軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

799 すべてを包んで

さて、一年越しの俺の願いが動きだす。

ドワーフさんから譲り受けたアルミホイル。

シュッと引き出して適当な長さで千切る。

その様子を、アルミホイル作成に尽力してくれたドワーフたちが固唾を飲んで見守っている。

「武器か? 防具か……!?」

「結局、四七:五三で武器予想派が優勢のまま聖者様の実演まで来てしまった……!?」

「やっぱり武器だろ、あの薄いのの端でスパーッと斬るんだよ!」

「少数派の意見も忘れるな!? あのキラキラの輝きで踊りを飾るって予想もあっただろう!!」

「親方の言った魔法探知攪乱説は超少数派……!?」

多くのドワーフたちが興味津々に見ている。

この用途不明の銀紙がどのように使われるか、様々に予想してきたようだ。

では答えを見せてあげよう!

適度な面積に開いたアルミホイルの上に、載せる!

鮭を!!

「「「「おおッ!?」」」」

続いてあらかじめ下拵えしてあった玉ねぎやもやし、キャベツにしめじ&えのきも放り込む!

刻んだニンジンも入れておくか。

そして味噌やみりん等々を混ぜた調味料もぶっかけ、最後に農場自慢のサテュロスらが作ったバターも一欠片ぶっこむ!!

そしてホイルを閉じて焼く!!

遠赤外線!

遠赤外線!!

十五分ほど経ってできました!!

一年越しの俺の夢、鮭のホイル焼きが!!

「皆の分も作ってあるよ! ホイル作りのお礼も兼ねてたーんと召しあがってくれたまえッッ!!」

と皿に並べたホイル鮭をドワーフたちに並べていく。

それを目の前にしたドワーフたちの表情は……。

……虚脱していた。

「これが真実……!?」

「オレたちが一年をかけて取り組んだ大作が、ただの調理器具……!?」

あからさまにガッカリしているッ!?

いかん、彼らのあまりにも膨らみすぎた期待に現実が対応しきれなかったみたいだ!?

皆どれだけ派手な銀紙乱舞を期待してたの!?

大丈夫食べてみたらわかるって!

このアルミホイルのもたらしたものがどれだけ素晴らしいかを!

人類の英知が宿っているかを!!

「聖者様がそう言うなら……!?」

「でも正直オレら、食べ物の味には頓着しないんだよなー」

「腹に入れば何でも同じなんだよなー……」

あまりテンションは上がらない。

ただしそれでも探り探りに箸を差し出し、ふっくら柔らかくなった鮭の身を挟み出し、口に運び……。

「「「「うまぁああああああああああッッ!?」」」」

リアクションいただきました。

「これはッ!? これはどういう味なんだ!?」

「ただの焼き魚かと思いきや、火で焼いたと思えないほど身がふっくらしている!? それでいて煮魚ほど汁っぽくないし、どういう調理法なんだぁああッ!?」

「あえて言うなら焼き魚と煮魚の中間!? いいとこどり!?」

「それでいて一緒に銀紙の中に入れてある野菜や調味料の味がしっかり染み込んでいて!! バターの味も!!」

「野菜も、魚の風味が移っていてうめえええええッッ!?」

ふふふ、そうだろうそうだろう。

食材をホイルに包んでの焼き方は、もっとも近いものは蒸し焼きだ。

ホイルの中で気化した調味料やら食材の成分やらが極めて狭い空間内で充満するから、ふっくら焼き上がる上に調味料の味がじっくり染み込む。

そんな奇跡を実現させる鍵がアルミホイルなのだッ!

アルミホイルがなければ実現しなかった味!!

だからキミたちはもっと誇るがいいんだぞ! キミたちが作ってくれたアルミホイルのおかげだッ!!

「こんな不可思議な味を作り出すのがアルミホイル、予想以上じゃあああああああッッ!!」

ドワーフを率いるエドワードさんも凄まじい勢いでホイル焼きを掻き込んでいる。

「聖者殿! 酒はありませんか、これはニホンシュが合い料理と存じますが!!」

すーぐドワーフは酒を求めだす……!

今日のSAKEは鮭だけにしておきなさい。

と言いつつ俺も自分の食べるホイル焼きを確保しつつ、一緒に丼飯いっぱいの白ごはんも用意していた。

そのごはんに……アルミホイルの下にたっぷり溜まったスープを……混ぜ合せた様々な調味料の他に溶けたバターや、蒸し焼きになった鮭や野菜の成分がたっぷり染み出ているスープを……!

