軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

863 エルフの森復活

俺です。

共和国設立おめでとう。

一番の問題だった新しい代表者も決まり、ついでに逃亡中の戦犯も捕まえて懸念も一切払しょくできた。

人間国が新たに再生し、スタートは目前へと迫っている。

なのでその前に、俺は一旦これまでの人間国を振り返ってみたいと思った。

俺自身、この人間国で色々な企画を立案し、押し進め、あるいは投げっぱなしにして久しかったりもする。

そういう投げっぱなし企画が今、どんな状態になっているかを確認するのに非常にいいタイミングだと思うんだ、今は。

そこで機会を活かして、様々見返してみようと思う。

そこでまず思い当たったのが、エルフの森。

あちらは今植林作業の真っ最中のはずだ。かつては人族が濫用した魔法のせいで大地の活力がなくなり、そのせいで草木も枯れ……。

そうした影響をもろ被りにして大迷惑をこうむったのがエルフたちだった。

エルフは森と共に暮らしていく種族。

だからこそ森が枯れて面積が少なくなっていくのは大問題。

生活空間が削り取られ、棲み処を追われたエルフたちが盗賊に身をやつして人魔両族に被害を与えるといった新しい問題まで発生した。

しかし現在では戦争も終結し、問題の魔法を使う人間国の旧権力者勢力も滅びて土地は活力を取り戻している。

そこで……ということで荒れ切ったエルフの森を復活運動がスタート。

主な活動としては、草木が枯れて裸となった土地に新たに木を植え直す、植林活動が進められた。

樹木の成長はゆっくりじっくり……。

人の感覚からすればかなり気の長い話になるが、何百何千年と続いていく森の再生とはそれぐらいのスパンが必要なんだろう。

しかしそんな植林作業も、だいぶ年月が経ってきた。

それこそ年単位で。

主に作業を進めているのは地元のエルフたちだが、彼女はいったいどれほどのエルフの土地を再生できたのだろうか?

大いなる興味をもって視察に出かけようぞ!!

* * *

そして現地へと到来いたしました。

集まれエルフの森。

まず俺を出迎えたのは、エルフ族のエルザリエルさんだった。

「久しぶりだな。随分顔を見せぬから我らのことなど忘れたかと思ったぞ」

しっかり皮肉の針を刺された。

まあ、それはそれとして今日は案内よろしくお願いします。

「お前が知らぬふりをしている間も、植林作業はガンガンつき進めさせてもらっていた。何せエルフ族は根が勤勉なのだから」

「それはよく知っていますというか……」

エルフたちが凝り性で、一度のめり込むとなかなか歯止めが効かないということを。

一番の実例は、俺の農場に住んでいるエルフたちだからなあ。

皿だの像だの鞄だの、作り始めたらノンストップなんだわ。

あの没頭具合は俺も見習いたいほどで、それらモノ作りで得た報酬からこの植林作業の資金も出ている。

「んでんでんで……、その成果はいかほどのものなんでしょうね? エルロンたちの稼ぎが実を結んでいたらよいのですが……」

「当然よ、目の当たりにして腰を抜かすといい」

そう言ってエルザリエルさん、俺に目隠しをする。

何も見えない。

これはもしや、サプライズイベントの一旦?

目隠しを外した途端、ビックリ風景が視界いっぱいに……みたいな?

そう見せかけて谷底にドンッ、とかありませんよね!?

期待と不安にもみくちゃされながら、手を引かれるまま歩いていき……。

ザッ、ザッ、草を踏む感触が足の裏に伝わる。

「よし着いたぞ、目隠しを外せ」

視界を封じられてエルザリエルさんに連れ回されるとなおさら処刑台に向かっているイメージが強い。

かなり絶望が強くなった際に目隠しを外してみたら……。

「おお……!?」

視界いっぱいの緑が広がっていた。

森だ。

森が広がっているではないか!?

右を向く、森。

左を向く、森。

見渡す限りの青い森!

広大じゃないか!

上を向く、空!

そりゃそうか……。

下を向く、小高い丘!

そうか、森全体を俯瞰して見渡せるように一段高いところへ連れてきてくれたのか……!?

お陰でこんなに見晴らしのいい……。

しかしこんなに景色がいいのも、眼下のすべてを濃い緑が覆っているから。

森は広い。広いがまでに広がっている……!?

