軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

07 人魚と出会う

あれからまた数日経った。

畑の作物はすくすくと成長し、その世話に追われる。

まだ収穫には程遠いが、何の作物が実るか推測できる程度には育っている。

恐らくだが、そのうち俺の畑で収穫できそうなのは……。

トマト、ジャガイモ、キュウリ、ナス、タマネギ、キュウリ、ネギ、ニンジン、カボチャ、キャベツ。

といったところだろうか?

『至高の担い手』の効果だろうか、農業の素人でしかない俺でも生育途中の茎葉を触るだけで何の野菜かわかるのが助かる。

が、それでも収穫にはまだまだ時がかかる。

それまでの時間は、海での採取生活で食いつないでいくしかない。

山はコワイもう行かん。

そうして俺は、朝起きて畑の世話をしてから海に食べ物を探しに出かける、という生活を続けていた。

今日はちょっと優雅に釣りをする。

直接海に入って「とったどー」するのもいいが、やはり海中を素早く回遊する魚はエサを食わせて釣り上げる方が効率いい。

お馴染み王都から買い込んできた道具の中に釣り竿もあったので、それを使って岩場から釣り糸を垂れる。

畑仕事の時に取った虫をエサに使って一石二鳥だ。

大物が釣れたらいいなあ。

などと思いつつのんびり潮風を浴びていると……。

「……おっ?」

引いてきた引いてきた。

けっこうな勢いで釣り糸がぴんと張って竿がしなる。

この勢いは紛れもなく大物だ。

慌てて引き上げようとせず、まずは思うままに暴れさせてスタミナ消耗を待つ。

こっちには『至高の担い手』能力があるのだから、釣り竿を握らせたら一流の釣り師に変貌だ。

王都にて二束三文で買ったボロ竿でも、マグロを一本釣りできる自信がある。

そのまましばらく格闘して……。

「……引く勢いが弱くなってきた」

そろそろ疲れてきたか?

では釣り上げられて姿を現すがいい。俺の晩飯!

ザパーンと盛大に水飛沫を上げて、海面より現れるのは期待通りの大物だった。

尾びれもピチピチ跳ねて超元気。

イキがいい。

ただし……。

「いやーん! 何なのよもう!!」

思ってた大物と違った。

たしかに魚としては大きい。人間ぐらいの大きさがある。

というか半分人間だった。

もう半分は魚だ。

「アタシが陸人に釣り上げられるなんて! ありえない! もー!!」

ビッチビッチ尾ひれを振りながら、悔しさに呻くソイツ。

人魚。

釣り上げたのは魚ではなく人魚だった。

「うわあああああああああ…………!?」

さすが異世界。

人魚なんていたのか!?

下半身は魚。上半身は女の子。

しかも十二分に美人で、今にも魅了させそうだった。

暴れる間にそうなったのか、俺の垂らした釣り糸が全身に絡まって、身動き取れない状態となっていた。

縛られた女の子。なんかエロい。

「ちょっとアナタ!」

キレ気味の口調で人魚、叫ぶ。

「釣りしてたのアナタでしょう!? この釣り糸早く解いてよ! 雁字搦めになってて身動き取れないわ!!」

「えええ……!?」

戦慄するばかりであったが、相手が会話可能な知性体とあっては、もはや獲物と捉えることはできない。

コミュニケーション対象と見なして、礼節をもって遇しようと思う。

かといって大切な釣り糸なので切ることもできず、丁寧に解いて、最後に口から針を抜く。

「しっかりエサ食っとったんかい……!?」

しかし、その過程で図らずも女の子の口内に指を入れるなどという貴重な体験ができてドッキドキ。

まあともかく人魚である。

魚釣りをしてたら人魚が釣れた。

何を言っているか自分でもよくわからない。

「えーと、こんにちは……!」

何をしていいのかさっぱりわからなかったがとにかく会話を試みる。

大切なのは相互理解。

挨拶は会話の第一歩である。

「よくもアタシを釣り上げてくれたわね 陸人(おかびと) !!」

しかし相手は敵意剥き出しだった。

相互理解は一気に遠のいた。

「釣り上げられたからには、アナタの妻になるわ!!」

と思ったら一気にゼロ距離になった。

人と人がわかり合うのは実に容易かった。

「妻!? なんで!?」

いやいや、そんなことはない。

いまだに俺と彼女の間には、マリアナ海溝よりも深い認識の隔たりがある。

こっちの異世界にマリアナ海溝はないだろうけれど。

「だって、陸人に釣り上げられるなんて人魚にとってこれ以上の屈辱はないわ……! アタシは敗北した人魚。敗者は勝者にすべて捧げる運命……! 身も心もすべて捧げる……!」

「いやいやいや……!」

ともかくも俺は嫁をゲットした。

人魚の嫁。

そんなんでいいのか!?