……ごはんに交ぜて!

ついでにほぐした鮭の身や刻んである玉ねぎやらもやしやらもごはんに載せて……。

……掻き込む!!

「うおおおおおッ!? 聖者様ッ!?」

「何ですかその食べ方は!? 凄く美味そう!?」

「オレたちにもごはんを!? できれば酒も!!」

白米とアルコールを同時に求めるな。

米と米だぞ。

しかしこれが一年越しのホイル焼き。

長い時間期待を膨らませてきただけに理想が高まりすぎないかと危惧もしたが、取り越し危惧だったな。

ホイル焼きの美味さは、理想も幻想も容易く超えていく!!

よし、この一件だけでアルミホイルの活躍を終わらせるのはもったいなく思えてきたぞ。

もう一品用意したろうか。

アルミホイルで『あるもの』を包み込みます。

何を包んだかは、あとのお楽しみに。

それは一旦置いておいて、地面に散らばる落ち葉を箒で掃いて集めます。

秋だからやはりというか枯れ葉が本当に落ちまくっておる。

落ち葉の山へ、アルミホイルin何かを潜り込ませて火をつける!

燃ーえーろー、燃―えーろー。

そして充分に熱が通ったかなと思ったら、火ばさみで落ち葉を掻き分けて、中のものを取り出す。

火に直に接したといえど、アルミホイルは頑健に燃えることなく熱だけしか通さない。

「あっつ、あつあつあつあつ……!」

やっぱり火から出したばかりのアルミホイル直掴みは熱いぜ……!?

冷めるのを待って……。

ホイルを剥いて出てきたのは……。

「焼き芋!」

農場で栽培されたサツマイモを焚火で焼いてやったぜー!

ヒャッハー!!

紫色の皮をむいて姿現す黄金色の実。

アルミホイル越しに浸透した熱がホクホクに柔らかくしてクリームのような食感。

「あっづ……! あつッ!?」

齧ると口内が高熱になってフハフハした。

我が農場産のさつまいもは糖度も高く、ただ焼いただけでもお菓子のように甘い。

おやつに出しても大盛況だろう。

そんな焼き芋を実現できた功労者は、もちろん火にくべながらも芋自体をまったく酸化させることなく焦げ付かせず、熱だけを通して守り抜いた鋼の衣アルミホイル!

本当にいいものを作ってくれたぜドワーフさんたちよ!!

「美味いものの気配を察したのだ!」

そしてヴィールが来た。もはやお馴染みのこの流れ。

早速焼き芋に興味を一点集中。残念ながら鮭のホイル焼きは二の次だった。コイツも女の子なので甘味が最優先なのだ。

「ほーう? このうっすい銀ピカで包むと芋が美味しく焼けるんだな? だったらもっといい方法があるのだ!」

そこでヴィールが取り出してきたのは……?

……俺が試作したマナメタルホイルじゃないか!? いつの間にパチッてきた!?

「この銀ピカ、ニンゲンどもが普通の製法で手掛けた普通の鉱物と見たのだ。それならマナメタル製のこっちの方がレア高性能なのは必然なのだー」

そうかもしれないけれど?

『マナメタルのうすうすで包んだ芋を、おれ様のドラゴンブレスで焼くのだー! 普通の金属なら諸共消し炭になるが、マナメタルなら耐えられる!!』

そう言ってドラゴン形態となり、芋in済のマナメタルホイルに炎のブレスをシュゴォ!

村とか街とか一瞬で壊滅しそうな炎であったが、マナメタルはそれにも全然耐え抜き、形を保っていた。

炎が収まったあと、拾い上げて向いてみると普通にいい火加減の焼き芋だった。

『ぐははははー! これこそおれ様だけに可能なドラゴンクッキングなのだー!! 最高級マナメタルで包んで、ドラゴンブレスの炎で焼いた芋は普通よりずっと美味いことだろうなー!』

いや、どうだろう?

ドラゴンブレスの超高熱をマナメタルが相殺して、結局普通にアルミホイルまいて焚火で焼くのとあんまり変わらんのかもしれんが。

ガス火と炭みたいな差とかあるのだろうか?

それはそれとし以上のドラゴンクッキングを、ホイル焼きを楽しんで居合わせたドワーフの方々も必然的に目撃する羽目になった。

特に親方のエドワードさんは、またマナメタルを使用してしまったため、いつもの流れで感動のあまりショック死してしまうのだった。

蘇生させなきゃ。

先生を呼んでこなきゃ。