軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

795 ガンマ・メイ

レタスレートvsアスタレスさん。

もしくはミス・マメカラスvs魔族将軍。

その戦いは、ジリジリと緊迫した雰囲気のままに続いていく。

依然として衝撃波を連発するアスタレスさんに、レタスレートはなすすべがなく一定距離でガード体勢を固めるのみ。

それ以外はできなかった。

飛び道具で突き放された間合いで、レタスレートができることがなかったからだ。

こうなってくるとレタスレートのバトルスタイルの致命的な弱点が浮き彫りになるな。

そう怪力に全頼りする彼女は、肉体による攻撃手段しかない。

つまりは手や足の届く範囲にしか影響が及ばない。

レタスレートが魔法の一つでも使えれば、あるいは遠距離用の武器でも持っていれば話が違っていただろうが、これはプロレスの試合だからこそ武器の使用は禁止。

八方塞がりな状態だ。

まあ、それを言ったらプロレスの試合でソニックブームを出してくるアスタレスさんも大概反則スレスレだが。

「地味であろうが勝利への確実な筋道を迷わず踏む。それでこそかつて魔王軍で常勝将軍と恐れられたアスタレスの手腕よ」

「凄いです母上!!」

「そうだぞゴティア、お前の母はとても優秀な魔王軍人だったのだ」

最初は煤けていたゴティアくんも、お母さんの意外な一面を垣間見れて大興奮。

元々が真面目な子なので実母の有能ムーブはヒットが大きかったようだ。

その半面でホルコスフォンの右膝の痙攣が収まらない。

「何という卑劣な戦法なのでしょう? こんな地味で単調な展開では全然客が沸きません。私が乱入して一波乱起こすべきでしょうか……!?」

「はうす、はうす……!」

本当に今にもマナカノン引っ提げて乱入しそうなホルコスフォンを、ウチのジュニアがなんとかなだめて抑える。

だってレタスレートの逆転劇はこれから始まるのだから。落ち着いて見守っていなくては損じゃないか。

俺にはわかる。

これでもヤツが農場に預けられてからずっと世話し続けてきた男だからな。

レタスレートが窮地においていかに生き汚く足掻くヤツだということを、俺はよく知っている。

今この状況でも、なすすべなく敗北してしまうなんて流れだけはないはずだ。

状況の打開策は単純。

相手が飛び道具を使ってくるなら、こちらも飛び道具を使えばいいこと。

目には目を、歯には歯をだ。

敵と同じだけの作用範囲を持つ攻撃手段さえ持っていれば、この状況を打開するのはたやすい。

ん?

その手段がないから苦労してるんだろう、って?

それはどうかな?

あやつは戦いながらも進化する生き物だ。

「豆指弾!!」

「何ぃッ!?」

レタスレートの手の中から放たれた何かが、衝撃波とぶつかり合って相殺した。

それは豆だ。

試合前に撒いていたファンサービス用の煎り豆。

それがまだ手元にいくらか残っていた。その中の一粒を指で弾いて撃ち出したに違いない。

なんかの殺し屋みたいに。

ただの豆でもレタスレートの筋力で弾いた豆だから弾丸のような勢いを持つ豆だ。

衝撃波とだって拮抗できる。

空中で起こるパンという破裂音。

「くッ!? 衝撃波が相殺された!?」

「今よッ!!」

ここぞとばかりに駆け出していくレタスレート。

焦ったアスタレスさんはさらに衝撃波を連射しようとするものの、すべて豆指弾に撃ち落されてもう届かない。

そうしているうちについに二人は肉薄した!

組み合いになればもう力の強いレタスレートの独壇場だ。

アッという名に組み敷かれて、技の体勢へと持っていく。

「スクリュー豆ドライバー!!」

竜巻のような高速回転をしながらアスタレスさんの頭部をマットに叩きつける!

これは決まった!

フォールしてワンツースリーフォー!!

カウントを取って見事レタスレートの勝利だ!!

「母上ぇッ!?」

生母の敗北にショックを受けるゴティアくん。

幼い彼には、誰より頼れる両親が負けるなんて信じがたいだろう。

そこで父親の魔王さんは……!

