軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

787 HAPPY HAPPY

こうして菅原道真公にたっぷり祈祷してもらって、ジュニアの七五三はつつがなく完了した。

『優しい子どもに育つがよい。同僚を貶めて地方に飛ばすことのないような』

道真公は、俺の知ってる神様たちに比べたらかなり温厚で安心してお付き合いのできる神様だなあと思った。

たまに闇を見せてくるけど。

『それがしも学問の神などと言われて幾星霜。学志す少年少女の願いを聞き届けてきたせいか。この年頃の子どもたちを見るともうよりそってやりたくなるものよ』

『わかります。わかりますぞ』

ノーライフキングの先生と並んで元気なジュニアを見守っている。

『ワシもまかり間違って不死の身体となってしまいましたからの。無駄に長く生きたことを活かせるとしたら、そこで得た教訓を若者たちに伝えることだと常々思っておりますぞ』

『では学問の神たるそれがしとほとんど同じではないか? その尽きることのない存在を若人のために使おうというのは?』

『言われてみればそうかも知れませんのう……』

今や農場学校の中心的存在となって、後進の育成に余念のない先生。

死してなお学問の神となって子供の成長を見守る道真公。

『…………』

『…………』

二人見詰め合って……。

『『シンパシー!!』』

固く手を握り合った。

同好の士ができてよかったですね先生。

さあ、七五三イベントが無事済んだので家に帰るか。

まだまだイベントが待っているからな。

お忘れだろうか?

ジュニア三歳を記念して開かれた七五三だが、それがこの時期に行われたのは、この辺りがジュニアの誕生日だからでもある。

三歳記念は行ったがそれとあわせて誕生パーティそのものも行わないとな!!

既に母屋の方では、残った農場メンバーがパーティの準備を着々と進めている。今頃はすっかり準備も整って主賓の既刊を待ちわびていることだろう。

俺があらかじめ拵えておいた誕生ケーキを、誰かが食欲に負けてつまみ食いしていなければ。

「何か不安になってきた」

一刻も早く戻ろう。

ダッシュで戻ろう。

* * *

母屋に戻ったら案の定、農場の女性陣を必死に押しとどめているオークやゴブリンたちの姿があった。

彼らのおかげで誕生ケーキはまだ無事に済んでいた。

「彼らも苦労が多いなあ」

女性たちに今にも押し倒されようとしているオークやゴブリンってある?

「我が君ぃいいいいいいいッッ!? 早く! 早く誕生パーティの火ぶたを切ってくださいませぇええええええッッ!!」

「もう我々では抑えきれませぬぅううううううッッ!!」

エルフたちとかサテュロスたちとか、女の子は皆甘いお菓子が大好きだ。

……女の『子』?

「えーと、でも誕生パーティのセレモニーとしてノリトに餅を踏ませるイベントが残ってるんだけど?」

今日のパーティはジュニアのためだけではない。

その弟ノリトの生誕一周年も全力で祝う所存。

一歳を記念して盛大に行う風習なんです。

赤ん坊に固まった餅を踏ませて、健やかな成長&無病息災を願うんです。

特に今回の餅は、ジュニアが弟のためを思って一心に搗いたお餅。兄の愛が詰まっているのだ。

何はなくともまずノリトに餅を踏んでほしい。

「気持ちはわかりますがッ! もう支えるにも限界なんですッ! 今にも突破されるぅーッ!!」

ゴブリンたちの叫びが悲痛じみてきたので仕方なく、プログラムを組み替える。

まずはバースデーケーキのローソクをジュニアとノリトに吹き消して、ケーキ実食解禁してから餅踏みと行くか。

では我が二人の息子よ、ケーキに立てられたろうそくを全力の肺活量をもって消しさえるがいい!

