつて腐敗に塗れた政治の中心地としていい印象のない場所でもあったが、やはり元来の首都だけあって様々な地的利点がある。

それに贅を凝らして建設された王城はそれ相応に規模も大きく頑強で、何かしらの施設を置くには絶好の建物。

これから人間共和国が本格的に統治を始める際、政庁としてこれほど打ってつけの建物はなかろう。

かつての魔王軍占領府もこの城を拠点として使っていたし。

負の記憶を受け継ごうとも、既にある物を引き継いで使えば節約にはなる。

新しい政庁の建設のために莫大な費用が掛かるなら、今はその金銭を他の施策のために使った方がいいという判断だろう。

俺もそれに賛成するし、そうした判断ができる以上はリテセウスくんの新政権は上手くいくだろうと思った。

「しかし……こんな形でまた来ることになろうとはな……」

実はこの王城という場所は俺にとっても感慨深い。

何しろ異世界に召喚されて現れた最初の地がここだったのだから。

あの時はそれこそ戦争中。

魔族を蹴散らすための戦力として異世界から召喚される勇者を王族体は求めていた。

そうして召喚された一人が俺で、ここ王城でビュンて呼び出されたわけだ。

あのまま言われるままに勇者となって戦っていたら今日まで生きてこられたか……。

そしてこの王城へ戻ってくることは二度とないとも思っていたし、仮に戻るとしてもきっと波乱を伴ってのことだろうと後ろ向きな覚悟をしていた。

それが、こんな喜ばしい日にお呼ばれすることになるとは……。

感慨を禁じえぬ。

「……そういえば農場へ始めていく前にいったん集められた場所がここだったなあ……」

「ん?」

「あの時は、自分がこんな風になるなんて思っていなかったなあ」

感慨にふけっている人がもう一名。

リテセウスくんではないか。

本日の主役。

まさか同じ場所で、同じように感慨しやがる者と鉢合わせようとは。

さすが生来のラノベ主人公体質、リテセウスくん!

彼の生涯はまさに今立志伝そのもの!!

「……あ、聖者様ご無沙汰しています!」

「最近会ってなかったからねえ」

エルフの森やらあちこち回っていたからねえ。

ふふふ。

「最初は僕なんかに国の代表なんか務まらないと思ってたんですが……。ダルキッシュ様たちに諭されて、やってみようという気持ちになりました。……僕なんかでお役に立てるなら!」

そうだな。

ダルキッシュさんたちも必死で説得しただろうよ。ここでしくじれば自分たちにお鉢が回りかねないから。

「その若さが赴くままにガムシャラに頑張りたまえ。俺の及ぶことなら力を貸すから!」

「ハイ! 聖者様には人間共和国の運営に携わるために、究極万能大臣に就任していただこうと皆で話し合っていました!」

何そのチートすら生ぬるい感じの役職名?

ヤバい、推測通り俺のことをガッツリ国政に取り込むつもり満々だった。

各地の発展ぶりを視察する体で逃げ回っておいてよかった!!

「さすがに聖者様ご本人がおられないところで決められないので、式典が終わったらすぐ会議に出席していただけませんか」

「あー! 長いこと留守にしてたから畑の様子を見に行かないとなー! 今日も忙しいなあー!」

それではここで失礼するよ大統領!

式典では演説とかもあることだろうが頑張ってね! シュタッ!!

「聖者殿」

「おッ、魔王さんもいらしてましたか」

逃げた先でさらに鉢合わせしたのは魔国の王、魔王さん。

他国の首席なのだから賓客としてお呼ばれするのも当然か。

「かつて宿敵の本拠地であったこの城に、このような形で訪れることになろうとは。人の生とは面白きものです」

この人も感慨に耽っていた。

訪問する人それぞれに感慨を引き起こす結界でも張ってあるんだろうか、この城は?

「とにかくこの国はもはや魔国の数百年来の敵ではなく、隣人の友として始まっていく。その瞬間に立ち会えることは魔王としてとても光栄なること。聖者殿も共に今日の喜びを分かち合おうぞ!」

「そっすねぇー」

魔王さんも感動の人間共和国建国式典。

まもなく始まります。