軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

611 天使との友情

考えてもみてよッ!?

ピチピチ花の女子高生が納豆を好むなんてシチュエーションありえる!?

どんなに健康によいとか、それらしいことを言われても、女子はパフェとかパンケーキとかの方が大好きなの!!

納豆はそれからもっとも遠い食べ物なの!?

異世界にやってきてよかったと思える数少ないことの一つが、納豆と永別できたことだと思っていたのに。

どうしてここまで執拗に追ってくるのよ!?

本当に粘り強い食べ物ね!?

「納豆には『畑の肉』との異称を持つ大豆を元としているためタンパク質豊富で、栄養源として優れていることに加えて発酵食品でもあるために身体の様々な異常を改善する効能をも有しています。お腹の調子を整え、血液をサラサラにし、さらにはHPMPを全快あらゆるステータス異常を消失させるもはや完全栄養食といっても過言ではなく……!」

「いいわよ! 説明いらないわよ!」

元々異世界から来た私はそういうの全部知ってるし!

いや、後半ファンタジー眉唾めいた与太話だけれども……!?

違うの!

健康がどうこうなんて溌剌な十代の女子高生にはまだまだ関係ないお話なのよ!

私たち女子高生はただひたすら甘い! 美味しい! 映える! それだけを食べものに追い求めているの!

納豆に、スィーツも映えも存在しないのよおおおおッ!?

「さあ、恐れずに食べてみましょう、一口でいいですから。そうすればアナタもたちどころに納豆の虜に……!?」

やめてええええええッ!?

誘い方が完全にヤバい薬のソレだわ! ダメ、ゼッタイ!

おばあちゃんちに泊った日の朝食を思い出すわああああッ!?

「ちょいやー」

「ぐぼはッ!?」

絶体絶命、納豆を口にねじ込まれる直前だった私を救ったのは、お姉さん天使を背後から襲う延髄切り!?

その蹴りを放ったのは誰か?

私のパートナー、セレナちゃん!?

違う!

天使ソンゴクフォンだああああッ!?

「ソンゴクフォン!? 何故私に攻撃するのです私は味方ですよ!?」

「うるせぇー! 味方だからこそ見ちゃいられねえーッ!? どんだけ美味しいかは知らないが、無理やり食わせるようじゃ何の意味もねえーッ!!」

ソンゴクフォンちゃん!?

たしかにその通りだわ、よく言った!

食べ物は自分の好きなタイミングで口に入れてこそ美味しいのよ!!

「同じ天使として身内の恥はすすぐっすよ! 天罰覿面、天中殺!」

天使チームの仲間割れで流れが変わったわ!

今よ! 私も果敢に駆けだすわ!

ソンゴクフォンに気をとられてガラ空きになったホルコスフォンの背中にしがみつく!

「ああッ!」

「隙ありッ! くたばりゃーッ!!」

ソンゴクフォンが全身のバネしならせ放つドロップキックがホルコスフォンの前面を直撃!

その物理作用で後方へ吹っ飛ばされるホルコスフォンの勢いを利用して、私がバックドロップ!

期せずして敵味方によるツープラトンが決まった!

バックドロップを決めた体勢のままフォール!

レフェリーが出てきてワン、ツー、スリー!!

勝った! なんと敵タッグのパートナーから思わぬ救援を受けて私たち、二回戦に勝ったわ!

「やったー! 勝利だわーッ!」

「凱歌を上げるっすぅー!!」

嬉しさのあまり抱き合う私とソンゴクフォン!

今私たちの心は一つとなった!

「ありがとうソンゴクフォン! アナタのお陰で納豆の恐怖から逃れることができたわ! アナタって本当はいいヤツだったのね!」

今までは、いいところを狙って邪魔しに現れる性格最悪だと思っていたけど、誤解だったのね!

アナタはたしかに守護天使だわ!

「はっはっは! この女マジちょれー!」

「友情!」

「友情!!」

私たちは固い握手を交わせあった。

戦いを越えて絆が芽生えるのはバトル物の黄金パターン!