「完全復活してるじゃないか、森……!」

かつて見た風景を思い出す。

植林作業を始める前のエルフの森は、森などとはとても呼べない寂寥の荒野だった。

土肌剥き出しで、生えているものといえば真っ白になるまで枯れ果てた長草程度のものだった。

その荒涼さといったら、まさに『死の大地』という言葉がピッタリ。

もう二度と生命など戻ってこないかと思われた平地に、よくぞここまで生き生きとした緑が……!!

「これもすべてエルザリエルさんが……!?」

「私一人の力ではない。多くの者どもが協力してくれた」

それでも感慨深さを禁じえずエルザリエルさんは震えていた。

「資金はエルロンどもが潤沢に用意してくれたし、駐屯していた魔王軍からもいくばくかの義援金が提供された。それだけでなく人手も出してくれてな、人族の有志も手伝ってくれて、想定より……ずっと大きく進んだ」

まずは整地された苗木畑で苗木を育て、ある程度育った苗木を掘り出して植え替える。

それを繰り返して森を広げていく。

そんな作業をエルザリエルさんは地道に続けてきた。

「お前のとこの奥方が提供してくれる肥料のお陰で、苗木もぐんぐん育っていくしな。本当なら何倍も時間がかかるのだろう。ここまで広い範囲の緑化を成し遂げるのは」

もはや見渡す限りが緑一色の森。

エルフの森は完全復活したと言っても過言ではない。

「もう二度と見ることのできぬと思うていた豊かなエルフの森が、現実に現れた。これほど長生きしてよかったことはないのう」

「エルエルエルエルシー様」

新たに現れたのは、人間国のエルフの森の長。

ハイエルフのエルエルエルエルシーさん。

略してL4Cさん。

この世界のエルフとしては珍しい磁器のような白肌、そして少女と見紛うあどけない容姿が特徴だ。

「この森を統べる長として、わらわからも礼を言うぞ。一時は森と共に滅びることも覚悟しておったのだがのう。我らハイエルフは、清らかな森の中でしか生きられぬゆえ」

「エルフの上位種であるハイエルフは、森の清らかなマナを取り込んで超常的な能力を扱える半面、森の外では生きられなくなりますからね。濁ったマナは体の毒になりますので」

そんなL4Cさんも、かつて森も枯れ果てて消滅寸前の頃は鳥かごの中にいる気分だっただろうに、今は無限に広がるフィールドをどこまでも駆けて行ける。

拡大された森は、お隣魔国側にあるもう一つのエルフの森とも繋がって、徒歩にて行き来もできるようになったとか。

「すべてはぬしのお陰じゃ。元来我らエルフは排他的で、他種族の話など聞く耳もたぬが、今回ばかりは話に乗って本当によかったぞ」

「いいえL4C様! すべては植林作業を直接行った私の手柄! この者の功績など微々たるものです!」

おいエルザリエルさんよ。

仮に真実そうだとしても、そこはまずヒトを褒め称えるのが常道ではないのか?

「まあ、外から見ただけではこの偉業の素晴らしさも理解できまいエルザリエルよ。聖者を森の中へ案内してやるがよい」

「御意!」

へえ、そんなに詳しく見させてくれるんですか。

至れり尽くせりだけど、こんな富士の樹海級に大きい森の中を案内されて、一日二日で見終われるのかな?

「植林作業には様々な種類の木を植えた。とにかく森の面積を広げることを念頭ん強いて片っ端からだな。そうやって行き当たりばったりでやっていくうちに植えた木によって様々なエリアができてしまった」

行き当たりばったり。

なんと不穏さを感じさせる言葉。

「たとえば、ここなどは杉エリアだな。聖者のところから提供された杉はもっとも育てやすく植林作業もしやすかった」

結局植えたのか……杉……!?

大丈夫だろうか、花粉……。様々な問題が解決したこの世界に、新たなる災いが襲来したりしない?

「向こうのエリアには茶ノ木が植えてある。冬明けの頃にはエルフたちによって新茶が摘まれることであろう」

エルフたちのお茶好きが本物になっている……!?

「その他にも松エリア、白樺エリア、竹林エリアなど様々な領域が枝分かれしている。……森だけに」

「ほうほう?」

「そこで、新しい争いが繰り広げられている」

はい?