軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

85 春亀

「ここが二合目……?」

第二エリアってわけか?

しかし何か変わり映えがあるわけじゃない。

周囲の木々の種類が変わったということもなく、気候も同じ。遠くから伝わってくる気配も……。

……若干ピリピリしてる?

「聖者様……、お気を付けください」

と言うのはダンジョン攻略組に名を連ねる人魚ランプアイ。

元々はお城で兵士をしていたとかで戦闘力も高く、今回のイベントでは頼りになるだろうと期待している。

「この気配。間違いなく強力なモンスターが近くにいます」

だろうね。

俺ですら如実に感じるくらいだから、何かいるのはたしかだろう。

いよいよこれから本番かと皆、気持ちが引き締まる。

改めてダンジョン攻略メンバーは、俺を初めにプラティ、人魚代表ランプアイと魔族代表ベレナ。それにオークとゴブリンが一班ずつ。

リーダーはオークボとゴブ吉だ。

この一団で固まり、前後左右隙なく警戒しながら進む。

するとすぐに出てきた。

正面から何かが。

やたら高速回転する何かが高速で飛来してくる!?

「なんだあれは!? 危ねえ!?」

高速回転する物体は、人が持つ盾程度の大きさだろうか?

詳しい形は回転のために判別しづらいが、平べったい円形のようだった。

だからこそ景気よく回転しやすい形状と言うべきか。

「もしやUFO!?」

俺が飛行物体を見て率直にもった印象がそれ。

未確認飛行物体。

まあ真実は違うだろうけれど。

しかもUFOモドキは超硬いようだ。高速回転で進む中、進路を邪魔する木々が次々薙ぎ倒されていく。

「あんなのに正面衝突したら無事じゃ済まんぞ!?」

少なくとも骨折ぐらいで何とかなる様子じゃない。

その恐怖の回転物体が、意思があるかのようにこちらへ向かってくる!?

しかも一つならず! 四、五個はあるか!?

あれ明らかに俺たちのこと認識している!?

「全員! 迎撃ーッ!?」

真っ先に動いたのは『獄炎の魔女』の異名を持つ人魚ランプアイ。

お手玉大の革袋を取り出すと、何かいかにも安全装置っぽいピンを引き抜いて……。

「いち……、にい……、さん……!」

投げ放った!

迫りくる回転物体とちょうど接触するか否かの絶妙のタイミングで、革袋は激しく爆発、大炎上する。

「うはあああああああッッ!?」

爆炎の激しさにむしろ俺がビックリした。

あの革袋の中には、ランプアイ自慢の爆炎魔法薬が詰め込まれてきたのだ。

炎の熱さにビビったのか、回転物体は速度を落として其処彼処に不時着する。

回転がなくなって、ようやくソイツの正体が分かった。

亀だ。

亀の甲羅が高速回転して、それこそUFOのごとく飛んで俺たちを襲ってきたのだ!

『見たか! これこそ二合目の目玉モンスター! その名もロータスだ!!』

またヴィール放送がどこからか響いてくる。

『亀型モンスターであるロータスの甲羅は、モンスターの中でも上位の硬さを持つ! その特性を活かして猛スピードで突進してくるのが得意なヤツだ!!』

喜々として語りやがって。

「たしかに……、わたくしのオリジナルレシピ爆炎魔法薬をまともに食らって傷一つないというのは脅威です。自信を傷つけられますね……!」

ランプアイが呻くように言った。

唇を噛んで、本当に悔しそうだ。

「しかし回転を止めればこっちのものだ。……オーク班!」

俺は呼びかける。

「お前たちの巨体で亀の上にのしかかって抑え込め! 動きさえ止めてしまえばこっちのものだ!!」

俺の指示を即座に実行し、オークボ始めオーク班は、地面に落ちた亀の甲羅にのしかかった。

これでもう動けまい、あとは煮るなり焼くなり好きに……!

……と思ったら、甲羅の四隅にある穴から何か出てきた。

あれは亀という生物の構造的に、手足や頭が出てくる穴だよな?

亀は、危機に襲われると手足や頭を甲羅の中に引っ込めて身を守るのだ。

その手足が出てくる穴だよな?

と思っていたら、その穴から出てきたのは亀の手足じゃなかった。

触手?

ミミズのような質感の、長くて太い触手が、本来亀の手足が出てくるはずの甲羅の穴から一つならず這い出てきた!?

「気持ち悪いいいいいいいいいいいいッッ!?」

触手は、甲羅の上にのしかかっているオークボたちに巻きつき引きずり下ろそうとしている!?

危ない! やらせるな!

ゴブ吉! プラティやランプアイ!

オークボたちを援護してあの触手を切り落とすんだ! 甲羅は硬くても、あの触手は柔らかそうだし攻撃が通じるはずだ!!

「聖者様! 大変です!!」

周囲に気を配っていたランプアイが逼迫した声で言った。

「新手です!!」

回転飛翔亀ロータスが、ギュルギュルと回転音を上げながら迫ってきていた。

新たに六体ほど!?

俺たちは、最初に出てきたヤツらにかかりきりで対応できそうにないぞ!?

「新手は俺が引き受ける! 皆は最初のヤツらを着実に殺していってくれ!」

抜き放つ邪聖剣ドライシュバルツ。

なんか久々に武器として扱う気がする。

ここ最近の魔王さん結婚騒動でそのルーツがわかった聖剣だが、コイツは場合によっては人族をまるっと滅亡させられる程度の力を秘めているのだそうだ。

本来ならば同族の聖剣をすべて滅ぼし、その力を吸収することでポテンシャルを全開放できるそうなのだが、『至高の担い手』を持つ俺ならただ手にするだけでそれが可能。

「やっとう」

迫りくる新手ロータスの軌道に合わせて刃を送り込むだけで、飛行亀たちはすべて真っ二つになった。

「「「「すげえええええええええッッ!?」」」」

皆驚いてくれたが、凄くないよ。

すべてはヘパイストスさんが贈ってくれた力のお陰だよ。

最初に出てきたヤツも、オークボやゴブ吉たちが丹念に触手を切り落とすと、それで生命力を失ったのか動かなくなってしまった。

「……何とか収まったな」

回転飛翔亀ロータス撃退成功。

俺たちはヴィールの用意した第一関門をクリアすることができた。