軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

646 youはshake

しかし鮭が釣れるとはなー。

せっかくなのでその身は有り難くいただき、我らの血肉と変えさせていただこうと思う。

さすがにこれ以上釣っても持ち帰り切れないから大物鮭を最大唯一の釣果として持ち帰った。

「おかえりなさーい。……うおッ!? またデカい魚釣ってきたわねー!?」

出迎えたプラティが一目見て鮭の巨大さに打ち震える。

「サー・モーンじゃないの!? よくこんな強力な魚モンスター釣り上げてきたわね!」

「えッ、これもモンスターなの?」

こっちの世界じゃ釣ってきた魚大体モンスターだよな。

この鮭は正確に前の世界の鮭ではなく、鮭によく似た姿かたちの魚モンスターだったのだ!

でも今までの経験から言って、前世界とよく似た魚のモンスターは味も性質も似通っているから、調理方法も大体通じる。

これでもって美味しい鮭料理に挑戦しよう!!

あッ、そうだ大事なことを報告し忘れた。

「この鮭ジュニアが釣ったんだよ! 凄いでしょう!? 二歳で鮭を丸々一匹釣り上げるなんてウチのジュニアは天才かもね!!」

「えッ? ジュニアに釣りをやらせたの?」

それを聞いた途端、プラティの表情がみるみる変わり……?

「なんて事させるのよ!? ジュニアにまだ釣りは早い! 早いわよおおおッ!!」

「えッ? どうしたの!?」

やっぱり危ないのがダメだったかな?

それでもここまでの剣幕で怒られるとは!?

「ジュニアにはまだお嫁さんは早いわ! もう少しママ大好きな我が子でいさせて!」

「どういうこと!?」

あッ、そうか!

そもそも俺とプラティの出会いが、俺の海釣り中に人魚のプラティを釣り上げたことだった!

「違うよ! 釣りは地上人と人魚のマッチングアプリじゃないからね!?」

普通は嫁さんを釣ったりはしません!

だからジュニアも釣りに行って嫁さんをゲットしたりしないから安心して!

「殺す! ジュニアに言い寄る女はすべて殺す!」

「シーラさんに似てきたよプラティ!?」

これが男の恐れる嫁姑戦争の常にくすぶり続ける火種なのだろうか?

まあ未来に起こりうる戦争は、未来の知恵に解決を託すとして……。

今は鮭を全力で美味しい料理に昇華させるとしよう!!

「えッ? サケ?」

そこへ出てきたのはバッカス。

酒の神と呼ばれるお酒大好きすぎる存在だ。

「サケ? サケなのか? どこだ?」

と言ってキョロキョロするバッカス。

「いや鮭だよ?」

「だから酒だろう?」

……。

行き違いがあった。

「そうじゃなくて鮭だよ魚の。アルコールの酒じゃない。ノンアルコール。オーケー?」

「骨酒か!? 酒の中に焼いた魚を入れてスープを取る酒か!?」

誰がそんなマニアックな飲み方を推した!?

クッソ何か飲みたくなってきたじゃないか!?

「だからシャケなの! シャーケー!」

「サケ?」

ちがーう!

* * *

バッカスのお陰でもたついてしまったが……。

いよいよ本格的に鮭の調理に移るとしよう!

まずは腹を割って……。

出てくる出てくるイクラがああああ……!?

「うおおお、うんまそぅ……!?」

魚卵美味そう……!

軍艦巻きにしたりイクラ丼にしてもいいが、ここはまず腹から出したてホヤホヤのをそのまま食べたいところだが……。

肉を食う時に何より気を付けなければいけないのが寄生虫対策。

この身から出したばかりのイクラも、一旦七十度のお湯につけて目に見えない危険なものを煮殺す。

それで完全安心になったものを、スプーンで掬って一口!

「はぁーい! バブー! ちゃー!!」

あまりに美味すぎて語彙がイ○ラちゃんになった!

やっぱり魚卵は美味い!

なんでこんなに美味いものが世の中にあるんだろうか!?

