軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

605 リングコスチューム作り

引き続き、勇者モモコがお送りするわ。

カトウさんやピンクトントンさんの要請でプロレスの試合に出ることになった私。

S級冒険者二人から頼まれたら嫌とは言えないわね!

「……それで、私も出場するんですか?」

「そうよ!」

私と会話するのは、友だちでパーティの仲間のセレナちゃんよ!

セレナちゃんは元々魔族の子で、魔王軍の軍人さん。

元勇者の私を監視するために同行してるんだけど、一緒に行動しているうちにダンジョンにも一緒に潜るようになって、今では頼もしいパーティメンバーよ。

セレナちゃんの魔法には何度も助けられたわ。

大切な友だちよ!

友だちのセレナちゃんも一緒にプロレスに参加するのよ!

だって楽しそうだし!

「冒険者ギルドで何か催しをするのはかまわないのですが、一応今でも私は魔王軍に所属していますので、あまり勝手なことは……」

「大丈夫よ、魔王軍からの許可はとってあるから」

「いつの間に!?」

カトウさんとかが、魔王軍の偉い人へ直接話を持って行ったみたい。

すべては頭の上で決められてるってことね。

「なんでもこの催しは、魔族と人族の融和を推し進めることも狙いに含まれてるんで魔王軍も大層協力的なんですって」

「そうなんですか!?」

うん、そうらしい。

だからこそ人族(異世界召喚人だけど)の私と、魔族のセレナちゃんが協力してバトルする展開が非常に好ましいんですって。

「ということでセレナちゃん、一緒に頑張ろうね!」

「よくわかりませんが、わかりました!」

よくわからないのに『わかった』って言っちゃダメだよ。

ホウ(報告)レン(連絡)ソウ(葬式)は大事だよ!

「というわけで、これから私とセレナちゃんは試合の準備で忙しくなるからダンジョン攻略はしばらく中止ね! クマさんも自由にしててね!」

私が声をかけると、一際大きな毛むくじゃらの獣は、素直に頷いて歩きだしていった。

クマさんは、その名の通りクマさん。

旅の途中で出会ったクマ型のモンスターなんだけど妙に気が合って行動を共にしている。

一時期別行動だったんだけど、今は再び合流してダンジョンを探索する頼もしいパーティメンバーよ!

「……クマさんは自由時間何をしてるんでしょうか?」

「蜂蜜でも舐めてるんじゃないの?」

クマだから。

「それよりも私たちは早速行動しないと! 試合当日はまだ先だけどやることはたくさんあるわよ!」

「妙にやる気ですねモモコは。アナタがそんなに前向きだと却って厄介事になるというのが経験上わかるんですが……!?」

そんなことないわよ。

私はいつだって全力全壊で前向きよ!!

「それに試合当日はまだ先なら何をするんです? 練習でもするのですか?」

「違うわよ。今日はリングコスチュームを作りに行くの!」

リングコスチュームとは。

プロレスラーが試合する時に着る特別な衣装のことよ。

プロレスはエンターテイメントでもあるから戦いの格好も気を使って、派手で印象深いものでなくてはならないわ。

さすがに手作りは無理だから、プロの仕立て屋さんに頼んで作ってもらうんですって。

私とセレナちゃんにピッタリな、ハデでキラキラガーリッシュのリング戦闘服を!!

「それでこれから仕立て屋さんのところに行って寸法を測ってもらったり、どんなデザインにするか傾向を話し合ったりするのよ!」

「我々の意向が反映されるのですか?」

「そりゃ、コスチュームのデザインは着る本人のキャラクターに合ったものがいいし、内面がある程度反映された方がいいんじゃない」

リングコスチュームはレスラーの命! とかどこかでも言われてたし。

だから今回の打ち合わせも真剣にやらないとね。

「でも、エンタメであるからには多少露出度高めの……セクシーな感じになっちゃうのは勘弁してね? すべてはお客さんに喜んでもらうためなのよ!」

「モモコはそんなにサービス精神旺盛な人でしたっけ?」

どうだったかしら?

でもやるからには全力でやらなきゃなのよ!

「私も上層部からの指示というのであれば否やはありません。姉の不祥事を打ち消すためにも、私が全力を挙げねば」

そうだった。

セレナちゃんのお姉さんも魔王軍の士官だったらしいが、ある事件をきっかけに失踪し、いまだ行方がわからないらしい。

血を分けた姉が安否不明なのだからセレナちゃんも、表向きは何でもない風をしているけれど奥底ではきっと心配しているに違いない。

「大丈夫だよセレナちゃん! プロレスで有名になれば、きっとどこかにいるセレナちゃんのお姉ちゃんも気づいてくれるよ!」

「いや、別にあの人が気づくかどうかはいいのですが……。我が家の名誉さえ保たれてくれれば……!」

またそんな心にもないこと言って!

試合に打ち込む理由がもう一つできたね!

では最高のパフォーマンスをする第一歩として、コスチューム作りに打ち込みましょう!

ギルドに仕立て屋さんが待っているらしいから、早速会いに行くわよ!

れっつらごー!

到着!

ノック! ドンドンドンドンドン!

