軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

68 魔女の座談会

「ここ、どう思う?」

『凍寒の魔女』パッファが言った。

全体的に青っぽい長髪がセットもされずにボサボサの、ワイルドな印象の女性だった。

「どう? と聞かれても俄かには答え難いですね。しかし異様な場所だということはたしかです」

『獄炎の魔女』ランプアイがそれに応える。

彼女は、そのあだ名の通りに真っ赤に燃え盛る赤髪をポニーテールにまとめている。

前歴が兵士というだけあって活発そうな女性。

「私にとっては天国ですぅ……! 一生ここで働きたいですぅ……!」

そして『疫病の魔女』ガラ・ルファ。

彼女は、人魚にしては地味な髪の色で、艶めく黒髪。それを短く切っておかっぱ頭の少女然とした印象だ。

「プラティや迎えに来た魔族は、ここを開拓地だと言いやがった。つまりここは街でも村でもない。これからそれを作ろうっていう土地なんだろう」

「結局のところわたくしたちは服役中の受刑者ですし。服役地としては妥当なんじゃないですか?」

「開拓作業が労役ってわけかよ……!?」

俺が彼女たちを見かけたのは、プラティの醸造蔵の裏手を通りかかったときだった。

体育館裏で屯する不良娘みたいなノリで額を合わせている。

「でも、それは別にいいです。敬愛するプラティ姫の下で働けるというなら、人魚宮で近衛兵やってた時と何も変わりないですし」

「ケッ、アタイは不満だけどな。体制に屈するなんて情けないにもほどがあるぜ」

「反骨精神旺盛なのですね。アロワナ王子にはベタ惚れのくせに」

「なあッ!?」

「傍から見てればモロバレですよ。パッファさんって、ああいう系が好みなのですね」

「いやいや! カッケーだろ王子! さすが未来の王様って貫禄じゃん!?」

「…………」

「同意しろよ王家のコバンザメ!?」

女の子らしい話題で花が咲いている。

何やら密談かと思ったら違うようだ。

「あの……、恋バナするぐらいなら戻りませんか?」

おずおずと、しかしキッパリとガラ・ルファが言う。

「頭の中を整理したいって、私たち願いをプラティ様が聞き入れてくれたから私たち、こんなところでくっちゃべっているのですよ? 無駄話しかしないなら早く戻って、プラティ様から、さ、細菌とやらの詳しい説明を聞きたいですッッ!!」

「落ち着け医学オタク!!」

「そうですね。では単刀直入にわたくしが一番懸念していることを相談したいです」

『獄炎の魔女』ランプアイが声を潜めて言った。

「……ここ、魔族の勢力圏じゃないですか?」

と。

「そう思う根拠は?」

「迎えにやって来たバティさん、でしたか。彼女は典型的な魔族でした。さらにここで働いているのはオークやゴブリン……。魔族が好んで使役するという擬人モンスターです」

あー、なるほど。

そう思っちゃうわけか。

「この開拓地の主人――、聖者様と呼ばれているようですが、その者も魔族である可能性が高い。そこで思い出すのが、プラティ様の結婚話です」

「え? そんな話があるの?」

「知らないんですかアナタ?」

「だってアタイ一年以上独房に閉じ込められてたんだぜ? 外界の情報なんて入ってこねえよ」

「まあ、わたくしだって似たような境遇でここ数ヶ月の世の中の動きなんてまったくわかりませんが……。でももし、プラティ様が魔族との結婚を承諾したとしたら……」

「ここにプラティ様がいることの、辻褄が合う……?」

ガラ・ルファの呟きに、ランプアイが激烈な反応を示した。

「なんてお可哀相なプラティ様!! 政治に翻弄された挙句、魔族なんかの妻にされてしまうなんて!! それで、こんな不自由な陸暮らし!?」

「陸暮らしの境遇に置かれて可哀相なのはアタイらも一緒じゃん?」

「わたくしたちにはそうなるべき罪状があるから別にいいんです!! ……でもプラティ様は、何の罪がないのにこの酷い仕打ち……!!」

「ホントにそうかなあ……!?」

「お姫様だから色々大目に見てもらえてるだけで。あの人も『王冠の魔女』ですし」

プラティ、ボロクソな言われ様。

しかし、彼女たちの喋るに任せれば任せるほど、深刻な方向に推測が突き進んでしまう!

ここはこの俺が、偶然通りかかって立ち聞きしていたこの俺が、華麗に軌道修正を試みるべき状況と見た!!

「あのー、ちょっといいですか?」

「「「うわあッ!?」」」

突然話しかけてビックリさせてしまったようだ。

「なんだテメエ!? いきなり声掛けんなよ!?」

「人族……!? いえしかし、何だか毛色が異なるような……?」

彼女たちは、ここが魔族の勢力圏と思っているようだから、一見人族と思える俺が唐突に登場するのは混乱するだろう。

「初めまして。俺はここの住人なんですが、もしよろしければご案内しましょうか?」

「「「え?」」」

その提案に、三人は戸惑いを隠しきれないようだった。

「案内って、わたくしたちプラティ様をお待たせしているんですが……!?」

「そうだよなあ? 仮にも労役する身としては、初日から勝手なことをしたら立場がヤバい」

「待ってください」

そこにガラ・ルファが割り込んだ。

「是非とも案内してもらうべきだと思います」

「ガラ・ルファさん!?」

「マジかテメエ!?」

意外にも一番大人しそうな子から一番思い切った意見が出て、現場は騒然。

「私たちがこれからここで生きていくためにも情報収集は怠れません。特にここの主人であるという聖者と対面するより前に、少しでも多くのことを知っておくべきだと思います」

「それもそうですね……! ここの主がどんな者か、先に知っておくだけでもこれからの展開が有利になります」

「ケンカの前に敵をよく知っておこうってか!? いいねえ、アタイそういう考え方大好きさ!」

ハイ。

「人族の方、ご厚意に甘えて案内をお願いします。この地のことを詳細に、出来るだけ多くのことを教えていただけませんか?」

「ただし! この土地の主だっていう聖者には秘密でな! アタイたちがこうして嗅ぎまわっていることは絶対知られたくねえ!!」

「お願いします! お願いします!」

……。

あいわかった。

キミたちのことは聖者には絶対秘密にしておきましょう。

そもそも聖者って誰?

俺はヒトから聖者って呼ばれることを頑なに拒否しておりますから、アイアムノット聖者。

というわけで問題なし。

では彼女たちに、我が開拓地を案内してあげるといたしますか!!