軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

706 ヒーロー製造計画

そして、俺たちはヒーローを作り出すことになった。

やっぱり字面だけ見たら世界を裏から操ろうとする秘密結社みたいだな。

具体的にはまずヒーローが身につける変身ベルトの作成から。

存在の格となるギミック付きバックルの部分は後回しにするとして、まずはベルト本体……帯の部分から作っていこうか。

ベルトの帯といえば……やっぱり革かな?

ということでエルフの革作り班マエルガたちの下を訪ねる。

「聖者様!? ご注文ですか!? 久々に我々に御注文ですか!?」

久々って……!?

たしかにここ最近は木工細工班のミエラルや芸術暴走したエルロンの出番が多かったけど……。

でも決してキミらも暇してないでしょう? 日常的に色々な作業をこなしていたでしょう!?

「ご安心ください。聖者様直々のご注文は全力にて遂行させていただきます。御所望はベルトでしたね?」

「ああ、はい……!?」

「それではどんなに引っ張っても引きちぎれない最高級の材質で拵えることとしましょう。こちらのグレイトシープの革はいかがでしょう? 五つ星以上の危険ダンジョンにしか生息しない大型魔獣で、その革は伸縮性がある上に湿気にも強く長く使うことができますわ」

他多くのエルフがそうであるように、マエルガもまたモノづくりとなるとのめりこむタチであった。

……ただオモチャのベルトのパーツが欲しかったんだが、このままの勢いでいくと大層なブランド品が出来上がってしまいそうだ。

「それにしても聖者様……やはり父親になるくらいですから、お年もめされたということなのですかね?」

「?」

「そう気を落とさないでください。加齢による体型変化はよくあることです。新作は、長く使えるよう丈に余裕を持たせておきますので……ベルト穴も増やしておきましょう……」

ちょっと待て。

もしかして……アレか? 俺が新しいベルトを所望しているのは、今使っているのが窮屈になったからとでも思っているのか?

違うぞ!

俺は腹は出ていない!

まだまだ俺の腹はでっぷりしていない!

新作ベルトもこれまでのサイズでまったくかまわないんだからな!!

「いっそのこと吊りベルトにでもなさいますか? あれなら腹回りなど関係ありませんよ?」

「結構です!」

どこの世界に吊りベルトで変身するヒーローがおるか!?

* * *

そうして何とかベルトの帯部分をゲットした俺だが、謎の疲弊感が残った。

『聖者様、お腹が出っ張られた疑惑』はその後も残り続け、俺は不審の視線を向けられていくこととなる。

「何か大きなものと引き換えに得てしまったな……!?」

このベルトの帯。

しかしこれが最終地点ではない。大いなる計画の第一歩に過ぎないというんだから、益々肩も重くなる。

いいや、これくらいでへこたれていてはダメだ。

このファンタジー異世界でもヒーローを創造し、ジュニアやノリトたちにも夢を見せてあげるんだろう。

そのためにも、ここで父親がくじけてどうする!?

子どもらのためなら、この腹が一段二段出っ張ろうと何ほどのことよ!

ということで変身ベルト作成を続けていきます。

ベルト帯の部分は揃ったので、次はバックルを拵えんとな。

腰に巻いてもそれを留めなければベルトとしての機能を果たせない。

そんなベルトを留めるための金属部分をバックル、もしくは尾錠という。

変身ベルトは尚更このバックル部分が重要となる。

何しろ全シリーズを通じての変身システムの要になるんだからな。

バックルが風を受けるから変身するんだし、バックルにカードデッキを差し込むことで変身するんだし、バックルにカブトムシをアタッチメントすることで変身するのだ。

ヒーローにとってバックルこそが最重要の命。

バックル部分のギミックがカッコいいかどうかで玩具の売れ行きも違ってくる!

……そんな重要なバックル部分の制作は、既にドワーフさんたちにお願いしております。

バックルといえば大抵金属製だし、金属加工といえばドワーフの右に出る者はいない。

今回もマナメタルを適性分引き渡しておいたので、それを材料にいいものを拵えてくれるものと期待してますぞえ。

そんで今日が納入日。

ドワーフ王エドワード親方が農場を訪問されていた。

* * *

「マナメタルの扱いにはもう慣れました?」

「どれだけ触ろうとこれだけには慣れそうもありませんや……!」

ドワーフ族最高の職人でもあるエドワードさんは、世界最高金属マナメタルに触れたり見たりすると心臓が止まる癖があるので、なかなかスリリングで大変なのだ。

今回も止まった?

