作品タイトル不明
767 ドラゴン勝負・人並み編
「が、ガイザードラゴンのアードヘッグ!」
「グィーンドラゴンのブラッディマリー!」
「農場ドラゴンのヴィール様なのだ!」
「グリンツェルドラゴンのシードゥルですわ!」
「プロトガイザードラゴンのテュポン様だ!!」
「ぐ、グラウグリンツドラゴンのアレキサンダー!」
と皆でポーズを取ってババーン!
決まったので披露宴会場に拍手が間み起こった。
背後で爆発のエフェクトを起こしたくなるほどの決まり具合になった。
「これで全員合わせて六人! お前らと同じ人数なのだ! これで公正な勝負と言えるのだなー!」
「ちょっと待て! ちょっと待てちょっとちょっとちょっと待て!!」
相手側のイケメン竜が、度を失って狼狽している。
「アレキサンダー兄上!? なんでアナタがそちらにいるのです!? アナタは後継者争いには不介入ではないのですか!?」
「シャルルアーツ久しいな」
最強竜であり、すべてのドラゴンの長兄でもあるアレキサンダーさんは敵対する相手でも気さくに話しかける。
しかし相手はエマージェンシーだ。
「私もアードヘッグをガイザードラゴンに推しているのだ。だからこそ力を貸してやらねばの。さあ私が相手になるゆえどんとかかってこい!」
「嫌ですよアナタが敵に回ったら我々が六百万人いても敵わないじゃないですか!? そもそもアナタ自身がガイザードラゴンになればすべてが丸く収まったのに今さら中途半端に介入しないでください!?」
「私もガイザードラゴンの称号は面倒くさくてのう」
「この方はあああああッッ!?」
大体の場合アレキサンダーさんが味方に付いた時点で勝利、敵に回った時点で敗北というのが完全に決まる。
この即決ぶりが悲しくなるほどだった。お疲れ様でした。
「おのれアードヘッグ卑怯な……!? 貴様が強気な理由もここにあったのだな……!?」
「えー?」
「アレキサンダー兄上さえ味方に引き込めば、すべて思い通りになると? 大方そういう考えなのだろう!? 他者の力を当てにするとはドラゴンにあるまじき甘ったれた考えよ!!」
いまだにアードヘッグさんが認められない理由は主に二つ。
一つは、ガイザードラゴンの称号を、直接先代を倒して奪い取ったこと。
これがちゃんとルールに則って争奪戦で勝ち取ろうとしていた竜たちには許しがたい『ズル』と映ったらしい。
実際には先代ガイザードラゴンが展開させていた陰謀とか多面的な要因もあったんだが、結果だけを単純に見たらルール破りの簒奪。
そこを安易に非難する者はいまだに入るっぽい感じ。
第二に、アードヘッグさんの後ろ盾としてアレキサンダーさんがいること。
アレキサンダーさんは本来なら次のガイザードラゴンに本決定の皇太子竜。しかし先代であるアル・ゴールとの折り合いが悪く後継者候補から外れた。
しかしそれでも純粋に最強ドラゴンはアレキサンダーさんで間違いなく、しかも他のドラゴンから見ても遥かに桁違いなレベルで最強なのだ。
アレキサンダーさんなら自分以外のすべてのドラゴンと全面対決しても一秒以内で勝てる。
そんなアレキサンダーさんを味方につければ、呂布を味方につけた董卓並みにやりたい放題ってわけよ!
……と思われているらしい。
「ふむ……、私の存在が却ってアードヘッグの足を引っ張っていたとはな。力があるというのも考え物だ」
「お兄様が気に病むことではないわ。どうせ何か言ってくるヤツは、こっちがどう気を付けたとしても無理矢理ほじくり出して言ってくるのよ」
アレキサンダーさんとブラッディマリーさんが並んで矢面に立つ。
かつてガイザードラゴンにもっとも近い位置にいた二人。その二人を揃って相手にしたら敵対勢力は震えるしかない。
「理屈も主張もドラゴンには不要よ。力で叩き潰せばいい。アナタたちもドラゴンの正義を語るなら文句はないでしょう?」
「く……ッ!?」
アレキサンダーさんが出てきた時点で勝負はついたも同じ。
ここからは圧倒的な蹂躙が始まるのかと思いきや……。
「お待ちください姉上」
それを止めたのは、アードヘッグさん。
糾弾されている張本人。
「おれに考えがあります。とりあえず一方的な蹂躙はやめてください」
「どうするの?」
「いまだにおれのことが認められないのはおれの実力が広く伝わっていないからでしょう。ここでアレキサンダー兄上やマリー姉上に頼ってはいつまで経っても真の皇帝竜にはなれません。それに……」
それに?