入ります!

失礼しまーす!

* * *

「あらセレナじゃない?」

「ベレナお姉さん!? どうしてここに!?」

リングコスチュームの仕立て屋さんを訪ねると、そこにいたのはセレナちゃんのお姉さん!?

この人が!?

私は会うのは初めてだけど、なるほどよく似ている!?

「姉さん! 魔王軍の責務を放棄してどこをふらついていると思ったら、こんなところにいたなんて! 魔王軍人としての誇りはないんですか!?」

「放棄なんかしてませんー! 私はアスタレス様の側近として重要な任務に就いてたんですー! セレナこそなんでこんなところにいるのよ!?」

感動の再会……と思いきや鉢合わせするなり言い合いに発展した!?

あれセレナちゃん!? お姉さんのこととっても心配していた……んだよね?

「私が魔王軍から離れたあとも、ちゃんとお手当は実家に振り込まれてたでしょう!? アナタも魔王軍人なら秘密任務の一つや二つ察しが付くでしょうに! というかアナタこそなんで、こんなところにいるのよ!? ここは人間国の冒険者ギルドよ!?」

「うぐッ!?」

「冒険者のリングコスチュームを作るために待っていたのに何で魔族のアナタが来ているのよ!? もしや魔王軍をクビになって冒険者に鞍替え!?」

「違いますよ姉さんじゃあるまいし!」

険悪な姉妹だあああ……!?

私はもっと、再会したらお互い泣きながら抱き合う感動的なシーンを想像していたのに……!?

でも待って!?

リングコスチュームの仕立て屋さんを訪ねてセレナちゃんの姉ちゃんに遭遇したってことは……!

「セレナちゃんのお姉ちゃんが仕立て屋さん!?」

「違いますよ、仕立て屋はコイツです」

と指さす先にいるのは、またしても魔族の女性。

これまたセレナちゃんより年上のお姉さん。

「服ある所に私あり」

「バティさんまで何故ここに!?」

知っているのセレナちゃん!?

「姉の同僚で、四天王補佐だった人です。姉と一緒に所在不明になっていたのに。何故この人も……?」

「はーっはっはっは! 私こそが魔都を騒がせる『ファーム』ブランドの主宰!『ファーム』印の衣服は、私が作っているものなのよ!」

な、なんだってーッ!?

あのカトウさんの紹介で知った、とても穿き心地のいいパンツを作っているファッションブランドが、たしか『ファーム』!

この人が職人さん!?

「衣服のこととなれば私が出張らないわけにはいかない! 私がアナタたちの魅力を最大限に引き出すリングコスチュームを仕立ててあげるから大船に乗ったつもりでいなさい!」

「私はコイツの付き添いよ。一応腐れ縁の相棒だから」

いきなりよくわからなすぎる展開に、私もセレナちゃんも呆然とするより他ない。

「それでアナタたちもリングコスチュームを作りたいのよね? ギルドから預かった名簿に書いてあるわよ?」

「ははは、はい!?」

たしかに、ここに来るまではやる気に満ち溢れていたが、現場に着いた途端心配になってきた。

この人たちに任せて大丈夫なのかな? と。

「では採寸するわよー。美しい服を作るために何よりもまず着る人の正確なサイズを知ることが大切! 身長はもちろんのこと腰回り、乳回り、尻回り、寸分の狂いもなく数値化してやるわよー!!」

服作る担当っぽいお姉さん、メジャーらしきものを振りかざしてジリジリ迫ってくる……!?

あ、これ、なんか怖いヤツだわ!

「あの……なんかお腹痛くなってきたんで帰っていいでしょうか?」

「あからさまな仮病を使ったってダメよ! 私のテリトリー内に入ったからには当人の意思に関係なくサイズは計らせてもらう!」

何その強制力!?

私たちは知らぬ間に虎口へ入ってしまったのか!?

「あー、ちなみに……」

私たちの怯えっぷりを見かねたのか、セレナちゃんのお姉ちゃんが言う。

「ここでの採寸を終えた選手候補者には、記念品として進呈するものがあるわ」

「それは!?」

「『ファーム』ブランドの女性用下着」

それは!?

いかにも木綿製でできているかのような肌触り滑らかで伸縮自在! 優しくお尻を包み込む、いかにも私が元々いた世界で穿いてたような高級パンティですか!?

魔国でのみ販売されて、今まではS級冒険者であるカトウさんを通して通販するしかなかったヤツ!

「わかりました! 計ってください! いくらでも計ってください!!」

スポポポーンと衣服を脱いで体を差し出す。

ちょっと巻き尺に巻かれるだけで、あの高級下着を貰えるなら充分有効な取引ですよ!!

「こうやって上手いこと、ここに来る女性たちを操作しているんですか姉さん?」

「農場製の下着を一度穿いたら、もう元には戻れないからねえ。エサにするなら効果覿面よ」

「今までどこで何をしてきたか、あとでしっかり聞かせてもらいますからね」

向こうでセレナちゃんたちがゴニョゴニョお話ししているけど、今の私は新しいパンツのストックが増えることで大満足だった。

この勢いでプロレスの試合も頑張るぞ!