軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

687 地の偉大なるママみ

ピラミッドが難攻不落と化しておる。

大地の精霊が立てこもる世界遺産は、内部のダンジョンかと罠満載も相まって攻めるに難く守るに易し。

ピラミッドの頂点に登る大地の精霊が、勝利宣言のように言う。

「てっぺきのまもりですー!」

「まりもですー!」

「とーやこですー!」

「まりもっこりですー!」

何が言いたいのかわからないが、盛り上がっていることだけはたしかなようだ。

ピラミッドパワーによって相当酔っぱらっている。

「このまま長期化するのはマズいぞ、何か手を打たなければ……!」

ピラミッドはどうでもいいんだが、大地の精霊たちがこれ以上おかしな行動をとるのは看過できぬ。

俺たちは、いつもの可愛い精霊たちをお家に迎えたいのだ!

しかしながらピラミッドの難攻不落さと、ヘンテコになりながらも全力フルスイングな大地の精霊たちの抵抗によって、攻略は遅々として進まない。

「一体、どうすればいいんだぁ……!?」

『古来より城攻めには、それに合った方法があると聞く……』

なんだよアヌビス神?

いいアイデアがあるならさっさと言え?

「しかし城攻めか、言えて妙かもな……!?」

ピラミッドという巨大建築物に立てこもり、攻める側と守る側に分かれたこの騒乱はまさに攻城戦。

なんかの小説で読んだことがある。

城攻めには敵の十倍の兵力が必要だと。

『しかし、だからこそ城を落とすのに有効な戦略も研究され、ノウハウ蓄積されてきた。その知識を紐解けば今、何が必要なのかおのずとわかるというもの』

おお!

教えてくれ神様! 城攻めに必要なものとは!?

『兵糧攻めだ!』

「……」

『人は食わねば生きられない。城を囲んで食物の供給を断ち、飢えさせれば士気も落ち、必ずや降参してくることだろう! これこそ城攻めのもっともスタンダードな方法!』

「却下」

『なんでッ!?』

当たり前だろうアホ!

相手は小さくて可愛い大地の精霊だぞ! そんな子をお腹空かせて泣かせたら可哀想じゃないか!

そんな残虐非道で冷血無比なマネは俺にはできないね!

ノーライフキングの先生も反対なさるぞ!

『そもそも精霊らはマナの活動源にしておるから、大地から無限に供給されて枯渇などには陥らぬでしょうよ。まして問題のピラミッドパワーで増幅までしておりますからのう』

根本的に無理のある戦略だった。

って言うか先生お越しになられていたんですか?

いや、そもそも俺たちはこのイベントにそこまで時間をかけたくない。

兵糧攻めなんて定義的に持久戦になるしかないんだから、そんなに長いこと大地の精霊たちと触れあえないなんて悲しすぎる。

こちとら一冬待たされてんだぞ!

「先生、何かいい案はありませんか?」

『そうですのう?』

ここは真の知恵キャラにして農場で一番賢い先生にご相談しよう。

『そうですなあ、困った時はその道の専門というか、担当者に聞くのが一番いいでしょうな』

『ピラミッドの専門家は私だが』

アヌビス神お前じゃねえ座ってろ。

『この場合、あの大地の精霊の子らの専門と言いますか、早速お呼びしましょう』

そう言って杖を振る先生。

すると召喚されて現れたのは、冥神ハデスとその奥さん地母神デメテルセポネであった。

「おおー、なんか久しぶり」

最近異界の神ばっかり召喚されてたのを鑑みるに、地元神の招来は逆に新鮮味すら感じる。

ご無沙汰しております、お茶でも召し上がられますか。

『…………』

まずハデス神が無言で視線を巡らせる。

その視線から逃れるように身をよじらせるアヌビス神。

『アーヌービースーくぅん? キミ、こんなところで何しているのかなあ?』

『いやー、奇遇ですな。こんなところで会うとはなんともはや……!?』

『そりゃ会うに決まっているだろう? ここは我らが治める世界だぞ?』

そう言ってアヌビス神のマズルを握り上げるハデス神。

さっき俺がやったのと同じだ!?