「『力だけがすべて』というこれまでのドラゴンの考えも、おれの時代には改めていきたいと思っています。だからこそ自分の反対勢力も力でねじ伏せてはいかぬと思っています」
アードヘッグさんはそもそも人類と接することの多かった竜だ。
最初はアロワナさんの武者修行に同行し、それ以降もウチの農場と関わることが多かった。
「ニンゲンは弱くとも、様々な素晴らしい特性を持った素晴らしい生き物。竜もそれに見習いたい。だからこそ彼らとは力ずくだけの勝負をしたくない」
「うむ! よく言ったぞアードヘッグ! そんな考え方ができて非常に偉いな! 偉いぞ!!」
心の琴線に触れたのか、アレキサンダーさんから全力で褒められた。
そして戸惑うばかりの敵勢力。
「それに何より祝いの席ですから荒事は避けたい。せっかくマリー姉上の綺麗なドレスを返り血で汚されてはなりません」
「よく言ったわアードヘッグ! そう言うこと言ってくれて本当に素敵! 素敵よ!」
そして今度はブラッディマリーさんの萌えスポットに触れた。
「ということでシャルルアーツ兄上。せっかくなのでニンゲンの振舞いに寄り添った勝負をしてみませんか? その方が今日の宴に適していますし」
「なんだ……!? どういうつもりだ……!?」
「兄上にも体験してほしいのですよ。これから始まるドラゴンの新しい時代を」
いきなりの提案に戸惑う挑戦竜たち。
しかしそれを無視して力ずくの勝負になればどっち道粉砕されるだけなので、逃げを打たないなら提案に乗るしかない。
「アードヘッグにしては面白いことを言うのだなー! よし、一番手はこのヴィール様が務めてやるのだー!」
「こっちまだ受けると入ってないんですが!?」
しかしもう否応もなく勝負を仕掛けられる。
とりあえず殴り合い以外でドラゴンたちが勝負を決める方法は……。
「それならちょうどいいのがあるのだ。最近ニンゲンどもがハマってる遊びでな。神の像を操って壊し合うのがあるんだー」
ああ、ゴッドフィギュアファイトですね……?
「おれはあれがすこぶる不満だったのだ。どーして神どものフィギュアで戦っておれたちドラゴンのフィギュアは作らない? ドラゴンの方が絶対強いのに。……というわけで試作品を作ってみたのだ」
え?
もしかしてドラゴンのフィギュア?
「さらに、神どものフィギュアにはない機能も追加してみた。こないだの流しソーメンから着想を得て、高速で走るドラゴンフィギュアなのだ!!」
そうしてヴィールがとりだしたドラゴン……の頭部のみを象った模型は、四隅に車輪がついていた。
流線型でいかにも速く走りそうな、その形は……!
「ドラゴン四駆と名付けてみたのだ」
「色々ヤバい」
「これを走らせて速さで勝負するのだ。同じ殴り合いで勝負しても神どものフィギュアと競合すると思って棲み分けを計ってみた」
ヴィールのこういうところ賢いんだよなあ。
何気に商業展開に戦略を立てるようになった。
「さあ、このレースでおれ様に勝てると思う身の程知らずは出てくるがいいのだ!! このおれが考え抜いたレース地獄で叩き潰してやるのだー!」
「お、おいどうする……!?」
勝負を仕掛けられた先方は当然のように困惑気味。
それはそうだろうよ。血みどろの殺し合いをするつもりで来たら、いつの間にか模型でレースするすることになるなんて、世界の命運を賭けてデュエルする並の超展開。
「おれが行きましょう」
名乗りを上げたのは、細主な知的男性の人間形態をしたドラゴンだった。
「このグリンツドラゴンのクロウリー・シーマ。敵の意図を読み切るためにあえて懐に入る所存! 十傑竜序列十位の意地を見せてやりましょうぞ!!」
「いい度胸なのだ! ではこちらで用意したマシンの中からビビッと来たものを選ぶがいいのだ! ハイパードラゴン、フレイムドラゴン、ライトニングドラゴン、ホーリードラゴンがあるのだ!!」
「では、この蓬莱ゾーンを使います!」
それぞれの使用マシンも決まり、レースが始まる!?
周囲も注目しだした。
「今度の出し物は本格的だな……!?」
「まさかゴッドフィギュアに続く新商品をプレ公開されるとは……!? この結婚披露宴はどこまで豪華なのだ……!?」
結婚披露宴とまったく関係ないところがポイント。
そしていよいよレースの火蓋が切って落とされる!?
「行くのだハイパードラゴン!」
「かっとべ蓬莱ゾーン!!」
割と真面目にレースしていた。
二人の選んだマシンが割と普通に高速で走り、披露宴会場を駆け抜ける。
「ぐおおおおッ!? ヴィール姉上のマシンが速い!? こういう時はそうダウンフォース! ダウンフォースがいいはずだ!!」
相手のドラゴンが思ったより真面目に勝負してくれているのが印象的だった。
レースは案外と終盤まで伯仲した好勝負で、ゴール直線までもつれ込んだが、そこで相手側のマシンが高速回転してヴィールのマシンを弾き、コース外まで吹っ飛ばそうとした。
しかしながら吹っ飛ばされた軌道が偶然ゴールに向かってとなって、ヴィールのマシンが先にゴールして勝利となった。
まずアードヘッグさんのチームに一点。
これどういう勝敗判断?