「聖者様たちには、いつもやりがいのある注文を頂けて、ありがたいと思っているぐらいでさ。今回も非常に興味深い仕事でした」

「そう言っていただけたら、こちらも心苦しさが減ります」

毎度毎度無茶ぶりな注文してるんじゃないかって不安だったからな。

でもわかるよ、ドワーフの皆さんも燃える職人気質を持ち合わせて、未知の品物を作り出すことに魂を燃やしてるんだって!

「ではまず先生からのご注文の品を……、こちらです」

『ご苦労様』

おう、ノーライフキングの先生も来ていらしたんですか?

エドワードさんが先生にお渡ししたのは、何やらキラキラと美しい小箱。

いつぞや言っていた、卒業生たちからの手紙を保管するための箱か。

キラッキラに輝いているではありませんか!?

「ご注文通り、我らドワーフの職工技術の粋を集めました。表面には五十種類に及ぶ宝石をちりばめて飾り、その輝きは海底で聳える虹色サンゴにすら引けを取りますまい」

『ふむ、様々な色の宝石が、調和を考えて配列してあるから輝きに一体感があってけっして下品ではないのう。それこそ真珠のうっすらとした虹色の輝きのようじゃ』

なんか寸評が始まっている……!?

「外装素材には、お預かりしたマナメタルを使用していますので強度硬度は折り紙付きですぞ。まあ、見ていてくだされ……」

そう言ってエドワードさん、めっちゃ重そうな大斧を取り出して……。

小箱目掛けて振り下ろす!?

なんてことを!?

しかし激突の瞬間、競り負けて砕け散ったのは大斧の方だった。

まさにオーノー!っつってね!

「……ははッ、鋼鉄製のバトルアックスでは文字通り太刀打ちできませんな。斧の方は砕け散ったというのに小箱は……、掠り傷すらありません」

『これはマナメタル自身の強度だけでなく、ドワーフたちの技術でより硬い構造となっているおかげじゃのう。いつも通りよい仕事じゃ』

「次の仕掛けのご説明を……。どんなに外殻が頑丈でも、簡単に開いて中身を盗み取られてしまうようでは話になりません。……箱のこの部分に、指を押し当ててくれませんか?」

エドワードさん、小箱の普通鍵穴がついているであろうかその平らなところに先生の右手親指を何回か触れさせる。

「これでこの箱は、先生の指先を覚えました。これからは先生が触れるだけで箱の鍵は開きますが、それ以外ではどうやっても開くことはありません」

指紋認証!?

こちらの世界で現代知識に頼ることなくそんなものを実用化するなんて、これがドワーフ驚異の工芸力!?

「箱の内外に散りばめられた宝石にかかった呪いが様々な現象を引き起こすのです。その代わりと言っては何ですが、様々な宝石による多重呪力がかかっていますので、普通の者では所持しただけで呪いに蝕まれて動けなくなりましょう。強力な呪詛対抗力を持ったノーライフキングなら話は別ですが……」

要するに先生以外の人が箱ごと持ち去ろうとしてもどうにもならないってこと?

凄まじいな。

でもそれならエドワードさんはどうやってここまで箱を持ってきたの?

『いや、期待以上の仕上がりじゃな。見た目の煌びやかさだけでなく盗難対策の機能性まで充実しているとは。技巧世界一と謳われたドワーフ工房に依頼した甲斐があったわい』

先生は早速箱の中に手紙を仕舞い、それでホクホクとなっていた。

……改めてドワーフさんの技術の凄さを目の当たりにしたな。

そんな彼らにお任せすれば、変身ベルトもなんか物凄いクオリティになったりするんだろうか!?

「お待たせしました。次は聖者様からのご依頼の品を……!」

「おお、来ましたな!」

早速ドワーフさんたちが拵えた、期待の品を確認と行くか!

変身ベルトのバックル部分!

それは、ドワーフ製だけあってやたら派手派手ゴテゴテの外見をしていたぜ。

まさに変身ベルトという感じだな。

「えー、ご注文に従って、やたらと大き目に作ったんですがこれでよかったんですかい?」

これでいいんです。

「あのエルフ野郎の意見に従うわけじゃないですが。これじゃ機能性が余りに損なわれますぜ? 日常使いする品だからこそ機能的であることは大事でしょう?」

大丈夫大丈夫。

このベルトには、日常使いする以上に大事な機能性を追求しているのだから。

さあモノは揃った。

計画は次の段階へと移行する!