『ヒトのシマ荒らしてどういうつもりかな? あぁん? 返答次第ではお前らの世界にカチコミかけてもいいんだぞ? スフィンクスの起源がどっちかそろそろハッキリさせようかコラぁ?』

『イデデデデデデ申し訳ありません! アナタのシマを荒らそうとしたつもりは一切なく、友だちの家に遊びにきた感覚で!!』

やっぱりヒト様のテリトリーに無断で侵入したら、神様同士でもイザコザがあるってことか。

『挙句聖者の農場にあんな大層なものまで建ておって。ここ、我らが世界でもアンタッチャブルなんだがなあ? お陰で……あーあー、地脈のマナを大いに乱しおって、あの等辺四角錘のせいだぞ? 建てるならパルテノンを建てろパルテノンを』

『ワシからもお詫びいたします』

そもそもの始まりとして、先生が異神たちを召喚したことにあるので謝罪する先生偉い。

『しかしこうなっては、この世界の大地のマナを管理するハデス神のお助けを借りるしかないと思い……! そもそもあの子らが実体化したのもハデス神らの思し召しですゆえ、どうかご慈悲を……!』

なるほどそう言うことか!

たしかに通常実体のない大地の精霊があんな可愛い姿になったのは、ハデス神がこの地域に加護をくれたのがきっかけだった!

ここでハデス神にお頼りするのは、いわばカスタマーサービスに連絡するようなもの。

お願いハデス様! なんかいい感じにポポポーイと解決して!

『ええい、困った時だけ丸投げしおって。神の恩恵には相応の対価を頂くからな!』

もちろんあの可愛い大地の精霊たちが戻ってくるならばいつもより多めに腕を振るってご馳走を作りますとも!!

『では家内よ、頼むぞ』

『はいはーい』

呼ばれて進み出るハデスさんの奥さんデメテルセポネ。

ハデス神もまた丸投げですやん。

『大地のマナ管理は究極的な意味で妻の領分なのだ。だからこそ余は妻に最大限の敬意を払っておる!』

そんなこと大威張りで言われても……!?

その一方で頼りにされたデメテルセポネ女神。

ハデスさんの妻で冥界の王妃ともいうべき彼女は、ピラミッドの外から大声で呼ばわる。

『そろそろ帰ってきなさーい、晩ごはんの時間よー』

「「「「「「「はーいですーッッ!!」」」」」」」

すると見る間にピラミッドから出てくる精霊たち。

立てこもりなどウソであったかのように、地母神の周りに群がる様はまさしく子だくさん家族!?

「たくさん遊んで、たのしかったですー!」

「きょーのばんごはんは何ですー!?」

「ママだいすきですー!!」

これが地母神のママみ!?

神話級圧倒的母性の前に、大地の子どもたちはピラミッドパワーの歪みも吹き飛んだ!?

『今日はたくさん遊んだわねー。楽しかった?』

「かくめーごっこ、たのしかったですー!」「内ゲバで、くーちゅーぶんかいするまでがかくめーですー!」

大地の精霊たちも無事正気に戻って、事なきを得たのだった。

「凄い……、これが大地の母の力……!?」

『ウチのワイフは凄いんだぞ? 万象母神ガイアの力をもっとも強く受け継いでおるし、お前たち人類が生きていられるのも彼女のお陰なんだぞ?』

それでいて深い愛情と、懐の深さ。

神の母性とはこういうものか。

「それはそれとしてアヌビスさんはピラミッドの調整お願いしますね?」

『はい……!?』

二度とこのような騒動が起こらぬように。

* * *

こうして大地の精霊は、ハデス神やデメテルセポネ女神たちと夕飯のハンバーグを食べて団らんとなった。

ついでに、かつての雪まつりで生み落とされた徒花、クリーチャーゼウス像をハデス神にお見せしたらゲラゲラ笑ってくれて、お土産にお持ち帰りしていった。

ついでで厄介者を片付けられてよかった……!!

そんなこんなでちょっと早めだが大地の精霊たちも活動を開始し、いよいよ春が訪れる……!!