軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

766 駆けつけるライバル

前回までのあらすじ。

合同結婚式が開催中にドラゴンたちが乱入してきた。

どうやら仕掛け人は先代ガイザードラゴンのアル・ゴール。

ソイツは一切の責任を負わせるため、ホルコスフォン管理の納豆小屋へと送り込んだ。強制労働だ。

そして元凶のいなくなった披露宴会場では、それでも問題解決せずにドラゴンvsドラゴンの大騒乱が今にも勃発せんとしている。

周囲の一般参列客たちは戦々恐々だ。

彼らは合同結婚式の他のカップルを祝うために訪れたごく平凡な魔族やら人魚族やらの貴族たちなので、ドラゴンの戦争なんか体験どころか想像したこともあるまい。

そんなのが突然目の前で勃発するぜとなったら、ビビらないわけがない。

それが人類の真っ当な反応であった。

このカップル四組合同結婚式に一組ドラゴンカップルが交じっている時点でこうなることは決まっていたのだから。

この混沌を楽しむ以外にすべきことはない!!

その証拠とばかりに他の夫婦たちも……。

「ほれオークボや、面白い見世物が始まるようじゃぞ? わらわらのお式に相応しい催しになればいいがの」

「ゴブ吉様、ケーキをお召し上がりになって。ほらア~ン」

「これはまた新しいドレスの作り甲斐がある新キャラが現れましたね!!」

それぞれ盛り上がっておる。

彼女らは彼女らで今日の式を思う存分楽しむ所存のようだ。

それと並行してドラゴンの争い。

睨み合う二対六。

その中でもっとも険しい表情なのは花嫁衣裳のブラッディマリーさんだった。

今にもドラゴンの姿に戻りそうな凶悪な形相をしている。

「アナタたち、よりにもよってなんて日にケンカを売りに来たものかしら?」

「うひょぉおおおおッ!? さすが聖者が作ったケーキは最高に美味いのじゃああああッッ!!」

「この私のもっとも幸福となるべき日にケチをつけるなんて苦しんで死ぬ用意はできているということよね? 望み通りドラゴンでも耐えがたい惨たらしい最期を与えてあげるわ!」

「おッ! 見よ見よオークボ! おぬしの仲間のオークたちが宴の出し物をするようじゃぞ! 人間ピラミッドとな!?」

……周囲で純粋に宴を楽しんでおられる方々が煩い。

緊迫を保てない状況で頑張って緊迫しつつ、話を進める。

「……失望したのはこちらですよマリー姉上。アナタには期待していたんですが、このおれとガイザードラゴンの座を巡って最後まで名勝負ができると。なのに、これほど容易く簒奪者の軍門に下るとは」

「あら、私より弱いアナタが名勝負なんて身の程を弁えないわね。それにアナタ大きく誤解しているわ。私がアードヘッグに従うのは彼こそが真にガイザードラゴンに相応しいからよ。アナタごときよりも遥かにね」

緊迫する状況。

しかしその脇で行われているオークたちの三十七段人間ピラミッドの方が遥かに緊迫しているのが残念だった。

「十傑竜などと、既に終わった戦いの評価をいつまでも引きずって情けないったらありゃしない。次のガイザードラゴンは、アードヘッグに決まったのよ。それをいまだに受け入れずに駄々をこねて暴れるなんて見苦しいことこの上ないわ」

「いいえ終わっていません。ガイザードラゴン継承戦争は、父上が定めるルールの下に競い合い、厳正なる決闘で最後の勝者を決めなければならなかった。それこそ卑怯者が父上を害し、歪めた形で戦いを終わらせようとした。そのようなルール違反を私たちは断固として認めません!!」

宴が盛り上がり、今度はウチのプラティとその母シーラさんがデュエットで歌い始めた。

聖唱魔法ではなかったが……人魚族における『テントウムシのサンバ』的な結婚式に持ってこいの選曲らしかった。

めっちゃ上手い。

「我々は逆賊アードヘッグを成敗し、ガイザードラゴンの称号を再び我々の手に取り戻す! しかるのちにもう一度戦いを行い、真なる次期ガイザードラゴンを正式に決定する! マリー姉上もドラゴンとしての誇りが残っているなら、我らに賛同すべきだ!!」

「嫌よ」

「マリー姉上ほどガイザードラゴンの称号に……頂点の座に執着していたドラゴンはいませんでした。私は同じ座を奪い合うライバルとして、その姿勢を尊敬すらしていましたというのに……!?」

次の出し物は花嫁の友人代表としてベレナが、呪文をブツブツ呟いて神を召喚していた。

……ついにベレナまで神を召喚できるようになったか……!?

「私はね、今さらガイザードラゴンなんてどうでもいいのよ。何故ならそれよりももっと意味ある称号を手に入れたのだから」

「称号、ですと?」

「グィーンドラゴン。すべてのドラゴンの頂点に立つ皇帝ガイザードラゴンの隣に立つ者。皇妃竜。この私にとってはそれこそが輝かしく、蕩けるように甘い名よ。古い因習にとらわれたアナタたちにはわからないでしょうけれど」

「愚かなッ! どうやらマリー姉上もドラゴンとしての気概をなくされたようだ! こうなれば僭帝もろとも成敗して進ぜよう! 我ら十傑竜の手によって!!」

盛り上がる。

今度はこっちで出し物が始まるのかー、と周囲から拍手が巻き起こった!

