軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

771 参列者の視線1:悩まないが驚きはする男

私は魔王軍人のオルバ。

いや……結婚を機に魔王軍を退役し一貴族当主となる予定ではあるが、引継ぎやらなんやらあって結婚後もしばらくは軍人を続ける予定。

しかしながら私は幸せの絶頂にいる!

何故ならもうすぐ結婚式だから!

誰しも一度はある人生の晴れ舞台が私にもやって来る!!

その日の主役は私と彼女!

さあ、存分に世界一幸せな二人になろうではないか!!

……え?

合同結婚式?

何それ聞いてない。関係者でちょうど同時期に結婚しようとする人たちがいるのでまとめてやっちゃおうと?

そんな洗濯みたいな考え方……!?

でもまあいいよ。

それでバティが幸せなら。私の妻となるバティはそりゃもう美しくて賢明な人だから、彼女が『ヨシ!』と言うなら何も問題はないのだろう、ヨシ!

幸せな人たちが何人いたってよい。

自分が一番などと言うのは不和の元にしかならないからな。

ここは仲よく幸せを分かち合おうではないか!!

……どんな人が一緒に参加するんだい?

え?

人魚国の教師。

人魚族か……てっきり同族で合同するのかと思いきや、国際的な催しになりそうだね。

いやいや、難色じゃなくて意外に思っただけだよ。

平和になってこれから国境を越えた交流も増えていくだろうからね。

そういう意味では国際交流の先駆けに私たちの結婚式が抜擢されるのは名誉でもあるよ。

バンバンやっていこう!

……え?

他にも?

一体何組が一緒に結婚式を挙げるの? 全部で四組?

そうか……。

まあ、最初の一組目で充分驚かされたから次はそうそう驚いたりしないがね。心の準備はバッチリだ!!

……はい?

人魚国の女宰相?

宰相っていったら臣下の中での国内トップだよね?

しかも女性で宰相になるって、魔国ではまだ達成されていない歴史に残る偉業なんだけど?

その女宰相が結婚式ッッ!?

恐れ多くも我々と一緒に!?

うん大丈夫!

ちょっと驚いただけだからね!?

しかしそれならもう一組の人魚教師の方が大変ではないのかい!?

別国の私たちならまだ他人事だが、自国の宰相だとどんな影響があるから気も休まらないだろうに。

せっかくの結婚式なのに大丈夫か?

大丈夫?

いつも殴り合いのケンカしてるからって?

……それは別の意味で大丈夫ではないのでは?

まあいいか。

人魚国は他国だし、そういう文化もあるんだろう。

よしわかった!

いいんじゃないか、私とバティの結婚式だからできる限りに派手でないとね!

しかし宰相の結婚ともなれば向こうの国王も祝いに出席するんじゃないかな!?

となったら思ったより盛大になって困っちゃうなあ。魔族の私たちなんて霞んでしまうかも?

え? 大丈夫だって?

……そろそろバティの『大丈夫』が信用なくなってきたなあ。もちろんこの件に関してだけだが。

大丈夫ってことは、人魚王は結婚式に出席されないってこと?

それはそれで人魚宰相が気の毒ではないのかい?

人魚王は出席? なんだやっぱりするんじゃないか?

じゃあ一体何が大丈夫というのか……? うむ?

魔王様も出席される?

何それ初耳。

いやないでしょう? たしかに私は魔王軍で四天王補佐という役職についていて貴族のとしてもそれなりの地位にあるけれど。

魔王様に直接祝福してもらえるほどの地位ではとてもないんですが!?

でも来るんだ!?

聞き間違いじゃなかった!?

どういう縁で!?

ああ、そうか。我が新妻バティは元々四天王アスタレス様の補佐官。そのアスタレス様が今や魔王妃。

かつての部下の祝い事に夫を連れて駆けつけてくれたということ!?

アスタレス様も情に厚い御方だなあ。私の現状の上司ベルフェガミリア様は『面倒くさい』を理由に迷わず欠席したというのに。

……え? 今度は何?

それも理由だけど他に理由もある?

何それ?

まあ、いいか。

話を戻そう。

さっき全部で四組と言ってたから、最後にもう一組いるんだろう。

どこの誰だか教えてもらおうじゃないか!

異国の宰相まで出てきたんだからこれ以上の衝撃はあるまい。我が心常にさざ波一つない湖面のごとし!

さあ、ドンと言ってみたまえ!

……。

うん?

ドラゴン?

ドラゴン同士が結婚?

……。

……。

…………どういうことッッ!?

何を聞かされても心は一切波立たないと宣言したばかりなのに、今激流のごとく渦巻いているのだがッ!

そもそもドラゴンって結婚するものなのか!?

そんな話聞いたことないぞ!?

……何?

世界初? しかも竜の皇帝とその妃?

もうやめて!

これ以上耐えられないから要素を上乗せしないで!!

* * *

そして結婚式当日。

前情報だけでげっそりとなった私であったが、愛するバティの花嫁衣裳を見て大盛り上がり。

すぐさま元気を取り戻した。

家の者も列席し、いつもは屋敷で過ごしている母も祝いに訪れてくれた。

バティともすぐ意気投合し、仲よくなってくれたのは嬉しかった。

……しかし、まあ。

想像を遥かに上回る規模と豪華さの式場ではあるが。

式場が国外って聞いてないよ……。

転移魔法でないと行けない式場なんて初めてだ。

一体どこなのここ? 龍帝城? 何それ?

ふーん、ドラゴンの中でもっとも偉い皇帝が住むダンジョン。そんなのがあるのか初めて知った。

……。

なんで私はそんな大層すぎる場所で式を挙げているのか?

これでもごくごく平凡な一魔族のつもりなんですが!?

それともあれか!?

ウチの嫁さんが世界一美しいせいですかね!?

いやはあ……。

実際に式場を見渡して卒倒しそうになった。

何百人いるかわからない結婚式の参列客の中から、ある人を見つけたからだ。

魔王様を。

本当におられた。

見間違いであってほしいと一旦目を逸らしてからもう一回見たけど、たしかに魔王様であった。

しかもその傍にいる、いかにも豪勇そうな男人魚は……、もしや……!?

バティから耳打ちされて何者か判明した。

人魚王アロワナであった! やはり!?

しかも、その両王に挟まれた人族は一体誰だ!?

なんだか領主然とした雰囲気の男だが!?

地上と海の支配者と同列と並べられて、きっと余程名のある名士に違いない!

結婚式の途中に話しかけて名前を窺っておくべきか!?

しかし彼の名前もバティから教えてもらった!

人族の領主ダルキッシュ殿と言うそうだ!

魔王様と人魚王にあれだけフレンドリーに接せられるとは、かなりの豪胆な人格に違いない!!

「新たな苦労人の予感がするわよねー」

ん? 何か言ったバティ!?