軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

804 集結する力士たち・人族編

男ならば誰もが世界最強に憧れる……!

ということで始まります異世界大相撲大会、オークボ城場所。

世界中の腕に覚えのある男たちが陸海関わらず一堂に会し、土俵の上で強弱を競います。

今回のこれは、ただ強さを比べ合うというのではなく、これまで断絶していた人魔人魚それぞれ種族の交流と相互理解を目指したもの。

河童が人と相撲を取って、彼らの歴史に刻まれるように……。

人魚もまた人族魔族と相撲を取って種族の融和を目指すのだ!!

というまあ能書きはさておき。

そんなお題目であるせいか今年のオークボ城コラボ大相撲には、なかなかVIPな出場者も数多く見受けられる。

その中の一人がダルキッシュさんだ。

まあこの人はなんかもう恒例なんだが。

何しろこのオークボ城がある領地の領主さまなんだからなッ!!

むしろ第一回から欠かさず出場している最古参の常連だぜ!!

そんなダルキッシュさんに挨拶する俺。

「こんにちはダルキッシュさん! 今年もやる気充分ですね!!」

「帰りたい……!」

やる気充分でもなかった。

どうしたんです? お腹痛いんですか?

「あ、聖者殿……! 最近大変なことになっておりまして……!?」

それでそんな子ウサギのようにプルプル震えているんですか?

はッ、もしやダルキッシュさんの領に問題発生!?

そんな時こそ俺たち農場のメンツを頼ってくださいよ!

道理の通らぬ世の中に敢えて挑戦する、頼りになる神出鬼没の農場チーム! 助けを借りたいときは、いつでも言ってくれ!

……っていつも言ってるじゃないですか!

「人間共和国の設立が怖い……!」

あ、悩みの原因俺たちだった。

まさについ最近ウチの農場に住んでるヤツが発端で人間共和国の樹立が提唱されたところだ。

人魔戦争の終結で、一旦政体が崩壊した人間国。

人魔の和解も進み、戦争で荒れ果てた人や土地の復興も進んできたのでここらで改めて国家を立ち上げようという話。

でもなんでそれでダルキッシュさんがお悩みに?

ダルキッシュさんにとっては共和国化はいけないことなのですか?

「いえ……、その共和国の代表を私がやらないかという話がきまして……!?」

あらまあ。

でも領主という立場的には、その資格はあるんでないのかい?

「ここ最近の我が領めっちゃ潤ってるんですよ。原因十七割オークボ城なんですが……。それでいつの間にやら有力領主の一人に挙げられるようになって……、その中でも一番若いんだから、新世代の指導者にちょうどいいとか言われて……!」

などと言いながらダルキッシュさんは両手で顔を覆いながら震えた。

それを見ていて俺は胸が痛んだ。

「違うんです……! 私はそんな器ではないんです……!? たまたまオークボ城が領内にできただけで利益と名声をしこたま得ることができた……! 特需なんです! 私の力量とはまったく関係ないんです……!?」

「ダルキッシュさん、落ち着いて……!?」

「それなのに他の領主の連中がこぞって持ち上げてきて……!? 魔族の妻をもっているから二国融和にも有利とか言っても……そんなことのためにヴァーリーナと結婚したんじゃねーし……!!」

ダルキッシュさん、このめでたき日に非常に追い詰められた。

そんな心労を背負って相撲大会に参加するんですか?

ならばむしろ相撲大会に優勝することで鬱屈を吹き飛ばすというのはいかがでしょう!?

「何言ってるんですか!? 三種族が一斉に集ったこの大会で優勝でもしてごらんなさい! それこそ注目も浴びるし実力も示しちゃうしで共和国代表への就任待ったなしですよ!!」

そんなに嫌なんですか、共和国の代表?

「嫌と言うよりは務まりませんよ……!? 私は幸運に恵まれただけの平凡な領主なんですよ……!! ヒトにはい踏みとどまるべき分際というものがあるんですよ……!!」

「そんなことはないぞ」

「は!? 誰!?」

葛藤するダルキッシュさんの下に現れたのは……オオカミ頭の野性的なお姿!?

S級冒険者のシルバーウルフさん!?

