軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

858 勇者参上

リテセウスくん、プレジデントファイトに参戦!!

「あのヘンテコな見てくれの人たちが悪いヤツなんですね! 任せてください全員僕がやっつけます!!」

「凄いぞリテセウスくん! 頼れるヒーロー!!」

教皇が引き連れてきた異界の勇者たちは四~五人はいる。

俺のアドバイスもあって参加手続きを済ませた異形の者たちは一様ににやにやと侮った笑いを浮かべていた。

彼らのうち一人でも優勝を許せば、教皇が大統領となって人間国は再び災難に見舞われることだろう。

「ぐっふっふ……! 余が王となったらすぐに聖王軍を組織し、魔王軍への反攻を始めようぞ……! この教皇を苦しめた罪を、魔族を皆殺しにすることで償わせてくれるぞ……!」

権力を持たせちゃいけない人物ということは、まざまざとわかる。

コイツの野望を阻止するためにも、リテセウスくんには頑張ってもらわねばな。

「それでは聖者様! 僕戦ってきます! 農業卒業生の意地を見せつけてきますね!!」

「何も心配してないよー」

リテセウスくんは早速あの宇宙人勇者のうちの一人と戦う。

二人この人ために設えられた闘技場に上り、向かい合う。

対する宇宙人勇者の一人は、あの全身の肌の色が鮮やかなルビーレッドの人だった。

何度見ても蛍光色で明るく、目がチカチカする。

「きゃふぇふぇふぇふぇふぇ……、ヒョロッちい小僧だなあ。いたぶり甲斐がないぜ」

残忍な笑みを漏らす対戦相手は、どう見ても三下のザコ敵で勇者というべき勇敢さは欠片も見当たらない。

「せっかく勇者として呼ばれたっていうのに勝手に負けて逃亡生活ってのは詰まらねえからなあ。また戦争が始まって何人もぶっ殺せるなら大歓迎だぜぇ」

「ゆけぇ勇者ポンポンチントケよ! 聖なる使命を遂行し、余の正当なる権利を取り戻すのだぁ!!」

教皇も、頭に矢が刺さったまま大興奮。

「試合開始!!」

合図と共に、宇宙人勇者の身体が光り輝く。

まるでエネルギーを放出するかのように。

「オレのスキルは、フォースを直接攻撃能力に変えることだぜ!! この能力で素手でも武器持ちに引けは取らねえ! お前もすぐにボコボコの血だるまにしてやるぜ!!」

「よろしくお願いいたします」

リテセウスくんは一礼すると光になった。

『よっしゃ戦うぞ!』と思わせる暇もない。対戦相手にも見守る観客にも反応させず、超高速で接近すると鉄拳一発。

「おんごはべぇッ!!」

なんかオーラ的なもので強化されていても関係ない。

教皇配下の勇者一番手、陥没した顔面から緑色の血を撒き散らしつつ宙を舞った。

そして闘技場の外へ墜落。

殴り飛ばされた対戦相手は完全に気絶したのかビクンビクンと痙攣するだけで、うめき声の一つも上げなかった。

「対戦者気絶により……勝者リテセウス」

「うげぇえええッッ!? 何をやっているバカ者ぉおおおおおッッ!! 教皇復権の大チャンスをぉおおおおッッ!!」

一人目が速攻で敗退し、勇者の裏にいる教皇様がご立腹。

「ええいゴミめ! あんなクズを今日まで従えてきたのは余の見込み違いであったわ! しかし次は違うぞ! さあ勇者ポケポケミハリィよ! 神より授けられしスキルの偉大さを見せつけてやるのじゃあッ!!」

