軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

808 妻・乱入

はい俺です。

ついに始まるオークボ城特別企画、大相撲大会。

人魔魚……三種族大混合で行われる本大会は、今までで最大規模。

既に大規模イベントとして不動の地位を確保しているオークボ城に便乗したような形だ。

そうしてでも相撲を全国展開していきたいというアロワナさんの意気込みが窺える。

……いや、陸と海の人類の交流を深めていきたいという思いもあるんだろうけれど。

それがメインだと思いたいんだけども!!

とにかくメインイベントを終えてもこっちにたくさんの参加者&観客が集まってきてくれて開催側としてはホッと一息だ。

俺?

俺は今回運営として裏方に回るよ。

いやー、残念だなー。

相撲選手として参加できなくて本当に残念だなー。

ということで。

いつものようにトーナメント制で行われること相撲大会。

闘って、闘って、闘い抜いて……。

最後の一人が残るまで闘い続ける。修羅のいくさとなっております。

大相撲ファイト、レディゴーだ。

海の側からは当然のように言い出しっぺの人魚王アロワナさんと、そのアロワナさんに王位を譲りながら今なお意気軒高、現役の猛きを窺わせる先代人魚王ナーガスさん。

それら新旧人魚王に付き添う形で腹心ヘンドラーくぅんやシャーク将軍も参戦。

対して魔族側からも魔王ゼダンさんと、その忠実な家臣……魔国宰相ルキフ・フォカレさんや四天王マモルさんなどが参戦している。

……うむ。

まあ、わかっていたことだが男臭くてムンムン来るな。

相撲大会が女人禁制の男子オンリーな大会である以上致し方のないことではあるのだが……。

ここ一帯だけ湿度が高いな。何だか深呼吸したくない。

あと人族側からはダルキッシュさんを初めとした人間国領主さんたちも参加している。

共和国発足でクソ忙しい最中だろうに本当にお疲れ様です。

男性のみの参加ということで、レタスレートも参加できたら女子スモウレスラーとして連戦連勝を決めてたろうのをそういうわけにもいかず。

これから始まっていく人間共和国の威信をかけて好成績を目指さんとする領主の方々お疲れ様です。

そして、もう一人……。

それら人魔魚の三大勢力のどこにも属さないところから現れる究極の注目株。

我らがオークボだ。

このイベントがオークボ城の一部であるだけに彼の出場は『当然だろ?』ぐらいに思われていた。

天下のオークボ城である。

その地で行われる男の闘いに城主オークボが参戦しないわけがない。

ということでオークボにもご足労いただいたんだが……。

「何か悪いね……! 新婚中だってのに……!」

そう俺は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

だってオークボはまだ今年結婚したばかりのバリバリ新婚さん。

そんな新婚を二人の愛の巣から引っ張り出そうなんて何という大罪か。

同じ時期に結婚したゴブ吉などは『カープたんとイチャイチャした~い♥♥』と言って今回欠席しているのに。

オークボだってイチャイチャしたいところを無理言って本当に悪かったな!!

メンゴメンゴ!

「お気になさらず……!! 我が君の天命に応えんが臣下たる私の存在意義ですので……!!」

……。

オークボくん? なんかキミいつもと感じ違わなくありません?

「違いませんぞ……!! 私はいつでも常在戦場。勇気凛凛、虎視眈々。我が君の剣となり盾となって、障害を打ち砕きまっすぐ進む。それがこのオークボですぞ」

「ホントにどうしたの?」

俺の知っているいつものオークボくんじゃありませんぞ?

目は爛々と輝いているし、口からは煙のようなものを吐き出しているし、背中には鬼が浮かんでいる?

どこからどう見ても戦いに命を捧げた悪鬼修羅のごとくになってるんですが!?

どうした? 新婚のし過ぎでなんか変なチャンネルでも開いてしまった?