「今年も出場しに来たぞ。いまや冒険者にとってもオークボ城は大切なイベントなのでな。ギルドマスターに就任した私も外すことはできん」

「そうだった! シルバーウルフ殿は今やS級冒険者兼ギルドマスター!!」

何かに気づいたダルキッシュさんがシルバーウルフさんに縋りついた。

「人族では王族に匹敵する尊敬を集めるS級冒険者! そんなシルバーウルフ殿こそ新時代の人族代表に相応しい! 話し合いに参加して共和国代表に立候補しませんか!?」

「絶対嫌だ」

断固拒否するシルバーウルフさん。

「S級冒険者とギルドマスターを兼任するだけでもしんどいのにこれ以上兼業を増やせるか。それに冒険者とは元来アウトロー。権力を合い入ることはない」

その権力の頂点に立つこともないと。

「大丈夫だダルキッシュ殿……。そもそもアナタには資質がある。だから共和国の代表もきっと務まるだろう」

「えッ? シルバーウルフ殿……!?」

「そう、かねてからアナタには素質があると見込んでいた……! その見ているだけで滲み出してくるような……苦労人としての資質が!!」

おい。

「ダルキッシュ殿もまたクローニンズ加入資格を満たすほどの素晴らしい苦労人気質!! そんなアナタが国家代表にまでのし上がれば、きっと素晴らしい気苦労を魅せてくれることだろう!! だから是非とも共和国代表になってくれ! アナタの苦労人としての新たなステージを築くために!!」

「何言ってるんだこの人!?」

さすがは世界有数の苦労人……クローニンズの一角を担うシルバーウルフさんの言葉は含蓄があふれ出ておる。

というかヒトの苦労を助長するために国家元首の座に推すな。

「そういやS級冒険者と言えばゴールデンバットも参加してるんですか? 一昨年は来てたじゃないですか?」

「アイツが来るわけないじゃん。今もどっかの山が踏み甲斐があるとかで登っているところだろうよ」

ホント自由だなアイツ……。

そんなフリーダムマンはどうでもいいとして、今は不自由に嘆き叫ぶダルキッシュさんの方が重大案件だ。

「ダメだぁあああああッッ!? この人を関わらせたらロクなことにならないッ!? 聖者様! やっぱり聖者様のお言葉で私を代表候補から外して……! いやいっそ聖者様が代表になった方が……!? その資格は充分にアリ!?」

やべぇ流れ弾がこっちにまで来た。

言うまでもないことですが、俺は真っ平御免の助です。

何が悲しくて権力の座にすり寄らねばならんのか?

のんびりまったりが俺のモットーなれば、いつまでも人里離れた僻地で土を耕し、風と共に生きるのですよ。

だから共和国代表なんて実にやり甲斐のあるお仕事は、ダルキッシュさんに是非ともお任せしたい!

心からそう願う!

そんな引け越し上体の俺の下へ、新たなる代表候補が現れた

「あッ、聖者様お久しぶりですー」

農場卒業生のリテセウスくん!?

キミもオークボ城相撲大会に参加するのかッッ!?

「もちろんですよ! 農場で学んだ者としてイベントには積極的に参加しなければ!! 僕と同じ思いで今日集まっている卒業生も多いですよ!!」

そんなに想ってくれるなんて……!

俺たちはいい卒業生に恵まれたものだ……!

そしてかつて農場で暮らしたことのある男の子たちなら相撲をとった経験もあることだし、きっと名勝負を魅せてくれることだろう。

そんなリテセウスくんに、ハッと食い入るダルキッシュさん。

「リテセウスくん……!? そうだ農場で学びを得て、つぶれかかった故郷の領を見事復興まで導いたリテセウスくん!! キミこそ新しい時代の旗手に相応しい!!」

「はい?」

「キミ、共和国代表になる気はないかね?」

ダルキッシュさんがついに誰彼かまわず勧誘を始めた!?

そんなに代表になりたくないのか!?

「オーケイ、オーケイ。……ではこうしましょう」

見かねた俺が助け舟を出した。

そうでもしないとダルキッシュさん、そのうち道行く人を片っ端から共和国代表に勧誘しかねない。

「幸い今日は相撲大会……世界最強の力士を決める催しです。共和国代表も、その取り組み内容で決めるのがいいんではないかと!!」

強い者にこそ上に立つ資格がある!

ということで相撲大会に優勝したものが自動的に新たな人間共和国の初代大統領? 総督? いや議長? 何て言うの?

とにかく一番偉い人になったればいいんや!!

「それはいいアイデアですぞ聖者様! そういうことならこの領主ダルキッシュ! 全力で相撲を戦い、全力で負けましょうぞ!!」

「いや、八百長はダメですよ」

「わざと負けたとわかったらギルマスの権限全力で代表に推すぞダルキッシュ殿のこと」

よし、これで共和国代表の揉め事が相撲大会に集約された。

他に類が及ぶことなく比較的平和に運ぶに違いない。

何せこの相撲大会……他でもないこの俺は出場していないからな!!

え? なんで?

まあ一応俺運営側なんで。

だからこそ万に一つも俺が代表に選ばれることはない。

完全安全圏から事の成り行きを見守らせてもらうとしよう。