軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

64 人魚囚 一人目

アタイの名はパッファ。

人魚法廷で五百年の禁固刑を食らった犯罪者人魚さ。

しかし人魚国ってのは本当に肝っ玉も懐も小さいもんさ。

アタイの偉大な研究も理解できずに、牢屋にぶち込んでまで中断させたんだからね。

アタイの研究が成功していれば、今頃人魚国は世界一の強国にのし上がって陸人も根絶やしにできていただろうに。

でも残念。その輝かしい未来は、おとぎ話のお姫様みたいに泡となって消えてしまいましたとさ。

一部の蒙昧な輩の血迷いによってね。

もういいさ。

せっかくアタイが、この貴重な頭脳と魔力を人魚族のために使ってやろうとしていたのに、邪魔だって言うならもう何もしねえ。

人魚族は安穏と惰眠を貪り続けて、魔族にでも人族にでも滅ぼされちまえ。

そう思いつつ、独房で何の刺激もない毎日を過ごして……、十年ぐらい経ったかな?

アタイはいきなり外に出された。

そして、実際には判決を言い渡されてから二年も経っていないことを告げられた。

クッソ、マジかよ?

独房での何もない生活退屈過ぎて苦痛過ぎ。

たった二年足らずが十年以上に感じるなんてよ。

常人の数倍速く思考が回るアタイみたいな天才には辛すぎる罰だぜ。

また用が済んだら独房に戻されるのかよ?

クソ、どうせ死ぬまで出られないなら、さっさと死刑にすればいいだろうによ?

とか思っていたら、独房から出された先の面会室で、思ってもみない相手に出会った。

あらやだイケメン♡

と思う程度には顔形の整ったハンサム男だった。

「私は、人魚国の支配者ナーガス王が長男アロワナ。その名は聞いたことがあろう?」

とか思っていたら王子様かよ!?

道理でハンサムなはずだぜ。いや違う。

アタイの大嫌いな体制側のトップ。未来の王様かよ。

クソ、ときめいて損した。

「狂乱六魔女桀が一人、『凍寒の魔女』パッファで相違ないな?」

やめろよ、そのあだ名。

イキッてる子供が一生懸命頭を捻って考えました感が満載で恥ずかしいんだよ。

「人魚国の法にて研究が禁止されている海底マナ流の操作理論を専攻。海中のマナを思うがままに操り人魚国を滅ぼそうとした疑いか。たしかに終身刑に近い判決を受けるに相応しい罪状だ」

だから違うっつうの!

アタイの唱える理論が実用化されれば、世界を滅ぼすことも可能で、つまりそれぐらい実用性が高いってことだろ!

悪用しなきゃいいだけの話じゃないか!!

「その辺りの議論は裁判で散々やり尽されている。今は横に置いておこう」

置いておくのかよ?

じゃあ何しにアタイに会いに来たんだよ?

「お前と取引をしに来た」

取引?

「お前に下された判決は、海溝牢獄にて禁固五百年。普通なら生きているうちに務め上げるのはとても不可能な期間だ。しかしこれを、刑罰の種類を変えることで刑期を縮めることができるようにした」

マジかよ。

刑期が縮まるって、どれくらい?

「十年」

は?

十年?

刑期五百年が、四百九十年になるってこと?

「いや違う。刑期五百年が、刑期十年になるということだ」

マジですかッッ!?

やる! やります!!

切り替えます刑罰。たった十年で自由の身になれるんなら望むところであります!!

「滅茶苦茶食いついてきた!? ……しかしいいのか? 新しい刑罰が具体的にどんなものか聞きもせずに……!?」

こんな退屈な場所で死ぬまで燻ってるよか絶対マシだよ!

さっさと手続きしてくれ! こんな大チャンスを考え出したどっかのバカが「やっぱやめた」とか言い出す前に!!

「わかったわかった……! では凍寒の魔女パッファ、『可』と。これで定員が一人埋まったな」

定員あるのかよヤバい!

やっぱり即座に承諾してよかった! ヘタに迷った挙句「もう応募締め切りになりました」とかならずに本当によかった!!

「では残りの候補との面接が終わるまでお前には待っていてもらおう。顔ぶれが決まったら改めて呼ぶ。そして新たな服役地へ向かってもらう。ちなみに禁固刑から懲役刑になるのでそのつもりで」

はいはい! 労役に服せってことね!

アタイにとっちゃ退屈の方が遥かに苦痛だからむしろ助かるよ!

今日は凄くいい日だ! 普通に釈放された気分だ!

早く面接とやらお終わらせて迎えに来てね! 待ってるからね!

それから王子!

大切なこと聞き忘れた!

今、彼女いるんですか!?

* * *

こうしてアタイは新天地にて新しい刑に服することになった。

アタイ同様の選択をして、アタイと共に新天地に赴く囚人は他に二人。

どちらも聞いた名前だった。

『獄炎の魔女』ランプアイ。

『疫病の魔女』ガラ・ルファ。

どっちもアタイ同様、狂乱六魔女桀の一人じゃねえか。

ヤバいよ。

狂乱六魔女桀なんて恥ずかしい呼び名をされてるけど、そのメンバーに数えられてる連中の実力、イカれっぷりは本物なんだ。

その括りに入ってるアタイ本人が言うのもなんだけど……。

六魔女のうちの半分がまとめて投入される新服役地ってどんなところなんだ?

まさか陸人の戦場で、アタイらは特攻戦力として投入されるとかじゃないだろうね?

まあそれでもババアになるまで独房で退屈するよりは全然マシでいいけど。

人魚兵どもに厳重に護送されつつ、泳ぐこと……。

どれくらい?

目隠しされながら泳いだからどこをどう泳いだかまったく見当がつかねえ。

そして着いた。

陸地だった。

は!?

アタイたちに新しい服役地って、陸なの!?

「到着だ!!」

アタイたちに同行していた王子様が言った。

「ここが聖者殿の住む開拓地である! お前たちには今日よりここで、聖者殿の命令に従って労役に服してもらう!! それがお前たちへの新しい刑罰だ!!」