「そう……、私は新婚生活の果てに真理を悟ってしまったのです。我が本質は戦士。主君のために命果てるまで戦わねばらぬ者。立てばギガント座れば 伐折羅(ばさら) 、歩く姿は薩摩武士。それがこの最強オーク、オークボなのですぞ」

なるほどわからん。

オークボったら新婚が極まって脳みそが煮詰まってしまったに違いない。

そんな彼にこの相撲大会はいい気分転換になるか。

これ以上まごついてまた変な輩が出てきても面倒だしサクッと本戦を始めますか。

そんでは大相撲大会オークボ城場所。

開催開催ー。

「えー、それではまずルール説明を行いたいと思います」

運営側からのアナウンスから始まる。

マイクをとっているのはウチで働くゴブリンの一人。ゴブ吉ではない、その部下ゴブリンだった。

ルール説明は大事。

土俵から出たら負け、膝や手をついても負け、武器使用禁止、グーで殴っても禁止など色々言い聞かせてやってくれたまい。

「今回は何と、特別ルールが適応されまして通常の相撲とはまた一味違った趣となっております。それによって体格腕力だけではどうあっても敵わない相手にも闘いようによっては勝てる。そんなエキサイティングな仕様となっております」

えッ? 何それ俺は知らないぞ?

農場主が知らない仕様変更って何?

案外蔑ろにされてるんだよな俺?

しかしまあ皆が楽しめる大会として、実力如何に関わらず勝敗を左右できるというのはいい要素かもしれない。

一体誰がそんな上手い仕組みを考えたんだ?

「ではより詳しい説明を担当者からしていただきます。『アビスの魔女』ゾス・サイラ様です」

「苦しゅうないぞ」

担当者ゾス・サイラなのかよ!?

俺もまったく知らなかったその人材配置!?

しかも驚いているのは俺だけじゃなくてオークボも。

「ほんのぉおおおおおおおおおおおおおッッ!?」

めっちゃ驚愕している。

さっきまでの修羅っぷりはどこへやら。

オークボも相撲大会運営側にゾス・サイラが関わってるの知らなかったの?

彼女の旦那さんでありながら?

「最近この大会のオークボがかまってくれんかったからのう。わらわも妻としての役割として陰ながら支えることにしたのじゃ」

「その一環の運営参加ですね?」

「左様わらわの『アビスの魔女』としての知識技術を使い、より相撲大会を盛り上げてこそオークボも喜ぶことになろう。これこそ内助の功! よき妻とはみずからを顕示せずに夫を助けるものじゃからのう!!」

めっちゃ表舞台に立っといて、そういうこと言う?

この突如としたゾス・サイラの登場に、大会に参加する相撲選手たちも一斉に顔をしかめる。

何故っていい思い出がないからだ。

既に何回と開催年数を重ねているオークボ城だが、そのある一回にゾス・サイラが大暴れしたことがあってな。

彼女プロデュースのオークボ城スペシャルハードモードと言うのがあって、それ参加した挑戦者全員が開始数秒で脱落という地獄絵図であった。

その当時のことを思い出すと不安に思わないわけがない。

もう大人気イベントとなっているオークボ城には常連参加者もいるから、当時の苦い記憶もしっかり引き継がれているんだぞ。

さあ、どうなんだゾス・サイラさんよ?

あの当時みたいにただただ自分の憂さ晴らしのためだけのプロデュースじゃねえよなあ?

どうなんだ!?

「あの当時と今のわらわとでは全然違うわ。皆も知っての通り、あの頃のわらわは独身、今は人の妻……略して人妻! 妻の立場として愛するオークボの恥になることは一切できぬ、それが今のわらわよ!」

おおー。

「それにストレス満杯だった何年か前よりも結婚した今はストレス微塵もないしな。そこが大きい」

またあくまで個人的理由じゃないか。

「でな、そろそろ本題に入るぞえ?」

おう、はよ説明せいや。

要するに『アビスの魔女』と謳われる技術を全開にして相撲大会に花を添えようってことだろう?

それが見事なアレンジとなるか蛇足となるか読み切れないところが恐ろしい。

だからこその『アビスの魔女』ゾス・サイラなのだッッ!

「では詳しい説明をしてやろうかの。既にわらわの細工は流々に仕掛けてある。そなたらが装着してあるマワシとやらにな!」

な、なんだってー!?

相撲大会の参加者はもれなくマワシを装着中。だってそれが相撲を取る際の正装だし、これを着けずに土俵に上がるわけもない。

マワシは運営側で用意して、参加希望者には配布して装着してもらう決まりになっている。

それを逆手にとってマワシに細工を施すとは……さすが魔女にして現人魚国宰相!

「ぬしらの穿いとるマワシには我が魔法薬技術によってある機能を付加してある。そちらを上手く使いこなせれば、ぬしらは本来の実力以上のパワーを発揮できることであろう」

そ……、その機能とは……!?

「愛じゃ」

何故そこで愛?