「いいだろう。オレ様はポンポンチントケの五倍は強いということを見せつけ……きんてはぁッッ!?」

またすぐ勝負はついた。

二人目の教皇派勇者、リテセウスくんの速攻にまったく反応できず一発殴られて終わり。

一戦目とまるで同じ試合内容。

『強者にとってあまりにも実力差の開いた相手との戦いは作業と化す』ということばの、まさに実証だった。

そう、いかに異世界から召喚され、神から強力なスキルを授かっていようとも彼らにリテセウスくんを倒せる道理はない。

リテセウスくんは、農場で様々に学んで鍛えた経験もさることながら、その体に流れる神の血が先祖返りによって一層濃く発現し、半神と呼べるほどの特別な存在であるからだ。

神話に語られるほど太古の昔に神々は、今よりもっと放埓に地上へと降りてきては人類との自由恋愛を楽しみ、無責任に何人も孕ませたり孕ませられたりしたという。

そうやって生まれた人と神とのハーフは当然のように常人とは比べ物にならない力を発揮して、伝説に名を遺すような偉業を成し遂げるのだという。

そういう者たちをこそ、昔は勇者と呼ばれていた。

今の時代、異世界から召喚されたスキル持ちのことを勇者と呼ぶようになったのは、そうした神と人とのハーフが地上より去ってから。

リテセウスくんはいわば現代に甦った原始勇者。

紛い物……というのは言い過ぎかもしれないが明らかに原初の勇者の代用品として求められた召喚勇者では格が違いすぎるのだった。

「ふわわわわわ……!? どうしてだ? 我が教会の誇る勇者たちが、あんなひょろ長い小僧ごときに……!?」

ついに状況を悟ってきたのか、教皇は動揺に振るえ、頭に刺さった矢もみょいんみょいん揺れる。

こうなっては、いくらまだまだ教皇側の勇者が残っていると言っても結果は出ただろう。

月並みに『ヤツは勇者の中で最弱……』とか言っても最強最弱の間でそれほどの差はあるまい。

そしてそれらは数百倍の実力差を誇るリテセウスくんから見ればどんぐりの背比べでしかないのだ。

「この辺で終わりにしましょう。もうヒト様に迷惑をかけるようなことはやめてくださいね」

諭すように言うリテセウスくん。

しかしながら、そうした真摯な声が伝わらない相手もいる。

「勇者の中でもザコ同然のヤツらを倒しただけで、もう勝ったつもりか?」

これがまたテンプレ通りの発言をなさる。

「ポンポンチントケもポケポケミハリィも所詮は露払い。教皇直参にて最強であるこの勇者ピヨピヨムテッチィ様の方が二十倍は強い。小僧、調子に乗ると必要のないケガまで負うってことを実地でわからせてやろう」

「よろしくお願いします」

ペコリと頭を下げるリテセウスくん。

……ここまでの流れでお気づきの方もいるであろうが、このプレジデントファイト。

実はリテセウスくんと教皇派勇者としか戦っていない。

そもそも新人間共和国の大統領を決めるよりも旧悪排除の方が急務なので、トーナメントとかやっているように見せかけて、まずはリテセウスくんに瞬殺をお願いしているところだった。

まあ彼なら五タテ十タテも容易いことだろう。

今回リテセウスくんと対峙する最強(自称)勇者は、教皇を取り巻いていた一人、金属のような皮膚をした男だった。

金属人間はニヤリと笑う。

「まず最初にオレが何者か説明してやろう。文明の遅れたこの世界ではオレの素晴らしさを理解するのに知識が追い付かなくなるのでな」

「はあ……」

「オレはメタル星人。第四十七銀河連邦に属する星系人の中でも特に戦闘能力に秀でた種族と言われている。その理由はこれだ」

対戦相手がその場に立ったまま、素早く腕を振り下ろす。

それだけで彼の足元の地面がパックリと裂けた。振り下ろされた彼の手はブレードのように鋭く伸びていた。

「流体金属の特性を併せ持ったメタル星人の肉体は、自分の意思に合わせて体の形態を変えられる、金属の特性を利用して固く鋭く整え直すことができるんだ。メタル星人は誰もが全身刃物。防御力も金属並みで白兵戦になればまともにやり合える者は少ない」

やはり勇者召喚というのは特定の一異世界からのみ呼び寄せるんではなく、数多くある色んな異世界から召喚してくるんだな。

あの金属人間はそれこそどこぞ遥かな銀河系にいたのを召喚された宇宙人なんだろう。

宇宙人として生来備わった能力があの流体金属の身体……。

それが何を意味するかというと……。

勇者が異世界へ渡ってくるとき必ず与えられるスキルとは、また別の話ということだ。

「はーっはっはっは! この世界の神がオレに与えたスキルは『斬切』!! この体に切断の特性を付加させる! オレのメタル星人としての特性に相性抜群! この能力の噛み合わせで、戦場でオレに斬れなかったものは今までない!!」

元々の肉体的な強さに、スキルの性能までが加わる。

他の召喚勇者と一線を画する理由がここにあった。

「お前も一瞬で真っ二つにしてやろう!! そしてあのアホ教皇を国王にしてやり、再び戦争を起こす!! そうして敵を百人でも千人でも斬り刻んでやるわ!! アハハハハハハハ楽しみだな! ぐぼえッ!?」

そしてすぐさま決着はついた。

結局、前振りが長いだけで流れは前二戦とまったく同じ。

顔面グーパンで一撃OK。

いかに全身金属で硬かろうと。全身刃物で鋭かろうと。

農場で鍛えに鍛えたリテセウスくんのスピードと打撃力には何の意味もなさなかった。

その点は前二人の敗北勇者と変わりなかったのだ。

あの金属人間も、みずからに与えられた特質を二つも持ってその分、優位だったのだろう。

しかしそこに驕って何も鍛えないでいるならば……。

遥かに優れた才能をもって、それを余さず鍛え抜いた勇者リテセウスに敵うわけがない。

あの金属人間が最強であることは事実なんだろう。

教皇と、まだ残っている未戦闘勇者たちは今度こそ目を見開き驚愕に打ち震えた。

「……ピヨピヨムテッチィが負けた……!?」

「ダメだ……! もうダメだ、オレたち全員殺される!?」

「ここにいたらダメだ! やっぱり戦争なんて夢なんだよ!! オレは命があった方が断然いい!!」

「田舎で土いじりでもして静かに暮らすぜ!!」

次から次へと逃亡する異世界勇者たちに、最後に一人残されるのは教皇だけだった。

「なッ!? お前たちどこへ行く!? 余を守れ! 勇者なら守れぇええええッッ!!」

哀れ見捨てられる教皇。

ここに復権を目指した彼の大望は、虚しく妄想として結末を迎えるのだった。