「いい勝負であった!!」

と堂々と言った。

「おのれの能力と知恵を限界まで出し尽くした名勝負であった! ゴティアよ! 負けたことを悔やんではならん! 全力を尽くした勝負は、どんな結果だろうと讃えるべきことだ!!」

「は、はい父上!!」

上手いことまとめましたな魔王さん。

「最強の刺客たちの二番手! 魔族将軍もこのミス・マメカラスが倒したわ! イエェエエエエエエーーッッ!!」

勝利の雄叫びを上げるレタスレート。

しかしまだ戦いは終わりではない。残る最後の強敵が待っている。

「ふふふ……! 信じていたわよ、アタシの餌食にならずにあんな前座どもにやられたりしないって。だってアナタにはアタシを楽しませる義務があるんだもの」

これぞ悪役とばかりのセリフを並び立てるウチの妻。

聞いてるこっちの赤面していく。

「マスク剥ぎデスマッチ、アンタが最終挑戦者でいいのね?」

「アタシ以上にラスボスに相応しい女がいるかしら? ……フフフ、こうして見ると懐かしくすらあるわね。ただのチンチクリンだったアンタをしばき倒していたあの日々が……」

「あの頃の私とは違うわ! 今の私は豆の加護を得た、アンタにだって必ず勝てる!!」

言われてみればレタスレートが初めて農場にやってきた最初の頃、それがもう遥か昔のことのように懐かしい。

まだお姫様だった頃のレタスレートが我がままいっぱい舐め腐ったことを言うたびにプラティにぶん殴られていたっけ。

そんなレタスレートが今では、みずから率先して企画を立て、地域や社会に貢献するとは……!?

人は成長するのだな……!?

「このアタシに勝てるのならば認めてあげてもいいわ。アナタの成長がホンモノであることを。しかしアタシを超えることは生半可じゃないわよ?」

覆面を着けたプラティが……浮いた?

ウチの奥さんは、何故唐突に空中浮遊しているのですかな?

「アナタが成長を果たした今、このアタシも同じように成長しているとは思わないのかしら? アタシだって過去のアタシとはまったく違うのよ? ママから教わった、この聖唱魔法を使えることとかね……!」

そうだった。

最近とみに忘れられがちな設定だが、人魚族が使える最強最悪の魔法……聖唱魔法。

あまりに強力過ぎて海神ポセイドスが取り上げたとさえ言われる。

そんな世界を壊せるかもしれないガチ最悪の魔法を、ウチのプラティも母親から伝授されているんだった!!

使う機会がまったくないから、とにかく忘れられやすいんだよな。

ウチの農場はヴィールや先生、オークボゴブ吉ホルコスフォンなどがいて過剰戦力だから。

でも聖唱魔法を会得したプラティは、実のところ先生ヴィール級に匹敵するんですよ。

「ぼえ~」

「おげぇえええええええッッ!?」

プラティがワンフレーズ歌うだけでレタスレートがリング外まで吹っ飛ばされた!?

これもうプロレスですか!?

「ぼえ~」

「くほぉおおおおおおおおッッ!!」

プラティが歌うだけで空気の塊がレタスレートの全身を押し潰すように迫っている!?

相手がレタスレートでなかったらとっくに終わっている圧力。

ねえこれプロレス?

本当にプロレス!?

「聖唱魔法にここまで抗うだけでも大したものね……! 一般的なドラゴンやノーライフキングならこの時点で終わっているわよ……!?」

「私は……負けないわ! 私を応援してくれるファンのために……! ここまで進んできた自分の日々のために……! そして……豆のために!!」

お?

なんかレタスレートから金色のオーラが立ち上る。

七番目のセンスにでも目覚めたかな?

「今の私ならできる……! いくわよ、豆最強奥義!! 封神八十七式烈光流豆乱舞ッッ!!」

なんかレタスレートの拳から発せられる光の弾丸(無数)が、一斉にプラティに浴びせかかって直撃する!?

「んはぁああああああああーーッ!?」

それをまともに食らってなすすべなく吹っ飛ばされるプラティ。

神すら恐れた聖唱魔法に、レタスレートの豆闘気が勝った。

「見なさい! これがここまで積み上げてきた私の汗と! 苦労と! そして豆の力よッ!!」