軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

661 オークボ城vs冬将軍

冬のお馴染みイベントとしてすっかり定着してしまったのがオークボ城。

年に一回行われるイベントである。

元々は農場のオークたちが冬の農閑期、暇つぶしも兼ねた趣味の実行で始めた城作りが、いつのまにやら城郭攻略型の一大イベントに発展してしまった。

今では毎年開催されるオークボ城攻めに、世界中から挑戦者たちが集まってくる。

今年も冬が来たから当たり前のようにオークボ城を開催しようと思っていたんだが……。

……中止になりそうだった。

* * *

「こりゃひでえ」

オークボ城が開催されるのは、人間国にあるとある領地。

そこに城を建てる絶好の立地があって、オークボたちが心惹かれたのが始まりだったりする。

この地の領主さんとも良好な関係を築けて毎年のオークボ城開催を円滑着実にしてくれたが。

今年はちょっとマズい状況になりそうだった。

大寒波だ。

今年は百年に一度と言われそうなほど凄まじい寒波が襲ってきて、オークボ城が開催される領地もその影響範囲に入ってしまった。

連日大量の雪が降り積もり、各町村では玄関のドアがすっぽり隠れてしまうほどの積雪。

当然オークボ城の開催地にも雪は積もりとてもイベントを開催したり、出店を設営するなどとても無理な状態。

そうでなくても積雪は広範囲に及び、街道も封鎖されて交通マヒを起こしている。

それだけでも大事なのに、各領主はこの天災に対処しようとてんてこ舞いで、とても娯楽にかまっていられる余裕などない。

そりゃ流通が滞ったら場所によっては命に係わるかもしれない。

人間国の大部分の領主が、我が地に降り積もった雪を掻き分け、通路を確保しようと躍起になっているし魔王軍も協力を惜しまない。

そんな大変な時期に『イベント開催しましょうぜ』といえるわけがない。

言ったら絶対無神経だろうよ。

そういうわけで今年のオークボ城はやむなく中止……。

……にするかどうかはさておいて。

こうなっては俺たちも手をこまねいて見ている選択肢はない。

普段からオークボ城開催でお世話になっているのだ。

そのご恩返しというわけではないが困っているこの状況を打開するために少しでも、俺たちのできることをしようではないか!!

ということで農閑期でヒマな農場住民の多くが人間国へ出向いて、雪かきをすることになりました。

メインの人手はオークボを筆頭とするオーク軍団。

パワー自慢の彼らの進軍は、雪など容易く掻き分けて人間国内の主要街道をすべて平坦にしていった。

それにかかった時間、約五日。

通常のオーク数千に匹敵するという変異化オークの筋力が功を奏し、一時は雪に閉ざされ寸断の危機にあった各村各町もそれぞれの行き来を取り戻した。

* * *

「本当にありがとうござます!」

心から安堵した表情で語りかけてきたのは、人族の領主ダルキッシュさんであった。

オークボ城がある領の領主さんで、俺たちも何度となくお世話になっている。

「今年の雪は、例年とは比較にならない量で、死人を覚悟するほどでした。しかも多数の。しかし実際には一人の犠牲もなく切り抜けられた! すべて聖者様のお陰です!」

「いやいや、実際働いてくれたのはオークボたちだし……!」

厚く降り積もった雪を掻き分けオークボたちが進む姿は、まさしく砕氷船が流氷を砕いて進むかのようだった。

あるいは人間除雪車。

いやオークだけど。

自動車とまったく変わらぬと思えるほどの速度で突き進むオークたちの通ったあとは、綺麗で平坦で、整地された街道が剥き出しになるだけであった。

「せっかく戦争が終わって、人間国もだんだん豊かになってきてるんだから。ここでまた逆戻りは困りますからね。俺たちにできることであればやりますよ」

「なんと慈悲深い……! やはりアナタは聖者様なのですね……!」

んな大袈裟な。

それにダルキッシュさんの口ぶりではすべてが解決したような感じになっているが、そんなことはない。

問題はまだまだ継続中なのだ。

雪問題は。

「これ、どうしましょうかね……!?」

「たしかに……!?」

俺とダルキッシュさんの面前には、山かと見紛うような超大量な雪が積み上げられていた。

……いや、実際山だった。

これが何かというと人間国のそこら中から掻き出して、取り除いた雪を一ヶ所に集めた結果だった。

いや、だって。

人間国の大半を覆うほどの範囲に、成人男子がやっと首出して呼吸できるかってぐらいの高さまで降り積もった雪ですよ。

それを主要街道が使用可能になる程度でも掻き出したとして、取り除いた分を一ヶ所に集めたら山のようになりますわい。

え? だったらなんで一ヶ所に集めたのかだって?