ちょっと変則的だけれど!

「今回は、私の不手際であったようです」

おおうッ!?

納豆天使ホルコスフォンさんが普通に起き上がってきた!?

私たちのツープラトン攻撃もあんまり効いている様子がない!?

「熱意も行き過ぎれば却って物事を損なうと学びました。無理強いはむしろ納豆を冒涜することになるのですね……!」

なんでそこまで納豆に心酔しているのこの天使?

「これからはより自分を冷静に見つめ直し、ヒトの迷惑にならぬよう巧みに納豆を勧めていこうと思います。モモコさんも次の機会には是非納豆を食してください」

「納豆を食べさせること自体は諦めないんだ……!?」

まあ、たまには食べてもいいんじゃない納豆?

納豆を食べるとお肌が艶々になるっていうもんね!

「そうですね、たしかに納豆はいいものです」

「セレナちゃん!?」

なんかセレナちゃんの気配がしないなあと思ったら!

思い切り納豆にガッついている!?

もしかして試合中ただひたすら納豆を食べていたの!?

「天使さんに勧められて食べてみましたが、なかなかに栄養満点で優良な食品ですね。魔王軍で取り入れられないか上層部に具申してみます」

やめて!

異世界に納豆を浸透させないで!

そんなファンタジー異世界は嫌あああああッ!?

「へへへ、アンタたち見直したっすよ。案外根性のある人たちだったっすね。その根性に免じて、今度ダンジョンに来た時は手加減してやってもいいっす」

「手加減してもらってクリアするんじゃ張り合いがないわ! 私たちはいずれ必ず自分たちの実力でクリアして見せるんだから、いつも通りでかまわないわよ」

「言うっすねぇー?」

今までただのダンジョンの障害でしかなかったソンゴクフォンの存在が、この試合で変わったように思えた。

これが正しいスポーツと格闘技の世界よね!

競い合い、ぶつかり合うことによって互いを認め合い、鍛え合うのよ!

「ネギを入れることで違った食感を味わえます」

「なるほど! 納豆とは千変万化する食物なのですね!」

セレナちゃんも他者との交わりによって変わっていく……!?

あまり遠くに行かないで……!?

* * *

そんな風にして私たち『ラブリーペア』は無事(?)二回戦も突破!

順調にトーナメントを勝ち進んでいるわ!

「優勝へと着実に近づいているわね! あとどれだけ勝てばいいのかしら!?」

「次で決勝ですね」

「あれえッ!?」

拍子抜けに感じてズッコケそうになった。

次で決勝?

つまりは三回戦が決勝戦?

随分盛り上がってた割にはすんなり終わるのね。もっと壮大にやるのかと思った。

「所詮は一日がかりのイベントですから。あまり長引かせてお客さんが帰れなくなってもいけません。できる試合数は限られています」

一応考えてるのね。

決勝戦の相手は当然のごとくS級冒険者ピンクトントンさん!

歴戦の友と一緒に立ち上げたタッグチーム名は『ロマンティックアニマル』!

相手にとって不足はないわ!

必ずや勝利して、あの覆面女に真っ向から堂々と挑んでみせるわ!

そしてチャンピオンの座を私たちの手に!

さあ、私たちは既にリング入場の準備完了!

またノーライフキングさんに回復魔法をかけてもらって全快よ!

回復魔法ホントに便利! あのノーライフキングさん一緒にダンジョンに入ってくれないかしら!?

「モモコさん、盛り上がっているところ申し訳ないのですが……!」

「あらどうしたのセレナちゃん!?」

「運営が呼んでいます。至急会議室に来てほしいと」

ええ~?

これから最高に盛り上がろうってところに何なのよ?

試合は会議室で起きてるんじゃないリングで起きているのよ!

でもまあ、無視するわけにもいかないから行ってみますか。

と思っていってみると……。

そこではリングよりも異様な空気に包まれていた。