「違う! 我々のは出し物じゃない! 身の程を弁えぬか下等なニンゲンども!!」

「あのー、さっきから聞きたかったんですが……、その十傑竜って?」

「ああぁッ!?」

俺が恐る恐る質問すると、イケメン竜から凄い勢いで睨み返された。

怖い。

「十傑竜などという呼び名を、最初に言いだしたのは誰だったのかしら? まだ父上が皇帝の座にあり、次代を決めようと子どもたちを戦わせていた時、その候補の竜を実力から上の順に並べていったのよ。十人目までね。ニンゲンたちで言うところの下馬評みたいなものかしら」

強い=優勝候補ってことだから、要するに『一番になる見込みのある強い竜十選』ってことか。

後継者争いがあったころの。

その一番~十番までが束になって押し寄せてきたからさあ大変! って話になるが……。

「それにしても、数合わなくありません?」

さっき口に出した疑問を再び言う。

披露宴に襲来してきた竜たちは全部で六人。

十傑竜なら十人いないとおかしくない?

おかしくない?

ねえ、おかしくない?

「私よ」

「はい?」

「かつては次期ガイザードラゴン最有力候補と言われた私こそが十傑竜の序列一位。当然のことではなくて?」

というブラッディマリーさん。

ああ、はい……!?

「それからかつてアードヘッグに逆らい粛清されたアギベンドが序列三位。いつだったかアードヘッグにケンカを売りに来てボコボコにされたマゴニーが序列九位だったわねえ。本当に身の程知らずな連中だこと」

その言葉は、まるで今目の前にいる竜たちに向けて言われたかのようだった。

「ヤツらがバラバラに攻めてきて返り討ちに遭ったから、今度はまとまってきたということかしら? 一斉にかかれば私のアードヘッグを倒せるとでも? 随分楽観的な考えね?」

「何とでも言うがいい。いかなる手段を使ってもガイザードラゴンの称号を簒奪者の手中のままにしておくものか! 我々がなんとしてでも正当なる場所に取り戻して見せる!!」

「口先ばかりは威勢がいいのね。でも忘れているのじゃなくて? アードヘッグに敵対するなら、彼の妃であるこの私をも敵に回すということが……!」

そう言われた途端に、挑戦者の竜たちが揃って身すくんだ。

「ちゃんとわかっているようねえ。もはや過去のものでしかない十傑竜などという寂れた称号。しかしその中で筆頭を取った私の恐ろしさを……!」

花嫁衣裳のマリーさんだが、ドラゴンの瞳で睨みつけるだけで普通に怖い。

敵対する竜たちも震え上がるくらいに。

そんな肝っ玉奥さんブラッディマリーの後方で、夫となるアードヘッグさんが手持ち無沙汰にしていた。

「やることがない……」

奥さんがアグレッシブすぎて。

最初は勇ましく表に出ていたアードヘッグさんだが、すぐに奥さんにお株を取られるのであった。

「くッ、マリー姉上まで敵に回るとは……!?」

「怯むな! マリー姉上が加わったとて向こうは二人、こちは六人なのだ! まだまだ数の理はある!!」

人数に頼るとどうにも悪役っぽさが出るのはどうしてだろう?

しかしそんな彼らの望みも断ち切るような介入がさらに起こる。

「ふっふっふっふっふ、それはどうかなのだ?」

「何? 何ヤツ!?」

突然の闖入者に挑戦竜たちの気が高ぶる。

そこに立つ少女の姿をした竜は……!

「ヴィールッ!?」

農場住みのドラゴン、ヴィールではないか!?

「ドラゴン同士の争いにおれを呼ばないとは、祭りの楽しみ方を知らない連中なのだー。仕方ないからこっちから押しかけてやったぞ!」

「十傑竜、序列八位のヴィールが!? 気紛れ竜がこんなところで……!?」

えッ? ヴィールもその十傑竜のメンバーなの?

「まあいい、頭数は多ければ多いに越したことはない! ヴィールよ、共に僭帝アードヘッグを打ち倒そうぞ!」

「バカじゃねえの? おれが味方するのはそっちじゃないのだー」

「え?」

ヴィールは当然のようにアードヘッグさんとブラッディマリーさんの側に立ち……。

「おれが味方するのはこっちなのだー。アードヘッグにはめんどくさい皇帝竜をしっかり務めないとダメだからなー。邪魔するヤツは指先一つで原子分解なのだ」

「なにいいいいいいいッッ!?」

「さらにおれだけじゃないのだ」

そう、アードヘッグさんとブラッディマリーさん夫妻の味方をする竜は、ヴィールだけにはとどまらない。

次々と人影が集まってきて。

「グリンツェルドラゴンのシードゥルですわ!」

「プロトガイザードラゴンのテュポン様だ!」

「え? 名乗り必須なのか?……グラウグリンツドラゴンのアレキサンダー!」

ババーンと登場ポーズを取って助っ人現る!

主人公のピンチに今まで戦ったライバルたちが駆けつけるって少年漫画みたいだね!?