「ぱぱー、ばぶばぶー」

ジュニアまで魚卵の食べたすぎで語彙がイ○ラちゃんに!

「すまんなジュニア、たしかにお魚を釣ったお前が一番最初に味わうべきだった。はいアーン……」

「あーん……」

いくら山盛りのスプーンをジュニアの口へ……。

「うまい!(てーれってれー!)」

…………。

こんな幼いうちから美味しいものの味を覚えて大丈夫かな? とそこはかとない不安もあった。

さて、ひとまずイクラを堪能して、次はいよいよ身を本格的に味わおう。

鮭といえば魚の中でも子どもすら好んで食べたりする食卓のスタメン。

その赤い肉とパリパリの皮が大人気の秘密だ!

せっかく一匹丸々釣り上げたのだからケチケチせずに大切り身を切り取って派手に焼く!

鮭の厚切り肉の塩焼き!

そしてできたものは無論、ジュニアがおあがり!

何せキミが釣ったものなんだから!

この鮭も、ジュニアに喰われることを望んで針にかかったのだから、漫然と口に運ばず、何を前にし何を食べているかを意識して、命喰うものに課せられた責任を果たすのだジュニア!

……ジュニア、二歳だというのにもう箸を自在に使いこなして鮭の身を切り、ほぐし、口に運ぶ。

「……ごはんがほしい」

「たしかに!」

たしかに鮭の塩焼きは真っ白なごはんが欲しいですよね!

失礼いたしました!

普通に焼いて食べても絶対美味しい鮭!

しかし鮭の美味しさは、それだけにとどまらない!

塩焼きだけじゃなくて西京焼きにしてもいいし、みりん焼きもいい。

しかしもっと素晴らしいと俺が個人的に思う鮭の焼き方は……!

ハラス焼き!

ハラスという鮭の中でもっとも脂の多い部位を焼いて、脂まみれの鮭の味を堪能するのだああああああッ!

脂!

脂脂脂脂脂脂脂脂!

鮭!

脂脂脂!

あぶらあああああああああッッ!!

「ぱぱ、おちついてー」

「はい……」

息子の前で取り乱しました。

俺の正気を打ち砕くほどに脂。

こんなに脂を放出してくれるのは、魚の中では鮭以外にないんだろうな。多分。

ハラス焼きでも充分な幸福を味わうことができた……!

しかし、これだけ焼いてもまだすべてを出し切ったわけではないというのが鮭の奥深さ。

ヤツはまだ最後の切り札を残している!

焼き鮭レパートリー、最終奥義……。

それは……。

ホイル焼きだ!!

サケの切り身をアルミホイルで包み込み、一緒にバターやネギやキノコ各種を入れて焼くんだ!

さすればアルミホイル越しに伝わった熱が鮭を蒸し焼きにし、溶けたバターやらキノコ&ネギの香りが身にしっかり染み込んで、他のどの焼き方とも違う風味がさあ!

さあ!

ホイルの中に残った鮭の脂と溶けバターが交じった汁をネギやエノキ諸共ごはんにかけて食うのも美味しい!

「冷凍処理に時間のかかる生食編はあとに回すとして……、今回の焼き編はホイル焼きでシメだぁあーーーーッッ!!」

と思ったが……。

「アルミホイルがなかったぁーーーーーーーッッ!!」

もうけっこう長いこと続いている農場生活だったが、その過程でも生み出せなかったいくつかのものの一つ、アルミホイル!

だってアルミ自体見かけたこともなかったし!

「アルミホイルがないとホイル焼きが作れないいいいいいッッ!?」

だってホイルなのだから。

どうする!?

一からアルミホイルを作るにしても、原料のアルミをどこから手に入れたらいいんだ!?

マナメタルで代用するか!?

マナメタルをペラッペラなほど薄くなるように聖剣で桂剥きにするとか!?

神経使いそうだし時間がかかりすぎる!

「ホイル焼きが食べたいよぉおおおおッッ! うおおおおおおおッ!?」

「ぱぱ、どんまい」

泣き崩れる俺のことをジュニアが励ますのだった。