「……ねえ旦那様?」

「何だいプラティ?」

「どうして一つのケーキの上にロウソクが四本立っているの?」

「ジュニアの三歳+ノリト一歳で合計四本だよ」

「何故一つにまとめたの?」

二つのケーキを用意するより仲よしな感じが出ていいかなって……。

「「「「「「「「「はっぴばーすでーとぅーゆあー」」」」」」」」」

「「「「「「「「「はっぴばーすでーとぅーゆあー」」」」」」」」」

「「「「「「「「「はっぴばーすでーでぃあジュニア&ノリトー」」」」」」」」」

「「「「「「「「「はっぴばーすでーケーキー」」」」」」」」」

誰だ今、我慢しきれずに欲望を漏らし出したヤツは!?

ともかくセレモニーは終わったので、遠慮なく灯火を消してくれたまえ!!

「ふゅー」

とはいえまだ一歳で何のことやわかっていないノリト。

結局すべてのロウソクはジュニアの気遣いと肺活量によって火種を消し去られた。

「ジュニアも三歳の割に肺活量凄いなあ……」

一息だったよ。

あれももしや『究極の担い手』の効果だと?

まあいいか。

盛大に拍手で祝おうじゃないか。

パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ……!

「おめでとー」

「ジュニアくん三歳おめでとー」

「ノリトくんも一歳おめでとー」

「ミーも十七歳おめでとー」

誰だどさくさに紛れて自分自身を祝ったヤツ!?

ちゃんと祝ってやるから名乗り出ろ!?

「おわったー、ノリトにもちふませるー」

「ちょっとジュニアくん!?」

ケーキを一口でも食べていただけませんか!?

そちらもパパの自信作なんですが!?

とはいえジュニアはジュニアの自信作であるお餅の方に興味全振り。

まあ子どもの興味が全集中するのは仕方のないことだとして。

ジュニアが拵えた餅は、クッソデカすぎて野外に出してあった。

具体的に言って半年は籠城戦ができる質量。

元々ここまで大きくする気は、俺にも実際手掛けたオークたちにもなかった。

ジュニアが手掛けたここで何故かここまで肥大化した。

これこそ間違いなく『究極の担い手』の効力だろう。

そのままにしたら山のようになってとても赤ちゃんのノリトは踏めないため。

薄く薄くうすーく伸ばして板状にしたらテニスコート何枚分とかそんなレベルも素っ飛ばす規模になった。

乾かしてすっかりカチカチになっているので、問題なくノリトを上に立たせて……。

その様はもう真っ白な雪原を歩いているかのようだった。

餅の色だけに。

「やったー! やったノリトかわいー!!」

大興奮してパチパチ拍手するジュニアだった。

兄弟愛が迸っている。

さて、こうして見事役割を果たした巨大餅だが、そのあとどうしよう?

同じ懸念を持っていたのであろうオークの一人が言った。

「これだけの量……、農場住人全員でも食いきれませんよ? どうします……!?」

「一度に食い切る必要はないさ……!」

俺は自分自身に言い聞かせるように言った。

そうそう、餅って固めてしまえば充分保存食になるからな。

とりあえず一部は割って今日のうちにみんなで食べよう。

甘々ぜんざいにぶち込めばケーキに夢中の女の子たちだって食べてくれるだろう。

もんじゃにも入れよう。

残りはカッチカチのまま保存して食糧危機に備える。

出来れば冷凍保存しておくのが万全だろうが、まあ一応常温で。

カビが生えたら削って食えばいいさ。上手くしたらペニシリンが取れよう。

そういうわけでウチの女どもよ。

ケーキばかじゃなくて餅も食え。

「ふぅおおおおおおおおおッ!! その一切れはアタシのものよ! 譲るかあああああああああッッ!!」

プラティまで女子陣のケーキ争奪戦に参加していた。

何故ケーキはそうまで女子の人格を暴走させうるのか。

「ぱぱー、ぱぱー」

俺の下へジュニアがとことこやってくる。

ちなみにノリトは俺自身で抱え上げていた。

「ありがとねぱぱー、今日ありがとねー」

……。

この一言だけで今日までしてきた色々な苦労が報われた……!?

誕生日おめでとう。

ジュニアとノリトよ。

そして女たちよ……!

ケーキを巡る醜い争いをやめよ……!?