軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

60 王の呟き

余はジェネシス十八世。

偉大なる人間国の国王である。

我が国は、この地上でもっとも清純たる人族が集まってできた国。

ゆえに人間国である。

その名だけで事足りる。

街や村のごとく特定の名前を冠する必要がないのだ。

魔族どもが支配する魔族国や、人魚どもが治める人魚国と似たようなものだな。

しかし、真の意味で国家と呼べるのは、余が治める人間国以外にない。

何故か?

人族こそがこの世界でもっとも優れた種だからである。

人族だけが天神ゼウスより生み出され、この世界でもっとも清く、この世界でもっとも正しく、この世界でもっとも強く、この世界でもっとも賢い種だからである。

魔族も人魚も、ゼウス以外の下級神が生み出した下級種族に過ぎぬ。

本来であれば我ら人族に絶対服従し、奴隷のように仕えるべき種族であるのに反逆しよるので討伐しているにすぎぬ。

魔族を征服したあとは人魚どもじゃ。

この世界に誰が真の大王として君臨すべきか、愚か者どもに教えてやろうではないか!

……まあ、ヤツらもなかなか頑張るからな。

多少長期戦になるのは仕方あるまい。

そんな感じで数百年戦い続けておるんだけども、その戦いももうすぐ終わる!

何故か?

余が王に即位したからじゃ!

過去最高の賢王ジェネシス十八世の治世にこそ、人族の勝利で戦争は終結する!

それこそ神が定めた運命だからじゃ!!

……え? 何?

先代の王もそう言っていた?

うっさいわ、パパは無能だったから勘違いしても仕方ないの!

え? おじいちゃんも言ってた?

あ、そう……。

まあいいわ。とにかく余の代で長きにわたる戦争に終止符を打ってみせる!

そのために異世界より勇者を大量に召喚したんじゃから何とかなる!

そのせいで国土に循環するマナが枯渇してヤバいことになってるらしいけど問題なし!

魔族を倒して、ヤツらの国土からマナを根こそぎ収奪すれば不足分を補給できてオッケーよ!

勝ちさえすれば!

勝ちさえすればな!!

でよ。

戦線が崩壊したって報告が来たんだけど、どういうこっちゃ?

負けたの? 我が軍負けたの?

肝を冷やしつつ報告を詳しく聞くと、そうでもないらしい。

魔族と人族の争う最前線に突如ドラゴンが降り立ったんだそうな。

そのおかげで両軍戦闘を継続するどころではなく、やむなく後退。

以後、ドラゴンは去ったものの一度膠着した戦線は迂闊に動かせず、睨み合いが続いているんだとか。

我が軍が惨敗したわけではなく、とりあえずホッと胸を撫で下ろしたが、結局のところ忌々しいのはドラゴンよ。

世界最強の生物か知らんが、気まぐれで余の計画を混乱させおって!

お前がいらんチョッカイ入れるから、我が人族軍の大勝利が遅れるではないか!

大体人族ではどうにもできない生物ってところが気に食わんぞドラゴン!

それでもこの世界でもっとも優れているのは人族なのだ! ドラゴンは神から愛されていないからランク外! そういう決まり事なんです!!

……とにかくだ。

前線にいる将軍どもの弁では、このドラゴンがどういう目的で介入してきたか、詳細までハッキリ解明しないことには再び軍を動かせないとごねやがる。

臆病者どもめ。

ドラゴンが言うには、ソイツは聖者キダンなる者の配下だという。

ドラゴンの主人?

そんな者になれる存在が神以外にいるのか? と大変疑問だが、ソイツが何者か突き止め、我が人族の邪魔にならぬと確認が取れるまでは魔族との戦争も再開できない。

知らないうちにソイツを刺激して、魔族との戦争中にまたドラゴンをけしかけられたら全滅は必至だ、と将軍どもは言うのだ。

ビビりめ。

しかし一理ある。

ドラゴンを配下にできるほどの存在である。

そんなヤツを我が臣下に加え、ドラゴンを操り魔族を攻めさせれば勝利確定ではないか。

ウム! 余、決めた!

その聖者キダンとやらを召し抱えてやろうではないか!!

至急、そやつを我が下へ呼びよせよ!

……え!?

どこにいるかわからない!?

なんだよ使えねーな!

じゃあ、どうすれないいのじゃ!?

捜索隊を編成し、世界中を虱潰しに探し出す?

いいだろう、それ採用。

聖者が見つかるまで、魔族との戦争は戦費の無駄だから中止な!

なあに聖者が味方に付けば一瞬で楽勝よ!!

……何?

魔族国首都で内乱勃発の様子?

いいよ放っとけ放っとけ! 聖者が味方になれば一瞬で楽勝なんだからな!

それで肝心の捜索隊なんだが、どれくらいの人員を割けばいい?

……八万人?

ちょっと多過ぎね?

まったく手掛かりがないんだから、それくらいの人海戦術でないと探し当てられないって言うけど、そんな大人数動員すると費用もかかるし面倒くさいし……。

戦闘は中止したとはいえ、国境警備の兵力も必要でしょう?

だから、もうちょっと数を減らして……。

八千人? もう少し減らそう。

八百人? もう一声!

よし! 八人だ! これで決定!

選ばれし八人の勇士たちよ! 必ずや聖者キダンを見つけ出し、だが下へ連れてくるのだ!

人間国の王の命令である! って言えば一発だからな!

余が命じれば、誰であろうと従う間違いなし!!

さあ行くがいい!!

……って、あれ?

その選ばれし八人の捜索隊の中に勇者モモコ殿がいるじゃない。

アナタも行かれるのか?

いや、せっかく停戦になったんだし、アナタのような美少女は王宮に留まって、余のお膝元を華やかに……。

勇者の使命は、世界を平和にすること?

そのために聖者を必ず見つけ出す?

はあ、そうすか。

そこまで決意が固ければ、王もう止めない!

必ずや目的を果たし、王都へ凱旋してくるがよい!!

……まあ、でも。

時々は帰ってきてくれるよね?