軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

608 タッグ結成

思ってもみない展開になったわ。

まさかトーナメント戦をやることになるなんて。

あの覆面女の無茶ぶりな提案を、運営側は意外にもすんなりと受け入れ試合形式は急遽トーナメントに変更。

そんな土壇場で変えてちゃんと進むのかと思ったが、案外にも上手く進んだ。

「まるで最初からそう言う予定だったかのように……、いやきっとそうなんでしょうね」

ん? セレナちゃんなんか言った?

まあ私としては、既にチャンピオン気取りの覆面女子レスラーを倒すという希望が叶いそうで大満足だけどね。

トーナメントを勝ち上がるという障害を乗り越えないといけないけれど、障害が険しければ険しいほど燃え上がるってものよ!

見てらっしゃい謎の女子覆面レスラー、ミス・マメカラス!

必ずアナタをプロレス編のラスボスとして葬り去ってみせるわ!

「それよりもモモコさん、急遽トーナメント制に変わったという兼ね合いから、対戦方式にさらなる変更が加えられるそうですよ」

「どういうこと?」

「全試合タッグマッチになるそうですね」

「タッグマッチ!?」

それって二人一組のコンビ同士で戦うってこと!?

苦しみは半分、喜びは二倍ってヤツだね!

「トーナメント制にすると、どうしても当初予定のマッチメークより試合数が増えてしまいますからね。その辺りの兼ね合いをとるためのタッグマッチのようです」

なるほど。

二人いっぺんに戦えば一人ずつで戦うのの半分で済むものね。

さすが運営考えてる!

「そこで誰をタッグパートナーにするかですが……」

「私はセレナちゃんがいい! ねえ一緒に戦おうよセレナちゃん!」

私としては、せっかくタッグを組めるならばパーティメンバーであるセレナちゃんが断然いいんだけど!

「ねえ組もうよ! 組もう組もう組もう組もうよぉおお……!」

「わかってます。私としても知らない人よりはモモコさんと組む方が安心できますので異論ありません。他の選手たちも皆パーティメンバーからパートナーを選んでるようですし」

そうだね! みんなそうするよね!

「このトーナメントで一番の要注意は、やはり団体代表のピンクトントンさんですね。傭兵時代からの戦友で現冒険者パーティのメンバーでもあるレディコングさんをパートナーに選んだようです」

代表が一選手として参加するのも凄い話だよね……。

ピンクトントンさんを差し置いた、あの覆面レスラー本当に何様なのかしら?

「あんなに大きな岩石を拳一つで打ち砕くなんて、魔王軍四天王でもなかなかできないことです。……いえ魔法でも使えば別なのかもしれませんが、素手でとなればなおさら……!?」

セレナちゃんも、覆面ミス・マメカラスがぶっ放したパフォーマンスに度肝を抜かれっぱなしらしい。

セレモニーを終えて控室に戻った今でも視線が泳いでいた。

「セレナちゃん! ダメだよ飲み込まれちゃ! ちゃんと視線を一点に定めて!」

「そういうモモコさんだって膝が震えていますよ?」

何ですって!?

ああ、知らないうちに膝がカタカタカタカタカタッ!?

違うわこれは怖いんじゃないの、寒さのせいよ!

武者震いってヤツなのよ!

「どうやら私たちのプライドを保つためにも、あの覆面女は倒さなきゃならないようね……!」

「そうですね、魔王軍人は常に誇り高くあらねばなりません」

セレナちゃんのやる気にも火が付いたところで、さあ行くわよ、私たちの戦いのリングへ!!

* * *

タッグトーナメント戦は順調に消化されて、私たちの順番が来たわ。

歓声と共に花道を渡り、リングへと上がる私たち。

人間国からやってきた冒険者なのに人族(本当は異世界召喚者)と魔族のコンビに、観客たちは物珍しさを感じているようだ。

「人族と魔族の融和を促進させるというのもプロレス興行する目的の一環だから、キミらのタッグは非常に都合がいいよー。夢の実現て感じでね。是非とも勝ち進んでもらいたいね」

と言うのはリングで待ち受けていたカトウさん。

この人ホントにレフェリーしてるんだ……!?

