軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

62 人員補充

「人が足りないわ」

オークボたちと水路を作る工事を始めてしばらくした頃、プラティから言われた。

「全体的に人手が行き渡らなくなって作業が雑になって来てるわ」

と。

現在我が開拓地の人員は、開拓創業者である俺を最初にプラティが妻として脇を固めつつ、発酵食品&薬剤担当を兼任。

オークボを始めとするオークチーム五名が建築や土木を担当。ゴブ吉筆頭のゴブリンチーム五名が畑仕事を担当している。

魔族騒動で新たに加入した二人のうち、バティは被服担当として集中してもらい、ベレナは転移ポイントの管理をしつつ、様々なセクションに人手が不足したら援護に入ってもらう遊撃手的な立ち位置だ。

ドラゴンのヴィールは食っちゃ寝担当。

ゴメン、ウソ。

今は水路掘りにドラゴンの巨体で大いに貢献してくれているが、コイツやることがない時は本当に何もしないからな。

と各員、自分たちの持ち場で最大限の働きをしてくれるものの、その手がどうしても足りなくなってきたということ。

俺に代わって、各持ち場の意思疎通を管理しているプラティが告げに来た。

「畑もどんどん広くなっていくし、さすがにゴブ吉ちゃんたちだけじゃカバーしきれなくなってきたわ。ベレナさんが手伝いに入ってくれて何とか回ってる感じ」

「マジか……!?」

俺も一応水路づくりの合間を縫って畑の面倒見てるつもりなんだが……。

「ウチのバカ兄や魔王さんに頼まれてお裾分けする分の生産も始めたでしょう? アタシの方も大変なのよ? 醤油や味噌、他にもたくさんの注文がドッと上がって……!」

「はい」

「それなのに旦那様は新しい計画を次々始めるし。あの食器を作る用? とかいう大きな窯や、お風呂だってまだ完成してないじゃない。それなのに水路を引くとか新しい事業に手を出して、ちょっと手当たり次第すぎるわよ!」

「ハイ……!」

その通り過ぎてぐうの音も出なかった。

やりたいことがたくさんありすぎて計画性を無視してしまったか。

プラティの言う通り、完全に手が足らなくなっている。

畑一つにとっても、今の時点ではまだゴブ吉たちがなんとか回してくれているが、これで水路が完成して田んぼを作り、その世話までするとなったら完全に破たんしてしまうことだろう。

これに対してもっとも単純な解決法は……。

「人手を増やす?」

プラティがガキヒトデの入った桶を俺の前に差し出した。

自分から問題提起しておきながら、まだこのボケを押すのか彼女は。

ヒトデだらけの桶を無言で横に押しのける。

「また先生のダンジョンに行って、オークとゴブリンを補充するか。直接の指揮をオークボたちに任せて……。そろそろアイツらも自分の部下をもってもいいだろう」

俺からの教えを吸収し、今ではいちいち指示をしなくてもしっかり畑を管理したり、必要なものを作り上げてくれる彼らだ。

オークボたち初期モンスター勢を隊長格とし、その下にさらなる兵員をつけて一大モンスター農業団を編成するというのもカッコよさそうだ。

「そのためにも、先生にちゃんと断りを入れておかないとな」

オークやゴブリンが発生する洞窟ダンジョンは、先生が主をしているんだから。

「プラティ。先生へのお土産用にたくあん包んでくれない? ちょっと多めに五、六本ほど」

「畑はそれでいいとしても、問題はまだあるわ」

プラティがこめかみを押さえながら言った。

「一番しんどいのは、アタシのところよ」

「プラティの?」

「発酵食品製造部よ! 人が増えるわ出荷先まで出来るわで生産量はどんどん上がってるのに担当者が最初と変わらずアタシ一人なのよ!! ねえ、どういうこと!? 一体全体どういうことなの!?」

「はい! すみません!!」

思わず全力投球で謝ってしまう俺。

発酵食品は、プラティの使う薬学魔法に頼ってスタートした事業だ。

人魚族だけが使う、魔法と薬草を調合して魔法薬を作り出す魔法。それを応用すれば漬物や味噌醤油、その他の発酵食品を製造することも可能というわけで。

そのせいで発酵食品づくりは全部プラティに任せきり。醤油などを作る醸造蔵はプラティの牙城みたいな位置づけになってしまっていた。

「畑が広くなってるからそこに撒くハイパー魚肥の消費量も上がってるし。ハイパー魚肥を作るにはその材料であるバ・ニシンGを捕まえに海に潜らないといけない」

ますます人魚の人手が必要ということか。

「お願い旦那様。五人……いや三人でいいわ。アタシの助手として人魚族を雇い入れてくれない?」

不可能ではない。

ここにはプラティのお兄さんであるアロワナ王子がちょくちょく遊びに来てくれるので。

彼の次期人魚王という権力をもってすれば人ぐらいすぐに寄越してくれるだろう。

可愛い妹からの頼みでもあるし。

「今度あの人が遊びに来た時に頼み込んでみよう。プラティ、お兄さんのお持て成し用にたくあんを確保しておいてくれ。もちろんお土産用に二本……、いや三本用意!」

「あああああああああッッ!? どいつもこいつもなんでたくあんばっかり好みやがるのよ!? いや美味しいけど! 美味しいけど消費が早すぎて手が足りねえええええ!!」

プラティが発狂してしまった。

すまぬ。

やっぱり発酵食品部署の人手不足は深刻だったんだな。一刻も早く人員を補充して、それまでは俺もできるだけキミの手伝いに回るから……!

……と、間食用に失敬したたくあんをポリポリ食いつつ思う俺だった。

「贈答用に必要だってのに率先して消費してんじゃないわよ!!」

ハイ、その通りです。

誠に申し訳ありません。

* * *

とりあえず人員補充ができるまでは全工事を一時中止し、手の空いたオークチームに各部署の応援へ回ってもらうことにした。

これで畑は大丈夫。

こうしてその場凌ぎをしていると、早速アロワナ王子が遊びに来やがった。

ちょっと頻繁にこっちに来すぎて「お仕事大丈夫なの? 人魚の王子ってそんなに暇なの!?」と心配になってくるほどだ。

「相撲楽しい!」

訪問から開口一番アロワナ王子がそう言いやがった。

先日、我が開拓地で開催した相撲大会で優勝してからどっぷりとハマったらしく、最近ではウチ以外の海岸線でも地上人を見つけると上がっていって「なあ人間、相撲しようや」と誘っているらしい。

それを聞いた瞬間、俺は「河童か!?」とツッコミを入れてしまった。

「人魚じゃなく河童か!?」とツッコミを入れてしまった。