道を切り拓くためならその横にでも積んどけと思われるだろうが、やっぱりあまりにも多い雪だったので、その場に除けとくだけじゃ地震でもあってまた街道に雪崩れ込んで元の木阿弥になるんじゃないかなと思って……。

転移魔法やら色々使ったら案外楽に一ヶ所に集められたので特に考えもなく一ヶ所に集めたらエラいことになった。

「これ春になったら全部解けますかねえ……?」

「十年経っても残りそうですけれど……!?」

ダルキッシュさんの見解に『んなバカな』とも思ったが、すぐにあながち冗談でもないと思ってキリリと胃が鳴った。

何故なら、ここはいつも風雲オークボ城を開催する会場。

除いた雪を集めるのに、普段使用していないちょうどいい場所を探してすぐここが思い浮かんだからだ。

ここってオークボ城が開催されてない夏場なんかは完全にまっさらな空き地なんだし、仮置き場にしておくにはちょうどいいだろう~……と思って深い考えもなく積み上げたらとんでもないことだ。

雪の山が、オークボ城の天守閣より遥かに越える高さまで積み上がっておる。

ダルキッシュさんの言う通り、夏の猛暑にも耐え抜いて数年は生き延びそう。

「……ところで聖者様、今年のオークボ城なんですが……?」

「あッ、その話題そっちから振ります?」

むしろこっちから聞こうと思って中々切り出せず、タイミングを窺っていたのに。

オークボ城の実行者はあくまで俺たち、ダルキッシュさんは土地の主として許可を出す方。

しかしこの大雪の被害でてんやわんやの時に娯楽イベントを例年通り開催するかどうかお伺いを立てるなど、顰蹙を買いそうじゃないか。

いや百パーセント買う。

というわけで聞けずにいたことを、向こうから聞いてきてくれて、助かる!

「いや、我が領にとってもオークボ城の開催は重要なんですよ。何しろ年に一回世界中から人が集まってきますから。滞在費その他もろもろ落としていくお金の額がけた違いなんです。近年はそれをあてにして開業した人も多くいますし……!」

オークボ城が、地元にそんな経済効果をもたらしていたなんて……!?

それじゃ、もしこの大雪でオークボ城が開催中止になった日には……!?

「その暁には首を括らなきゃいけない者まで出る始末ですよ」

「経済がオークボ城に依存してるじゃないですか!?」

オークボ城が既に娯楽の範囲からはみ出してしまっていた。

これは困ったものよ。

単純に今年の大雪で今年はお楽しみのイベントなしかーなんて残念に思っている次元の話じゃなかった。

経済から波及して人の生死に関わる段階に入っている。大雪でも充分死命を分けていたというのに。

しかも問題はそれだけにとどまらない。

オークボ城会場地にここまで大量の雪を積み上げたのも問題だった。

さっきも言った通り、十年越しでも全部溶けなそうな雪なんか積み上げたら、その間イベントも開催できないってことじゃん。

オークボ城向こう十年中止確定。

なんでここに積み上げちゃったかな?

こんなことなら海にでも捨てればよかった。雨にしろ雪にしろ、天から降ってきたものはいずれ川を伝って海へと流れ込むんだから。

「……んッ? 待てよ?」

その瞬間、俺に電流走る!

いいアイデアが浮かんだから!

このアホみたいに積もった雪の山を処理し、同時にオークボ城の開催を実現できる最高の手を!

「ダルキッシュさん、今年は趣向を変えてやってみようと思います!」

「え?」

「風雲オークボ城・雪まつり編です!!」