「さて、試合開始の前に、キミらのタッグチーム名を聞いてもいいかな?」

「タッグチーム名?」

「必要でしょう? これから売り出していくのにチーム名があった方が、キミたち二人をまとめてシンボライズできるし、何より商標として必要だからね」

生々しい話だなあ。

だったら異世界から渡ってきた私がそのセンスで、皆がアッと驚く未来的なチーム名を考え出してあげるわ!

「そーだなぁ……!」

さっきカトウさんが言ってたように、私たちは人族と魔族の多国籍タッグなのがウリなわけでしょう?

そこを最大限アピールする名前がいいわよね。

「人族の肌は白くて、魔族の肌は黒っぽいじゃない」

「うん?」

「白と黒ということで、二人はプ……」

「ちょっと待って」

言いかけた私の口をカトウさんが塞いだ。

「むごろにょ?」

「それはダメ」

「むごごぉ……!?」

「ダメだから、いいね?」

よくわからないけど言う前にダメ出しされてしまった。

厳しいなぁカトウさんは。

「では私に命名させていただけませんか?」

「いいともセレナくん! もうコイツの案でさえなければ何でもいい! 早く命名して!!」

カトウさん、切羽詰まりすぎてません。

促されてというか急き立てられてセレナちゃん発表。

「……モモコさんの言う通り、私たちは人族魔族の混成チームということを前面に押し出していくべきだと思います。これから二つの種族が融和する、その先駆けになろうという願いを込めて」

『ラブリーペア』。

「……と言うのはどうでしょう?」

ペア……二人組とか相棒とかそんな意味ね!

シンプルでいいんじゃないかしら!

「ウンいいんじゃないの! それで行こうそれで! 異論はないね、じゃあ行こう!」

そしてカトウさんは先ほどの衝撃からか結論を急いでいた。

いいじゃないセレナちゃんと私は無敵のバディなのよ!

「さあ、チーム名も決まったところでいい加減バトルに入ろうじゃない!」

私たちの相手はどなたかしら!?

「ふん、随分と待たせてくれたじゃない。戦場で随分ノンビリとしているわね」

「仕方ないわよ、この子たちはまだまだ小娘。先輩の私たちが戦いの作法を教えてあげないと……」

ああああーーーッ!?

アナタたちが何故ここに!?

目の前にいるのは、全身褐色肌の妖艶な魅力をまとった大人の女性二人!?

バティさんとベレナさん!?

リングコスチュームの作製で出会った二人と、まさかのリング上で再会!?

「姉さん!? どうして!?」

「私たちが出場しないなんて一言も言ってないでしょう?」

「出場するなんて夢にも思ってなかったしね!」

まったくその通り。

このプロレス興行って冒険者が主体の活動じゃなかったの!?

冒険者じゃない人から出場するなんてまったくの予想外だわ!

「フフフ、このイベントにはね。私たち農場関係者も全面協力することが決まっているのよ」

「だから私たちも選手として出場することはかなり最初の段階で決まっていたの。せっかく人族魔族の融和を願うイベントなのに魔族の出場者がアナタ一人じゃ寂しいばかりでしょうセレナ?」

と言ってくるのはセレナのお姉さんのベレナさん。

その態度は余裕たっぷりだ。

「ぐぬぬぬぬぬ……! 私一人では荷が重いとでも言いたいのですか!?」

「若年の経験不足を気にしていたならゴメンなさいね?」

セレナってお姉さんに対してだけはハリネズミのように刺々しくなるなあ。

対するお姉さんも実に挑発的な口調だし、これが姉妹ってことなのかしら?

「さあかかってきなさい! 小娘たちに質のいい経験を積ませてあげるわ! 質のいい『敗北』の経験をね!」

「かつて四天王アスタレス様の補佐を務めた私たち。かつての主に敬意を払い、コンビ名を『アスタレズ』としたわ!」

『アスタレズ』!

アスタレスの複数形!

でもなんかパッと耳に触った感じアスタレスさんがレズな印象を受けるけど、その辺は大丈夫なのかしら!?

「気を付けてくださいモモコさん! あんな二人でも四天王補佐を務めた実力者! 四天王補佐は、場合によっては新たな四天王を受け継ぐこともあるエリート職! けっして無能者ではなれないのです!」

えー。

するとセレナちゃんのお姉さんって、すっごい人だったってこと?

こうして私、勇者モモコの女子プロレス最強トーナメント編。

第一試合。

『ラブリーペア』vs『アスタレズ』。

開戦のゴングが鳴った。